屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

今日の覚書き。
ちょっと真面目文章風に頑張ってみる。


「やさしい単語の方がジツは翻訳は難しいんだよね」
という台詞を、これまでに何回耳にし、自分でも何度したり顔で口にしてきたことだろう。

それなのに、つい2~3年前まで、私はその「難しさ」を本当には理解していなかったような気がする。今でもきちんと理解できているかどうかはアヤしいが、少なくとも、「やさしい単語の最適の訳語」に辿り着くまで七転八倒することが増えた、と思う。それだけでもなにがしかの進歩には違いない(と自分を慰めて...もとい、奮い立たせている)。

つい先日は one of the most (複数形)... に苦しんだ。次に苦しまずに済むようにと、further, most common, excellentなど、翻訳に苦しんだ単語やフレーズは、My辞書にMy訳語を追加するようにしているが、(あたりまえと言えばあたりまえだが)文脈が異なれば使い回しがきかないことも多い。 one of the most は訳語欄に「~級、~クラス、重鎮のひとり、most challenging (最)高難度の部類に属する」と記入しているが、今回はどれもしっくりこない。
愛用の「対訳君Accept」の対訳データは、ICHや薬局方の対訳も含めて、多くが「最も...なもののひとつ」という訳語を採用している。「最も...な」で複数形が連想できない場合もないではないが、「one of the most ...=最も...なもののひとつ」と機械的に当てはめた場合が多いような感じだ。
「最も...なもののひとつ」それ自体がダメということではなく、「読者が一読したときに、苦労せず『複数の過剰・過多・良質なもののひとつ』という意味が読み取れるかどうか」が重要なのだと、今はそんな風に思っている。その結果が「最も...なもののひとつ」であれば、それはその箇所では最適の訳語としてアリということになる。

Address the limitsも、最近意識の片隅に引っ掛かったフレーズのひとつ。addressは「対処する」と訳すと上手くいくことが多いので、いつもあまり深く考えずにこの訳語を使用してきたが、ふと「限界に対処するってどういうこと?」という疑問が頭に浮かぶという罠にはまってしまい、「打破する」に辿り着くまで結構な時間を要した(ついでに言うと、掃除機をかけている最中に辿り着いた)。

そうした経験を重ねていると、自分はまだまだ語彙が貧弱だという事実を再認識して愕然とする。
今はともかく、若い頃はとにかく本を読みあさった時期があるからだ。いや、だからこそ、自分の語彙力を過信し、語彙の引出しを増やし言葉へのアンテナの精度を高める努力を怠った結果が「今」なのかもしれない。


翻訳とは、「頭の中に原文が意味する『下絵』を描き、それに『作成者の意図』という若干の色をつけたものを思い描き、それを訳文に再現する」という作業だと思う(というのは、これまでに聞いたり読んだりした諸先輩方の言葉を自分なりにまとめたもので、決してひとりでここまで辿り着けたわけではない>念のため<最後まで真面目に行こうと思ったけれど、「屋根裏的不等号」やらずにいられない<屋根裏管理人のサガです、許されよ)。原文と訳文で同じ色合いになるのが理想だが、訳文の目的や性質を考えたとき、(そちらの方がベストであれば)ごくわずかな色調の変化を許容するということも、場合によってはありかもしれない。今の仕事ではまずなさそうだけど。

この頃では、絵を思い浮かべながら「この訳文は適切か、自分の好みや恣意や心地よさを優先して原文のニュアンスまで変えてしまっていないか」ということをよく考えるようになった。翻訳に時間はかかるが、そこは「最適の訳語を選ぶ」上での進歩だと思う(と自分を慰めて...もとい、奮い立たせている)。

問題は、上にも書いたように、語彙のプールが圧倒的に貧弱ということだ。
「原文の語順を変えても、等意を保ちながら言い換えができる」ということについては、この頃、多少はバラして再組立てすることが苦ではなくなってきた(>あくまで「屋根裏」比)。
なので、次は語彙の拡充が自分の課題。これまでのように「ストーリーを追う」読み方も(それはそれで息抜きになるので)継続するが、文書/書籍によっては表現やコロケーションに注意し、その場で辞書を引き、ときには書きとめる、ということをもう少し意識していきたいと思う。当面(半年程度)の目標。
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2017.07.12 14:08 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(2) |
「人工知能とニューラル機械翻訳の現状と未来 」(パネルディスカッション)
登壇者(再掲):F田(NICT)、Bor(視聴覚素材のMTの研究)、K木(MTを使用している翻訳会社の代表)、I坂(ノンフィクション翻訳家)、Y田(大学教授・翻訳者、通翻ジャーナル夏号にも寄稿)、I塚(大学教授・通訳者)
略語:MT=機械翻訳、PE=ポストエディット、Pre-E=プレエディット


モデレータから各人に質問
Q. AI、NNW(ニューラルネットワーク)、ディープラーニングなどの用語について、簡単に説明してほしい(F田氏へ)
A. AIには「強いAI」「弱いAI」の2種類がある。強いAIは汎用型AIで何でもできる。弱いAIは定義された範囲で特に単一タスクに力を発揮する。弱いAIの中にNNWがあり、これは機械学習の一種である。ディープラーニングはNNWの一種で、NNWの層が多層になったものをいう。

Q. 放送データ(特にニュースの字幕)の自動翻訳を多言語で出力する研究をされていると伺ったが、現状どの程度まで応用が進んでいるか、また将来は(Bor氏へ)
A. リアルタイムで字幕を3ヵ国語に翻訳している。音声より字幕が遅れて入る点、画面途中で切れる点などが課題。精度はSo-So。東京オリンピックを視野に入れて研究を進めている。

Q. 会社としてハイブリッド翻訳を提供しているとのことだが、どう利用していて、効率はどうか。社員の反応は(K木氏へ)
A. クラウド翻訳、機械翻訳、PEなどを組み合わせ、パッケージ化して提供している。MTはGoogle翻訳を使用。守秘義務等の問題があるので、顧客が了承した場合のみ使用している。20~30%生産性が向上した。特に拒否反応を示す社員もいない。

Q4. 出版翻訳分野ではMTは活用されているか。また今後はどうか(I坂氏へ)
A4. 書籍はノンフィクションの翻訳。その他に雑誌や新聞記事の翻訳もしている。MTを試してみたことはあるが、成功したことはない。論文でも試してみたが、自分でやった方が早いということが分かった。MTではないが、訳抜けや数字ミスを防止する目的で、翻訳を終了したあとでFelixのアラインアシスト機能を使用することはある。出版翻訳業界では、数年前のTランダムハウス”アインシュタイン事件”(出版翻訳にMT翻訳が使用されたことが分かり書籍が回収された)以来、MT翻訳には特に慎重になっているような印象がある。個人的には、英語以外の資料の大意を知りたいときなど、Google翻訳を使用することはある。

Q. 通訳の現場での自動翻訳に対する意識は(I塚氏へ)
A. 特に機械を使用するという空気はない。特に、コミュニティ通訳やビジネス通訳など、やり取りが行われる現場での通訳では、「単なる変換に終わらない」という点も(コアではないが)通訳に期待されている部分のひとつであると思う。通訳の分野では「自動通訳」の開発は、旅行、ホテル、病院など、短い明確な目的を持ったものを対象に始まった。そうした「ちょっとした」プロの通訳を使用できないようなシーンにおけるMTは十分実用的で、新たな需要や分野が創出される可能性はあると思う。

Q. 通訳翻訳教育の現状を(Y田氏へ)
A. 専門職者の教育は大学院レベルではあるが、4~5年前ほど流行っていない印象。現在は、語学を学ばせるために通訳訓練法を取り入れるなどの形で通訳翻訳を教育に取り入れるのがトレンドのひとつとなっている。また、一般教養でリテラシー能力を上げようという動きも出てきている(工学部の学生を対象に、将来英語を使うことを視野に入れた実用的な英語教育を行うなど)。教育へのテクノロジーの組込みは、現時点ではまだないのでは。


Q. NMTはSMTより人間ぽいのか。
A. NMTは、画像的なものから言葉が出てくるイメージなので、人間ぽくはないと思う(F田氏---ここで、一時、パネリストが同時に喋り出すという、収拾のつかない状態に。特にI塚氏、I坂氏からは「それこそが人間的な翻訳では」という意見が出ました。F田氏からは、「人間ぽいと言えるのかもしれないが、現時点では、人間と同等の最適化はできていないような気がする」とのコメントがありました)。
 * (Sayoの補足)F田氏は、研究者として、(決して単語レベルの対応という意味ではないものの)翻訳を文字から文字への変換として捉えておられて、それに対して「NMTはもう少し異なる翻訳の仕方をします」という意味で「画像的」という言葉を用いられたのだと思います。

Q. 人間は五感を使って翻訳していると思うが、MTにもそれは可能か。
A. NMTでは可能だが、インプットを行うのは人間。データの形でそうしたインプットが可能になれば可能(F田氏)

Q. MTの限界は。
A. どこに限界を設定するかの問題で、実質的に限界はない。人間は、自分たちができないものを代わりにやってくれることをAIに求めており、決してAIが人間を超えることを求めているわけではないと思う(F田氏)。

Q. 通訳翻訳の形は変わっていくだろうか。今後、通訳者・翻訳者には何が求められると思うか。新たな翻訳の形(たとえばPEなど)の教育機会はあるのか。
A. PEのマニュアル的なものはない。PEを嫌がる翻訳者も多いが、ツールの1つとして考え、共存する道を探りながらキャリアプランを考えた方が選択肢が広がると思う(K木氏)。
  テクノロジーの進歩が早く教育として固める時間がないのが現状。PEについては、「翻訳」側というより、「校正・修正」側からのスキルが求められるような気がする(Y田氏)。
  通訳や翻訳に関する認識は、学生(翻訳=文芸翻訳)、大学(英語能力の向上に翻訳を使用したい)など、関連する者の立場によって異なる。今後「プロ養成教育」もあり得るかもしれない(が現時点では...ということだと思いますby Sayo、発言はI塚氏)。
  そもそも、新しい技術が現われたときにそれを捕捉し取り入れていく方法(=メタ学習能力)を教えることが必要なのでは。そのためには産官学の連携が必要だが、こうした考え方が三者で共有されていないのが現状(F田氏)。

Q. AIに敗れたチェス・チャンピオンは、「自分が(AIに)負けても人類は絶望せず逆に進化した」と言っているが(このとおりの言葉かどうかは不明。確認は取れず。大意は間違っていないと思います by Sayo)、通翻の分野でもMTの発展により人間がさらに進化することは可能か。
A. 人間が思いつかない訳を返してくる可能性はあるので、「こんな訳も可能」ということで翻訳メモリ的に取り入れることは可能かもしれない(Y田氏)。
  AIの発展により脳の働きもさらに解明されていくだろう。それによって人間の認知も向上するということはあると思う(I坂氏)。

(AIの倫理に関するQ&Aがありましたが、Q、Aともにきちんとメモできておらず発言者も不明なため、割愛します)

Q. AIは本来人間の生活を楽にしてくれるもののはずなのに、技術によって仕事を奪われると考えている翻訳者が多いのはなぜだと思うか。
A. 「奪われる」と考えるのは間違い。さまざまな家電が発明されても主婦業そのものはなくならないのと同じ(K木氏)。
  経営者側だけが特をするなど、恩恵が均等に配分されないという気持ちが「仕事を奪われる」という恐怖につながるのでは(モデレータ氏)
  MTを把握できずに(よく知らずに)恐れている、ということもあると思う。どうやってOutreachしていくかが課題(F田氏)

* 全体を書き取ることができず闇に葬った回答もあります。ご容赦ください。


F田氏の視点は、かなり「研究者を超えた」ものであると感じましたが、それでも、翻訳Cafe全体を通じ、「どこまで向上させることができるか」「その能力が翻訳者の日々の仕事をどう変え得るか」という点が議論の中心で、研究者や教育者的視点から物事が捉えられているなという感じを受けました(特に今回だけなのかもしれませんが、「発注者/読者は何を欲しどのように考えるか」という視点があまり感じられませんでした)。

たとえ研究者が満足するレベルに到達しなくても、費用対効果の点でユーザーが「これでいい」と考えれば、今後MTはさらに普及していくのではないでしょうか。「これでいい」レベルが低下すれば、そのレベルに合わせていくという形で翻訳全体のレベルも低下する恐れがないとは言えません。それがユーザーニーズなのだからと言ってしまえばそれまでですが、「これでいい」と考えるユーザーの中には、「本当にいいのか、なぜそれでいいのか」をきちんと考えておられない方も一定数いらっしゃるような気がします。そうしたユーザーに対して、MTの利点と欠点をきちんと説明していく(少なくとも説明できるように理論武装する)ということも、翻訳者として心に留めて置かなければならない点かもしれません。
(蛇足ですが、参加者からの質問の中に、「誰でも簡単にGoogle翻訳などのMTの品質を評価できるソフトウェアはあるか、またその開発は進んでいるか」というものがありました。複数種類の誤りがそれぞれどの程度あるかを数値化するようなソフトは、まだ開発できていないようです。この質問に関しては「そもそも数値化する意味はあるのか」「翻訳を知らない人には分かりやすい指標になる可能性がある」と両極の意見が出ました。)

MTが今後どの程度の速度で進化していくのか、今回お話を聞いただけでは私には分かりませんでした。ただ、今後、Pre-Edit+MT+PEをうまく組み合わせることで、「バラツキなく一定レベルの訳文を生成する」ことは可能になると思いました。ですから、「翻訳Cafe(上)」でも書きましたが、(それが翻訳か否かという議論はひとまず置くとして)今後(Pre-Editもできる)PEの需要は伸びていくだろうと思います。そのPEの能力について、「校正・修正」側からのスキルが求められるのではないか、というY田氏の意見はちょっと面白いと思いました。そうした能力を身につけたPost Editorは、もっと評価されてもよいのではないかと思います。

私自身は、やはり自力翻訳をやっていたいなあという気持ちが強いのですが、そのためには、実力を磨き、アンテナを張り(人手の方がreasonableな価格で満足できる仕上がりが得られる分野や文書の種類を見極め、その仕事を取っていく)、提案すべきときは根拠をもって提案できるよう知識を蓄える努力をしていかなければならないと改めて思いました。
よく「内容は正確に、日本語はよみやすく(和訳の場合)」と言いますが、これからは、翻訳をやって生き残っていくためには、どう「正確」で(書かれてあることに加えて、作成者や読者の存在も考慮しているか)、自分の訳文の読みやすさは単なる流暢さとどう違うのかといったことを、きちんと言葉にできる(無意識のうちに常に意識している)ことがさらに重要になってくるような気がしました。

難しい内容でしたが、参加してよかったです。先生にもご挨拶できましたし。
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2017.07.04 22:16 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(0) |
土曜日に開催された「翻訳通訳テクノロジー研究プロジェクト特別会合+翻訳Cafe」に参加してきました。
内容や発表者の詳細は、「翻訳Cafe」のHPを参照してください。

個人的には、前半の情報通信研究機構(NICT)さんの発表「機械翻訳を活用するための言語処理技術 」より、後半の「人工知能とニューラル機械翻訳の現状と未来 」というパネルディスカッションが楽しみでした。顔ぶれを見ると、研究者2名+教育者2名+翻訳者(翻訳会社)2名という偏りのない(?)構成です。昨年通信講座でお世話になった先生がパネリストのおひとりで、翻訳者代表としてどのようなお話をされるのかという点にも興味がありました。

今回も一生懸命メモを取ったのですが、馴染みのない内容のせいか、特に第1部はうまくまとめられません(取捨選択すべきポイントがよく分からないというか...)。

ですので、前半に関しては強く心に残った点のみ箇条書きするに留めます。
登壇者は、いつもの「屋根裏」仕様で、F田(NICT)、Bor(視聴覚素材のMT--とお聞きしたような気がするのですが、正確なところは聞き漏らしました。研究業績からも今回のトピックスに関係するような研究はちょっと確認できませんでしたので、間違っているかもしれません)、K木(MTを使用している翻訳会社の代表)、I坂(ノンフィクション翻訳家)、Y田(大学教授・翻訳者、通翻ジャーナル夏号にも寄稿)、I塚(大学教授・通訳者)と記載します。

「機械翻訳を活用するための言語処理技術 」(F田)

・ 2016年11月11日、Google翻訳が統計的MT(以下SMT)からニューラルMT(以下NMT)に変わった。語の分散表現(distribution representation)という方式を用い、多層ニューラルネットワークによる非線形変換を可能にした点が、成功した理由のひとつである(この1文でもう挫折しそうや)。

・ 機械は原文を「理解」しているのか?-「理解」をどう定義するかによる。訓練データの範囲内での最適化の結果が訳文であり、「最適結果を生成する=理解」と定義するならば理解していると言うことができる。

・ MTの今後-どんな情報でも、それを形式化して入力することができれば利用可能。テキスト周りでは前後の文脈などがこれにあたり、テキストの外界では、著者の特性、対象とする読者などがこれにあたる。これらを利用できるようになれば、MTの精度はもっと向上するだろう。

・ MTを活用する上での課題は高速化と高精度化。一般に対訳コーパスが大きいほど高性能となる。対訳コーパスの拡充が必要。未知語への対応(既知語での言換え)、複合語の分割なども必要。

・ MT実用上の最大の課題は品質のばらつき(現時点)である。一定の品質保証を前提とした翻訳の戦略は4種類ある:人手による翻訳、機械に支援された人手翻訳、人間に支援されたMT、高品質MT。このうち人間に支援されたMTはMT+PEであるが、MTの前編集としてPre-editing(原文を書き換えてMTしやすくする人手作業)を行うことで、MTの精度は上がると思われる(研究段階---意味の分からない日本語を意味の分かる日本語に変換してから英訳することを「日日英訳」と表現される方がおられますが、それと同じ感じかなと)。

・ MT訳の品質推定(Quality Estimate: QE、どの程度の品質が保証されるか)が必要-使用者の立場での信頼度。語レベルのQEの研究は進んでいるが、文レベルのQEはまだ訓練データが少なく、現在取組み中である。

・ Google翻訳と研究のMT翻訳との違い-Google翻訳はウェブから全自動で収集したものをすべて使用している。研究MTには人手が入っている。

・ (F田さん個人の感想として)研究者は、実際的な翻訳には何が必要かがあまり分かっておらず(関心も薄い?)、文単位でMTの評価を行いがち。その数値を上げることがゴールで、その先については考えていない研究者が多い印象。研究者・教育者・実務者が連携する必要があると痛感。

という断片的な感想を読んでいただければ「ほとんど理解できてへん」ということが分かっていただけると思います(?)。
興味が湧かれた方は、F田さんとY田先生が発表された論文に目を通していただければと。
http://www.anlp.jp/proceedings/annual_meeting/2017/pdf_dir/D6-1.pdf

NICTの研究は、特にQEの点でまだこれからという印象を受けました(あくまで個人的な印象です)。
とはいえ、Google翻訳を含むMT全体を見れば、「まだまだ大丈夫」と安穏としていられないという感じもします。

将来、MT翻訳は、「Pre-Edit-MT-PE」というセットでどんどん精度を上げていくのではないかと思いました(その「どんどん」のカーブがどの程度急かということについては、ワタクシには何とも言えません)。翻訳とPEは別ものという考え方もありますが(思考過程を考えると、ワタクシ自身もやはり別ものと思います)、実際問題、「翻訳業界のひとつの職種」として今後(Pre-Editもできる)PEの需要は伸びていくだろうという気がします。PEにはPEとしての高い能力が求められるはずで、レベルの高いPEはもう少し評価されてもよいのではという気もします(PEについては、パネルディスカッションの中でも、興味深い発言がありました)。

長くなりましたので、パネルディスカッションの報告と全体的な感想は(下)に譲りたいと思います(ごめんして)。
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2017.07.03 07:49 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(3) |
(6月29日、若干加筆訂正しました)

4月に、メインの取引先に翻訳レート値上げをお願いし、自分としては期待以上の回答をいただきました。

すぐに記事にしなかったのは、2、3ヵ月はその後の受注状況を静観し、増額が受注に何らかの影響を与えたかどうかを確認する必要があると思ったからです。
(特に影響はなさそうですので、少し時間のできたこのタイミングで記事にしようと思いました)

この会社は、「医薬(医療機器)翻訳」転換を決めて応募・登録した2社のうちの1社で、その後数年にわたって取引が続いています。
(もう1社は、特に大きな不満があった訳ではないのですが、タイミングが合わないということが続き、何となく疎遠になりました)

スタートレートとして提示された額が、分野初心者の自分にとって「可もなく不可もなく」という額でしたのでその額で登録し今に至ります。

コーディネータさんはテキパキと仕事をなさる方ばかりで、こちらから催促したり質問したりということもまずなく、参考資料の質も相対的に高く、たまにいただく校正後の原稿の仕上がりも「おお」と唸らせられるものばかりで、私はずっと気持ちよく仕事をご一緒してきました。請求書が不要であることなども含め、「見えない」部分でストレスや労力少なく仕事ができていたと思います。
また、自分の中に「医療機器翻訳者として育ててもらった」という気持ちもあります。

「だから、単価交渉は止めておこう、今のままでいい」と、私は自分に言い聞かせてきました。多分に「何もしない」言訳だったと思います。現状維持が一番楽なので。
1社専従ではありませんでしたが、売上げに占める割合はかなり高く、賃上げ交渉をしたことでメインの取引先を失うのが怖いという気持ちもありました。

でも、この頃、不満、ではありませんが、ときに若干もやもやした気持ちが湧くことがあったのも事実。
原因のひとつは他社とのレートの差。微々たるものではありましたが、その後に登録した会社の方が翻訳レートが高いという状態になりました。(いずれもこちらからスタートレートを提示できたので、(小心者の自分にできる範囲でということですが)思い切って少し高い額を提示し了承頂いたものでした)
「分野の勉強も重ね、数年前より知識も増え、いろいろ考えながら訳すようになった自分を、この会社でももう一度評価してほしい」という気持ちが強くなりました。

同じ頃、さまざまな要因が重なって「もう、売上げ(年収)の維持や微増を目指さなくてもいいかな」という気持ちになりました。
それでかえって「仕事が切れたらまた次を探せばいい」と気持ちが楽になりました。「次」が軌道に乗るまではしばらく苦しい時期が続くでしょうが、「それでもまた次がある」と思えるだけのものを、自分は身につけたのではないかと思えたのです。もちろん、まだまだ至らぬ点は多々あり、凹むことも多く、決して「デキる」翻訳者とは言えませんが、「医療機器」分野に限っていえば、自分がもっと積極的になれば、またどこかでそれなりに仕事を取っていけるのではないか、と。

とはいえ、そこまでに育ててくれたのは、今回値上げ交渉をした会社です。たぶん、そことのお付合いが始まらなかったら、今の私はない。そこは感謝してもしきれません。できれば、今後もよい関係を続けていきたい。
そんなことを考えながら、交渉メールを認めました。
そのとき気をつけたことは「他社と比べない」ということです(あくまでも、自分の場合、対この会社に限ってということです、ビジネス交渉として考えるなら「うまく他と比較する」ことも必要だと思います)。正直なところを書いて「その会社における翻訳者としての私」を判断してほしいと思いました。

以下、そのときのメールの一部です。

御社は(中略)、フィードバックやさまざまな参考資料を通して「育てて頂いた」と思っており、その点本当にありがたく、感謝してもし過ぎることはないと思っております。
一方で、御社との取引きもXX年目に入り、私も、翻訳・専門用語・医療機器製造販売に関わる制度などについて、スタート時より多少の経験を積みました。今後も翻訳力の向上や知識習得に務めてまいりたいと思っております。当時よりは、多少なりともよい翻訳ができているのではないかと考えております。
(中略)
以上の理由から、最初にご提示頂いたスタートレートからの引き上げをご検討頂けましたら有難く存じます。

(** こちらのブログもときどき覗いて頂いているようなので、メールの文面も当時のものをほぼ踏襲しました)

何の参考にもならないとは思いますが、まあこういう事例もあるということで。

値上げ交渉のタイミングを図るのはとても難しい。
私は、若干遅きに失してしまったのかもしれませんが、自分の中にある程度の自信を持って「駄目なら駄目でいい」と思い切ることができた「今」が、自分の「そのとき」だったのかなとも思います。
値上げを了承頂いたことで、「これからもよい仕事をしていきたい」「期待を裏切るような仕事はしたくない」という気持ちも強くなりましたので、実際的なモチベーションもやっぱり大事(<て最後はそこかい<自分)。

これからも、1件1件きちんとした仕事をし、もっといい仕事ができるようになりたいと思うのでした。
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2017.06.28 23:14 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(0) |
個人的に「訳しにくいなあ」と思うことの多い単語です。サクセルフル、キライ。

どうしてかなあと考えながらずっと仕事をしてきたのですが、今回、トリセツで、大量の
After A has/have been successfully completed, Press B
(Aがsuccessfullly completedしたらBキーを押してください)
系successful / successfullyと戦う中で、「こうかな」と思ったことがありました。

「そういう記載を見つけた」ということではなく感覚的なことにすぎないので、間違っているかもしれませんが(<てか、たぶん間違ってる<ので読み流して)。

その前に、successfully (successful)の意味ですが、いくつか英英辞典を確認してみましたが、以下のコウビルドの説明が分かりやすかったので、そちらの説明をお借りします(他にも意味はありますが、私が「訳しにくい」と思うsuccessfulの意味ということです)。

Something that is successful achieves what it was intended to achieve. Someone who is successful achieves what they intended to achieve.
(「コウビルド米語版英英和辞典」)

また、安定の海野さんちからは英和の訳語をいくつかお借りしてきました。

うまく、首尾よく、上首尾に、無事に[事なく]、成功して[成功のうちに, 成功裏に]、まんまと、うまうまと、うまいこと、見事に、上々のできで、盛会裏に、盛況裏に、順調に、正常に、 《意訳》正しく
(「ビジネス技術実用英語大辞典V5」)

トリセツのsuccessful (successfully)は、「首尾よく」や「無事に」はしっくり来ず、この中では「順調に」「正常に」が一番近いような気がします。

それは、トリセツでは「その操作、成功して当り前」という暗黙の了解というか含みがあるからなのかなと、今回フと思ったのでした。
もちろん、失敗することもあるわけですが、トリセツ的には「こう操作したら普通は成功しまっせ」とポジティブに言いたいのではないかと思うわけです。少なくとも、私が作成者なら、まず「上手くいく(ホラ、簡単でしょ)」と言ってから、「でもね」という注意や警告を(そこは漏れなく)書く流れにしたいです(もちろんトリセツ作成にもルールがあると思いますが、素人的に考えるとそういう流れがよいかなということです)。「失敗する可能性もあるんですけど」的な弱々しいトリセツでは、「上手く行かんのちゃうか」と疑心暗鬼になってしまいそうです。ええ、ころっと騙されるくせに、妙に疑り深いところがある厄介な性格ですから。

でも、通常のcontextで使われる「achieves what it was intended to achieve」にはそのような含みはないような気がします。上手く行かない可能性がなきにしもあらずの状況でのsuccessというか。
なので、「無事に」や「首尾よく」を伴っても違和感がないような気がします。もちろん、前後関係にもよりますが。
でも、トリセツの「成功して当り前」の場合のsuccessfulに、失敗の可能性をソコハカとなく連想させる「無事に」は、やはりマズいような気がする。

というわけで、「成功して当り前」の操作と考えられるトリセツのsuccessful (successfully)には、「支障なく」「問題なく」「正常に」「順調に」などの訳語を選ぶことが多いです。

流れと状況がきちんと頭に入っていないと適切な訳語を選ぶことはできないので、一見簡単そうに見えて、実は奥深かったりするトリセツなのでした。やれやれ。
そのトリセツの終わりも見えた。ううっ、嬉しい。
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2017.06.26 23:33 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(2) |