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屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。


 もともと4月に(実会場で)開かれるはずだったものが、COVID-19の流行拡大を受けて中止になり、代わりにオンライン講座として開催されたものです。午前と午後の2回開催され、私は午後の方を受講しました。午後の講座は90名超が視聴するという盛況ぶり。知った方のお名前もちらほら見え、嬉しくなりました。

 講座では、担当講師のお話をお聞きするだけでなく、原稿(ゲラ刷り、事前に配布)を用いてその場で実際に校閲を体験する時間もあり、1時間半という時間が短く感じられました。Zoomのチャット機能を用いて質問ができるのもいいですね。講座中、講師以外にもうお一方校閲者の方がチャットルームに入られて、参加者からの質問に対応してくださいました。

 翻訳と同じだと思う部分も違う部分(「新聞」校閲という特殊性もあるかもしれません)もあり、さらにはハッキリ分けられない部分もあり、どうも上手くまとめられないので、箇条書きにします。

● 「書かれたものに不備がないかチェックし、整える」のが校閲の仕事。さまざまな種類の「不備」があるが、ケアレスミス以外に、思い込みから生じるものも多い。
 →この「思い込み」は翻訳でも気をつけなければならないものだ(というより、あらゆる分野・局面で気をつけなければならないものではないかと思う)。解釈間違いや訳語選択ミスは、最初「小さな違和感(なんかおかしい)」として引っ掛かる場合が多いのだけれど、思い込みは、この「違和感センサ」の効きを悪くしてしまう。

● 今回拾ったケアレスミス(誤字、助詞のダブり、同音異義語など)の多くは、Wildlightの辞書を上手く設定することでかなり防げるのではないかと感じた。但し、あるべき言葉の抜け落ちを拾うには、他の方も仰っていた読み上げや自身の音読が必要だと思う。音読すると、語順がおかしい場合も読みにくくて引っ掛かってしまうことが多いため、私はチェック作業のどこかで必ず音読するようにしている。

Wildlightについてはコチラを参照してください。
Microsoft Wordで動作するフリーのアドインマクロです。
https://terrysaito.com/wildlight/

● 新聞校閲は、原稿作成後と編集後(ゲラ刷り)の2回行う。人の手を経るので、間違いが起きる恐れがあるため。
→ 聞いたかぎりでは「同じようにチェックする」という印象を受けた。1回目と2回目で注目する点が変わるかどうか質問しようと思ったが聞きそびれた(文字入力が間に合わず質問できませんでした)。

● 第三者の視点でチェックする。読者の視点を大切にしている(読者によって読みやすいものに)
→ 新聞の製作では記者・編集者・校閲はそれぞれ別の人間だが、翻訳では、翻訳者がこの三者の業務を兼ねなければならない。翻訳作業と校閲作業のあいだに時間を置くなどして「書き手」視点から「読み手」視点にシフトする必要がある。

● 「最終的に品質が保証されたものを表に出す」ことを目的とするという点では、校閲も翻訳も同じだと思う。


 重複表現やものの数え方一覧(実習でも遭遇)などの資料を頂きました。講義中、参照する資料(紙版)の紹介もあり、ここで紹介された『数え方の辞典』(小学館)を購入しました。購入したあとで、Japan Knowledgeにも入ってるよ、と教えて頂いたのですが、読みものとして読むには紙版の方が読みやすいかなと思いますので、ま、いいか。

 実習では、コロナウイルス感染症関連の記事が多く取り上げられました。「コロナウイルス感染拡大」という表現には、医療翻訳者としてはもやっとするものがないでもありません(同じ質問をされた方もいらっしゃいました)。けれど、スペースの問題(少しでも原稿を短くする)を考えると、この表現になるのは仕方ないことなのかなと思います。ただ、読者のあいだに正しい表現を浸透させるのも新聞の仕事のひとつではないかと思いますので、紙面のどこかに「正しくは~だが、紙面のスペースの関係で~という表現を使用しています」のような記載があってもよいのではないかと、そんな風に思ったりもしました。


 講座を受講してみて、「『おかしい』はそのままにしない、とにかくいちいち辞書・事典を引く、『思い込み』は意識して捨てよ」が大事だと改めて思ったのでした(――てありきたりすぎ?)
2020.07.01 01:00 | 翻訳祭・フォーラムetc.報告(2016-) | トラックバック(-) | コメント(0) |

中部大学の関山健治先生(とちょっとだけ帽子屋さん)による、辞書、特にシソーラスに特化したセミナーです。

関山先生は、子どもの頃から、辞書や百科事典を拾い読みするのがお好きだったそう。「辞書が好き、辞書のことをもっと知ってほしい、もっと辞書を使ってほしい」という辞書愛が伝わってくる講義でした。さらに、最後に「翻訳者視点から」15分ほど類語辞典について話をされた帽子屋さんも、本当に楽しそうにお話しされ、子どものように一推しのアプリを紹介される。
聴衆を置いていかない程度にご本人も楽しまれる方の講義は、聞いていて楽しいですね。

これまで、日本語類義語辞典の類いについては、折りに触れて(主に帽子屋さんから)話を伺ってきました。でも、英語母語話者や英語学習者用の、英語で書かれたシソーラスについて話をお聞きするのは、今回が初めてかも。個人的には(英日翻訳者ということもあり)その中のどれかが明日からすぐに役に立つということはないかもしれません(でも、2、3冊「ほしいものリスト」に入れてしまいましたよ)。けれど、新たな発見が一杯の楽しい時間でした。あとで資料を読み返してみると、各種シソーラスが明確に分類され特徴づけられていて、難解なパズルが解けたような爽快感を感じました(いや、私が解いたわけじゃないですけどね)。


以下、セミナーのレポートです。


***

先生の自己紹介のあと、まず、シソーラスと類(義)語辞典の違いの説明がありました。
狭義のシソーラス(Thesaurus)は意味別に単語だけを並べたもの。Roget's Theasaurusがその代表格。対してABC順に単語を並べたものが類語辞典(Synonym Dictionary)。既知の単語から類似の単語(表現)をさがすための辞典です。ただし、講義では、類語辞典も含めて広義の「シソーラス」として扱うとのこと。

そう前置きがあったあと、以下の4種類に分類した広義のシソーラスのそれぞれについて、記載ページ例とともに、良い点/悪い点、代表的な辞書について、詳しい説明がありました。

1. ABC順で語義のないもの
 英語母語話者を対象とした辞書なので、英語学習者は使いこなせないかも。インデックスはない。使用する際は、「,」と「;」の使い分けに注意を払う。
2. ABC順で語義のあるもの
 インデックスにすべての語を収録。類義語「群」のそれぞれについて語義が記載されている。
 * この分類に含まれるOxford Learner's TheasaurusがiPhoneアプリにあるそうです(電子辞書にはない)。物書堂さんには、日本語翻訳版(小学館『オックスフォード英語類語辞典』-但し収録語数は6割程度)があります。使いやすそうでしたので、どちらかを購入しようと検討中。
3. 意味分類順で語義あり
 英語学習者に最適だが、既知語の類語を探す場合は面倒。
 * 実務者には、Roget'sのシソーラスの概念を学習者向け辞典に持ち込んだLongman Lexicon of Contemporary Englishが使いやすいのではとのことでしたが、紙版のみで現在は絶版(入手はマーケットから)。
4. 意味分類順で語義なし
 Roget's Thesaurusはここに含まれる。意味的に関連のある語が隣接。正反対の語をチェックするという語の探し方もできる。
 * 日本語の類語辞典では『デジタル類語辞典』がこれにあたるのかなと。
 * Roget'sのアメリカ英語版にあたるRoget's International theasaurusの5版~7版には、インデックスに参照先の語の語義が簡単に説明されている(最新8版ではこの説明はなくなり、代わりにインデックス収録語数が増えた)。

このあと、英語シソーラスを使うに際しての注意点の説明や、類義語のニュアンスの違いを知るための練習方法の紹介がありました。

最後に、その他のシソーラス(日本語から引けるもの、和英辞典をシソーラスとして使う方法、WordNet、電子辞書収録のシソーラスなど)についても説明がありました。
 * 個人的にはSIIさんが電子辞書から撤退されてしまったのは(PASORAMAや~)本当に残念ですが、カシオ電子辞書の少し古いものにも、使いやすいものがあるようですね。
 * その他シソーラスでは研究社『英語類義語使い分け辞典』(2006年、『新英和大辞典』第6版の類語欄の記載をまとめたもの)がお手頃価格(1980円)で使いやすそうと感じました。

関山先生のお話はここまで。Q&Aのあとは、「翻訳者と類語辞典」と題した、帽子屋さんのミニ講義です。

類語辞典が活躍する状況を
1. 使いたい言葉のイメージが固まっていて、ピッタリの単語を探しているとき。
2. 微妙に違う複数の単語の違いを知りたいとき。
 a. 自分が単語を選ぶ際の根拠として(翻訳)
 b. 訳文を直すときの根拠として(添削やチェック)
と分類。

そのそれぞれについて、該当する辞書の簡単な紹介がありました。「子どものようにはしゃいでおられた」のは、三省堂『類語新辞典』のアプリを紹介されたときです、ご参考まで。

* 紹介された類語辞典の一つ、『デジタル類語辞典』は私も愛用していますが、これは、上でも書いたように、「意味分類順で語義なし」に該当するのかなと思います。というわけで、必ず語義の確認が必要になるのですが(<少なくとも自分の場合)、「ツール」→「他の辞書との連携設定」で、連携先の辞書を設定し、設定を有効にしておくと、単語右クリック→「他の辞書を引く」で連携先の辞書にとぶことができます。私は、LogoVista辞典ブラウザに国語辞典をまとめているので(EBWinや対訳君には載らない辞書が増えたのですよ…)、この国語辞典グループをジャンプ先に指定しています(既出情報OR当然ご存じ情報でしたらスイマセン)。


いつもはセミナー自体も懇親会も(お世話下さる翻訳会社の方を除くと)圧倒的に女性が多いのですが、今回は、どちらも男性比率が高い印象でした。あくまで目測ですが。もしかしたら翻訳者以外の方も多かったのかもしれません。臆してしまってまったく話ができなかったのが、今となってはちょっと残念です(といっても、挨拶と世間話くらいしかできなかったと思うのですが…)。
2020.01.26 00:42 | 翻訳祭・フォーラムetc.報告(2016-) | トラックバック(-) | コメント(0) |

2016年、2017年に続いて3回目の参加になります。
(2018年の京都は参加しとらんのかい!というツッコミはなしね)

実行委員始め関係者の皆さま、ありがとうございました&お疲れさまでした。

最初にプログラムを拝見したときは、機械翻訳関連が多いのかなという印象を受けましたが、あとでゆっくり講演内容冊子を拝見すると、機械翻訳がテーマと言ってもいくつも切り口があり、それ以外に、さまざまな視点から「(日々の翻訳作業であるいは翻訳業を続けていく上で)翻訳者としておさえておくべきこと」もちりばめられていて、それなりにバランスのとれたプログラムのように感じました。
大会組織委員長(高橋聡さん)の挨拶に「…どの道を選ぶにしても、必要なのは十分な情報に基づいた自覚的な判断です。今年の翻訳祭では、その判断の手がかりとしていただけるような24のセッションを用意しました」とありました。聞きたいセッションが被っているものもあって悩みましたが、そこからひとつを選ぶという作業から、もう「自覚的な判断」が始まっているのかもしれません。

簡単に各セッションの感想

まず、時間的に間に合わなくて、聴講したかったけれど聴講できなかった1時間目のセッションについて。

「質を守る翻訳者の工夫~原稿受領の時点から」(高橋さきの・齊藤貴昭)
聴講された方の話を伺ったり、資料を見せていただいたりしたところでは、「翻訳の品質」に焦点を当て、(頭の中で起こっていることも含めて)原稿受け取りから最終チェックまでの「翻訳」とはどのような作業なのかということを、高橋さきのさんが説明され、それを間違いなく効率的に行うためのチェックの一方法を齊藤さんが実例を示して説明される、という贅沢な内容だったようです。どちらか一方だけでは見えにくい可能性もある「なぜそれが大切なのか」が見事に可視化されたセッションだったと想像します。初めての試みであるサテライト会場(英断!)も含めて立ち見が出る盛況ぶりだったそうで、「翻訳の基本」に関する話を聞きたい翻訳者がそれだけ多いということの現れではないかと思いました。

* こうした翻訳の基本について丸一日話を聞くことができる「翻訳フォーラム・シンポジウム」、来年は6月28日の開催だそうです。詳細発表はおそらく来春でしょうが、興味のある方は、翻訳フォーラムさんのツイッターに気をつけておかれることをお勧めします(回し者ではありません<念のため)。


2時間目「機械翻訳時代のサバイバル戦略」(井口富美子・梅田智宏・加藤泰・成田崇宏)
個人翻訳者(井口さん)、翻訳会社経営者(梅田さん・加藤さん)、翻訳会社の翻訳事業部責任者(成田さん)という立場の違う4名が、それぞれの立場から語る翻訳(社/者)の未来とサバイバル。このセッションも(サテライトを含め)立ち見が出ました。メモから抜粋します(共感できなかった部分も含めて箇条書きにしています)。お話をお聞きしたかぎりでは、こちらの翻訳会社はいずれも、MTを導入しているとはいえ、翻訳者の力というものを認め、MTについてきちんと考え、PEの労力もきちんと評価しようとしている、良心的な会社であるように感じました。また、他業種から転職されたという方の、「外から翻訳業界をみる」視点は、なかなか興味深いものでした。
・本来MT-PEに人力と同等の品質を求めるのは困難。内容に間違いがないレベルを提供。
・駆け出しではなくベテラン翻訳者の方がPEに向いているように思う。
・MTエンジンの精度は分野によってまちまち。PEの作業がきちんと評価されずコスト下げ圧力がかかった場合のはけ口にされている。
・MTを使う使わない(PEをするしない)は自分次第。受けるのであれば、他の作業者のためにも条件闘争はすべき。
・今後どのように状況が変わるか分からないため、使う場合もそうでない場合も、常に(MTの)リサーチや勉強は必要。
・現状、MT出力の品質を正しく評価できないクライアントが多いのが実状。本来は、翻訳会社が、できるかできないかを顧客にきちんと説明すべきである。
・今後は「やわらかい」翻訳しか人手翻訳として残らないと思われる。そこでも、納期短縮とコストダウンは求められるだろう。
・そうした時代に生き残るために、ベテランは力をつけてほしい(専門性、翻訳力など)。新人の場合は、もし抵抗がなければ、PEを極める方向に向かうという選択肢もある。ただし翻訳会社を選ぶ際は、搾取されないよう注意が必要。
・世間の9割以上が「翻訳とは何か」を知らない。
・今後、翻訳者はどうすればよいのか? 専門を極める、信用・信頼に基づいたチームをつくる、multi-profession(複業)で生きるなどのやり方が考えられる。


3時間目「NMT+PE=医学翻訳の新たな潮流」(津山逸)
(自分=津山氏の考えでは)MTは、Translation Memory Softwareと同じような、Toranslation Toolsのひとつ。対抗し戦う相手と考えなくてもよいのでは。PEによって翻訳者の仕事の幅が広がると考えればよい。NMTの良し悪しを決定するのはコーパスの良し悪しだ。英日翻訳については、NictがR&D Head Clubと共同でAI自動翻訳システムの最適化を進めている(加盟製薬会社複数社から提供された対訳データをコーパスとして使用)。このデータを用いたMTのPE作業が今後飛躍的に増えるのではないかと思われる。それが大きな割合を占めるようになるのが避けられないのであれば、早いうちに慣れて備えておいた方がよい。翻訳会社はよいポストエディタを求めているが、人力翻訳能力が高い翻訳者でなければよいPEはできない。一見誤訳に見えるがそうではないようなものも短時間に見極める能力が必要だからだ。背景知識も必要。MT-PEでは、短時間でどれだけ多くの量を仕上げられるかが問われる。100点を求める必要はない。「ちょうどよい」レベルでよい。ただし、常に100点のものができる実力はつけておく必要がある。PEはMTの付加価値であるから、コストダウンの対象にはしてほしくない(最終的なしわ寄せがエディタにくるようなやり方はやめてほしい)。

――というのが講義全体の大意。セッションでは、通常のMTエンジンと、それに製薬会社内のコーパスを加えたものから出力された訳文の比較を行いましたが、後者(以下Adaptive)の出力は、訳文のみをさらっと読んだだけでは、ほとんど違和感が感じられない仕上がりになっていました。(医薬のこの種の文書にMTを使うという判断の是非はひとまず置くとして)正直、これならかなりの数の人間翻訳者が負けるわと思いました。あくまでもセンテンスレベルの話ですが。セッション後半では、いかに短時間で、そうしたAdaptive訳文の不備を見つけ、修正の要否を判断するかのtipsが説明されました。「よいPE」を行うための秘訣的なものとでも言えばよいでしょうか。


4時間目は、「メディカル翻訳の将来を考える」か「玄人な関係を築くための本音トーク90分」のどちらかを聴講しようと思っていましたが、常日頃一番お世話になっている翻訳会社の役職者の方とサシでお話をする機会に恵まれましたので、サボってしまいました(スイマセン)。その社の方針(かなり本音レベル)や現況をお聞きし、こちらも考えや目指したい方向についてお話することができました。感触は悪くなく、これからもよい関係が続けられるのではないかと思いました。今回の東征の(個人的)収穫のひとつです。


(感想いろいろ)
私が聞いた2つのセッションでは、ポストエディタに向くのは、知識も翻訳力も豊富できちんと判断のできるベテラン翻訳者だとされていました。その点は確かにそうかなと思うのですが、PE作業ばかり続けていると、出力される訳文以上の訳文を自力でつくれなくなるおそれがあるという負の部分(つまりMTが翻訳者に及ぼすデメリットのひとつ)への言及はありませんでした。とはいえ、PE打診時に翻訳会社側からそういう話があるはずもなく、その点は翻訳者自身が自覚しておかなければならない点だと思います。上で、Adaptive訳文はなかなか素晴らしかったと書きましたが、一般MT訳の方は、読めるものもありつつ「…」という箇所もあり、たとえて言うなら、砂抜き不十分なしじみのお料理をいただいているような感じでした。そういう文章ばかり見ていては、そんな文章しか書けなくなるのは時間の問題だと思います(少なくとも、良くも悪くも影響を受けやすい自分はそうなるに違いありません)。

以前、MT導入がなし崩しに進んでいるというような話に絡んで、MTが自動運転と対比されていたことがあったと記憶しています。自動運転では、事故が起これば死に至るおそれがあるから、開発にも導入にも慎重になる(MTはそうではない)というような話だったと思います。確かに、言葉は、比喩的に「凶器」と言われることはあっても、それ自身が刃物のように実際に人を殺めるわけではありません。けれど、言葉はコミュニケーションの基本であり、それによって得られるメリットは計り知れませんが、ときには誤解を生み人間関係を壊し人や国を争わせる原因にもなり得ます。どんな形にせよ翻訳に関わる人間は、そのことを忘れてはならないのではないかと、メモを読み返し報告書を書きながら、ふとそんなことを考えました。翻訳祭とは直接関係はありませんが。

結局、一翻訳者としては「やみくもに恐れずけれど楽観もせず、現状を正しく認識し、周りの雰囲気や声に流されず、自分の置かれた(翻訳以外の)環境も考慮し、自分の進みたい道を自分で決め、決めたらとことん努力する」というごく当たり前のことを日々やっていくしかないのかなと思います。MTへと向かう流れを否定するものではありませんが(「他社がやっているから」「顧客が求めるから」「運用できちんと」で流れていくのはどうなんだろうとは思ってしまいますが)、自分はやはり自分で翻訳をしたい。であれば、今以上の力をつけていくことを一番に考えなければならないだろうと、改めて思ったのでした。


最後になりましたが、会場や懇親会でお話できた方、新しくお知り合いになった方、お話しできて嬉しかったです。ありがとうございました。一瞬のご挨拶しかできなかった方、またの機会にゆっくりお話させてください。総じて楽しい1日でした。ありがとうございました。
2019.10.26 02:29 | 翻訳祭・フォーラムetc.報告(2016-) | トラックバック(-) | コメント(2) |

翻訳フォーラム・レッスンシリーズのセミナー「辞書のホントの使い方~大辞典・学習辞典・英英辞典はここを読め~」に参加してきました。
詳しい内容が記載されたイベント情報はコチラ↓
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01nhqt10dfi13.html

セミナーで紹介された辞書・書籍・ウェブサイトなどの一覧はコチラ↓です。
http://fhonyaku.blog.jp/archives/80267988.html

すでにご存じと思いますが、帽子屋さんのブログ「禿頭帽子屋の独語妄言 side A」はコチラ↓
http://baldhatter.txt-nifty.com/


帽子屋さんの辞書の話は、これまで翻訳フォーラムのシンポジウムやJTFセミナーで何度か聞いていますし、辞書関連のブログ記事も適宜読ませていただいています。手元にはそこそこ辞書も揃いました。それで、今回はどうしようか迷っていましたが、月末の用事が延期になったこともあり、思いきって参加することにしました(下心は、もちろん、ある)。


イベント情報に「これまではどの辞書にも共通する汎用的な説明にとどまっており、どの辞書を使ったらどんなことが読み取れるのかという具体的・個別的な話までは至っていません。そこで今回は、翻訳者がよく使う辞書の特徴を紹介しながら、それぞれの辞書にどんな情報がどんな形で載っているのか、どう読み取ればいいのかを細かく解説します」とあるように、今回のセミナーは、これまでの「各種辞書とその特徴を(ざっと)紹介する」というものから、一歩も二歩も踏み込んだものであったと思います。


セミナーは、各辞書(英和・和英・国語)の序文当てクイズから始まりました。
各辞書に個性があり、そして面白い! これまでは海野さんと「英語基本語義辞典」くらいしか読んだことがなかったですが、時間を見つけて序文も読んでみようと思います。

特に、三省堂国語辞典第三版序文の「辞書は、ことばを写す〝鏡〟であります。同時に、辞書は、ことばを正す〝鑑(かがみ)〟であります。〝鏡〟と〝鑑〟のどちらに重きを置くか、どう取り合わせるか、それは辞書の性格によってさまざまでありましょう」という部分については、編者の縁者という参加者の方から、その趣旨についてもっと詳しい説明をいただきました。序文まで読むと、もっと背筋を伸ばして辞書を使わなければ、という気持ちにさせられます(ちなみに、私は、物書堂アプリとして三省堂国語辞典第七版を所持していますが、あとで確認しましたら、七版序文に加えて三版の序文も収載されていました)。


序文の次は凡例についてのお話。
凡例を知っているのと知らないのとでは、辞書を引いたときに得られる情報がかなり違うことを実感。恥ずかしい話ですが、意味をよく知らなかったものもかなりありました。凡例大事。


その後は、英和辞典(ランダムハウス・ジーニアス・新英和の三大英和辞典、リーダーズ&プラス、ビジネス技術実用英語大辞典など)、英英辞典(Cobuild、Longman、WordNetなど)、国語辞典(明鏡、三省堂、大辞林など)、類語辞典(日本語大シソーラス、類語例解辞典、デジタル類語辞典)の順に、それぞれの特徴の説明がありました。参加者も実際に例題の単語を引きながら、それぞれの結果についての解説を聞くという形でしたので、凡例や用例まできちんと読むことの大切さが実感できました。


個人的にはWordNetの見方をきちんと教えていただけたのが、収穫のひとつでした。実は私は、かなり前にWordNetをDLして使ってみたものの、使い勝手がイマイチだなと感じて、あまり使わなくなってしまっていたんです。それは、英語版と日本語版の統合版を日本語シソーラス的に使用しようとしていたからだということが分かりました。記事の最初に記した「参考資料一覧」のWordNetの項にも、ちゃんと「日本語シソーラスとしての使用は非推奨」と括弧書きされていました(恥)。上位下位という概念の考え方やラベルの見方を教えていただきましたので、これからは、もう少しちゃんと使用することができそうです。このWordNetの上位下位の概念は、デジタル類語辞典の同義・狭義・広義とちょっと似ているなと思いました。

それから、新和英大辞典の使い方も、自分の中で以前より明確になったような気がします。これまでは、「全文検索で用例から訳語(日本語)探し」という使い方しかしてこなかったんですけど、日本語単語を入力しての広い意味での語義確認もなかなか役に立ちそうだということがわかりました(実際に帰宅して両方やってみてスクショもとりましたので――そのうち――補足として記事を書こうと思っています<希望的観測<そのうちな)。


最初に帽子屋さんが仰ったように、これからは、オンライン辞書、CD-ROM(またはDL型の)辞書(の串刺し検索)、アプリ(物書堂など)、紙辞書、電子辞書などさまざまな媒体の特徴を知り、それらを駆使して辞書引きを行う、という方向に向かうのでしょう。
辞書の基本を抑えたら、自分の仕事環境、分野などにあわせて、辞書環境をカスタマイズしていく(どんな辞書をどのように使えば最短時間で最適な結果が得られるのかをよく考える)必要があるのだということを(いや、それ、当たり前と言えば当たり前なんですが)、改めて意識することができたセミナーでした。
頭も辞書環境も、もう少し整理しなければ。
2019.10.01 22:54 | 翻訳祭・フォーラムetc.報告(2016-) | トラックバック(-) | コメント(0) |
「シンポジウムでは、どんな風にノートをとっているのですか」という質問をいただきました。
こうやってレポートを書いていると、ノートとりにまで目を向けてくださる方がいて、ありがたいことです。


ひと言で言えば、「書き取れるもの、聞き取れたことはすべて書いています」ということになります。なので、ずっと何か書いています。今回のシンポジウムでは、A4用紙5枚(裏表)10ページ分のノートをとりました。

なぜ、こんなノートのとり方をするようになったかを説明するには、初参加の2016年の翻訳祭までさかのぼらなければなりません。
それまで私は、翻訳祭のツイートやその後のレポート記事を「(参加できて)いいなあ」「羨ましいなあ」と思いながら眺めていました。
だから、始めて参加できた翻訳祭では、それまでの自分のように「いいなあ(参加したいなあ)」とPCの前でため息をついている方たちのために、精一杯レポートをしようと決めていました。ツイッターでは、その場に居合わせた方々の生の感想が流れてきます。同じフレーズが何度も流れ、「それがその話のキモだったのだ」ということは分かるのですが、どういう状況で、どんな流れでそのフレーズが演者の口から発せられたのかは、前後のツイートやその後のレポートから想像するしかありません。だから、「大事な部分を切り取った、内容の濃い深いレポートは他の方に任せて自分は全体の流れが分かるようなレポートをしよう、そのためには、書き取れることはすべて書き取ろう」というのがSayoレポを始めた理由です。


今もその気持ちは変わらなくて、「昔の私のような方に読んでほしい」とノートをとり、レポートを書いています。

そんなわけで「とにかくすべて書く」ことに徹しているため、「ここ大事だから書き留めよう」ということはありません。ですから、シンポジウムなりセミナーなりが終わると、「え、今日私どんな話を聞いたっけ」状態で、普通なら心に残っているはずの重要な内容がまったく自分の中に残っていなかったりします。なので、自分のためにも復習とレポート作成が必要なのです。

シンポジウムに関していえば、講演者によって少しずつノートのとり方が変わります(3回目ともなると、そのへんだけは少し見えてきました)。

深井さんは、比較的ゆっくり喋られ、スライドもイラストや写真多めなので、ノートテイキングという点から言えば一番ラクです(その代わり、どの情報も落とすことができませんが)。
なので、トップバッターが深井さんだと、言葉がちょっと悪いのですが、いいウォーミングアップになります。耳から情報を中心に、できるかぎりスライド情報を書き足します。

井口さんは、とても理路整然と話されますので、やはりノートはとりやすいです。話が分かりやすい一因として、(スライドで)図を多用されるということがあるかもしれません(今回の「ぐるぐる循環させる」の説明も、図があれば一目瞭然ですよね)。なので、その図だけは、間違いがないようキチンと写しておかなければなりません(昨年はいい加減に写したのでレポートに使えなかった)。耳から聞いたこと7割、スライドの内容3割くらいの感じでノートをとります。

高橋(あ)さんは、「マイクいらないですよね」と仰って地声で話されるだけあって一番滑舌がよく、「耳からノートテイキング」には神のような方です。スライド情報はそこそこ多いのですが、あとで事後配付資料やご自分のブログ記事などの形で何らかの補足をしてくださることが多いので、耳からの情報をおもに書き取ります。

高橋(さ)さんは、すごく大事なことを仰るのだけど、とにかく難しい。今回は、事前配付資料とスライドの内容がかなりかぶっていたのでとても助かりました。さきのさんのお話をノートにとるときは、スライドからはキーポイントだけ、おもに耳から情報を書き殴ることになります。一度置いてきぼりになると絶対に追いつくことはできないので(&ほとんどの方がそうだと思いますが、「ノって」こられると早口になります)、とにかくその場では、耳に入ってくる内容をできるかぎり書き取ります。

(星野さん、佐復さん、タコの会さんは、まだ傾向がつかめていないため割愛します。スイマセン。)

最後の4名によるケーススタディは、「ノートテイキング」的観点からいえば、一番ラクでした。スライドに各例題が表示されましたが、いずれも事前資料として配付されていたものですので、基本、顔を上げることなく耳からの情報だけに傾注することができました。「スライドも見ながらノートをとる」には、首の動きと視線の移動が必要になりますし(キー入力と同じで「チリも積もれば…」です)、瞬間瞬間で、耳からの情報とスライド情報のどちらを優先するかという判断も必要になります。ですから、疲れマックスの最後のセッションが、このケーススタディであったことは、とてもありがたかったです。


ノートからレポートにする作業ですが、まず、テーマや当日の進行表とにらめっこしながら、「なぜその順番なのか」を考えます。フォーラムのシンポジウムでは、内容や緩急も含め、話をされる順番がとてもよく考えられていると思います。そこで、だいたいの流れを1枚程度のメモにしてしまうと、その後のレポート作成がかなりラクになるような気がします。
基本的には自分のノートを基にレポートを書きますが、一応、ハッシュタグでまとめられたシンポジウム関連のツイートも確認しておきます。
その後、もう一度ノートを読み直して、どの部分をレポートに採用するか(&どの部分を闇に葬るか)を決めます。だいたいそのあたりで新幹線が京都に到着します。


覚えとしてのメモなら、自分にとって大事だと思えるところを重点的にノートをとればいいのかなと。
もしも、翻訳祭や来年のシンポジウムで「全部ノートをとろう」と思っている方がいらっしゃったら、なにがしかの参考になれば幸いです。
2019.06.03 22:15 | 翻訳祭・フォーラムetc.報告(2016-) | トラックバック(-) | コメント(0) |