屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。


今日は100%真面目な記事です。どこにもオチはありませんので(たぶん)、悪しからずご了承ください。

...主に、山中伸弥先生の講演内容についてです。
...でもって、「できるだけ忠実に報告」を心掛けましたが、感想部分はかなり主観が入っています。また、一部、ウェブや書籍で確認した内容(薬、HLA、疾患の説明など)を、拝聴した内容と異なる文言で記載している場合もあります。ご容赦くださいませ(それ以外で話された内容と異なる記載はしていないつもりです)。



日本では初開催となるサミットの公開シンポジウム(京都)に参加してきました。
内容はコチラ。iPS研究所の山中伸弥先生が講演なさるという。これはもう、行かねばなるまい。

薬事規制当局によるものとはいえ、一応国際的なサミットということもあるのでしょう、サミット自体はClosed Meetingで行われ、サミットが閉幕した翌日に、サミットの概要を速報するという形で、シンポジウムが行われたものです(と理解しています)。サミットで話し合われた内容を戦略的に実施する組織としてICMRAがあり、来年からは、ICMRA-Summit(名称はこのとおりではない可能性が高いです)として統合して開催されるとのこと。
(ICMRAについては、PMDAに若干の説明があります。そちらからICMRAサイトに跳ぶこともできます)
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/icmra/0001.html

各国薬事規制当局の合意内容や、今後の方向性について、もう少し具体的な話が聞けるかなと思ったのですが、(ワタクシの頭がついていかなかったということも大きいとは思うのですが)、大枠の話と目標に終始しているような印象でした。まあ、サミットの翌日だし、それはそれでしょうがないのかも。

山中先生が、現状こういう問題点がある → その問題を打破するためにこういう方法を試みた → こういう成果があったが、まだこういう問題がある → その問題を打破するためにこういう試みを行い今ここ、という分かりやすい具体的なお話をされたあとでしたので、余計そのように感じたということもあるかもしれません。

とはいえ、各国規制当局の今後の取組みについて話を聞く機会など、そうそうないでしょうから、出席してよかったと思っています。
お天気にも恵まれて、京都会館前の庭園はとても美しかったですし(<そこか<自分)
一見座り心地のよい椅子はジツは腰にはあまり優しくなく、腰が異議を唱えたため、最後のパネルディスカッションの前に退出しました。


で、まあ、ワタクシ的には、この日のメインの目的は山中先生の講演だったわけです。

この日、先生は、交通渋滞に巻き込まれて遅れて到着され、そのために発表の順番が前後してしまったのですが、冒頭で「行楽シーズンであることを失念していました」というようなお詫びの言葉を述べられ、「全然偉ぶったところのない方だな」と思いました。そういえば、ノーベル賞を受賞された方でしたね、と逆に思い出す始末です。

上でも書きましたが、先生の講演は理路整然としていて分かりやすく、同時に仕事に対する責任感や静かな情熱も感じられ、45分という時間があっという間でした。当日一番発表時間が長かったにもかかわらず、資料(PPT)の枚数は一番少なかったのではないかと思います(数えた訳ではありませんので、お得意の「体感」ですが)。持帰り用のPPT資料が用意されない場での資料の効果的な使用、ということについても少し考えさせられました。以下、山中先生の講演内容です。


「iPS細胞の研究と応用」(山中伸弥)

この日は、まずご自分のお父様のご病気(C型肝炎)のことから話を始められました。
この肝炎ウィルスが発見されたのは1989年(先生のお父様はそれよりずっと前に輸血で感染されています)、画期的な特効薬と言われるハーボニーが米国で承認されたのは2014年(その後日本でも承認)です。1錠/日を3ヵ月程度服用すると、ほぼ100%の患者の体内からウィルスが消失するそうです。

ここで、先生は、ウィルス発見から新薬承認まで時間がかかりすぎていること、コストが高すぎる(1錠およそ5万5000円!)ことの2点を、問題として指摘され、「いかに早くのみならず、いかにコストを下げられるかを研究段階から意識するのが研究者の責任」と仰います。

この2点の問題に対処できるもののひとつが、先生の研究されているiPS細胞です。

***
iPS細胞について詳しく知りたい方は、CiRA(Center for iPS Cell Research and Application)のコチラのページが分かりやすいと思います。
こんがらがりがちなES細胞とiPS細胞の違いについても、分かりやすくまとめられています。
(この部分はSayoが勝手に挿入した、講演とは無関係の部分です)
***

iPS細胞やES細胞は、高い増殖能を有しており、ほぼ無限に増やすことができ、増やしたあとで分化させることも可能です。この性質を再生医療や創薬に応用できないか(どのように応用できるか)というのが、先生の研究の内容です。再生医療の方は、すでに臨床応用が始まっていて、理研の高橋政代先生が、加齢黄斑変性の患者に、自己iPS細胞由来のシートを移植する手術をなさっています。3年が経過した今年3月、1例目の患者の状態が、癌化も免疫低下もなく良好に推移しているという結果が発表されたそうです。

ただ、この研究を進めるなかで、自家移植(患者自身の細胞から作製したiPS細胞の移植)は準備に時間がかかり、患者単位のコストも膨大であるという問題点が明らかになったそう。

この問題を克服する方法として、現在、先生が所属するCiRAが取り組んでいるのがiPS細胞をストックするというプロジェクト。免疫反応は、平たくいえば(<ワタクシも詳しいことは分かっていない)、患者とドナーのHLA型が一致しないために起こるわけなんですが、非血縁者でこのHLA型が一致する確率は非常に低い。ただ、HLAホモ接合体は、HLAヘテロ接合体より一致する可能性が高い。だから、このHLAホモのドナーに細胞を提供してもらってiPS細胞を作製し、安全を確認して保存し、必要に応じて医療・研究機関に提供していこう、というのがこのプロジェクトの骨子です(あくまでワタクシの理解したところです)。

そのためのスクリーニングに必要なボランティアも費用も現実的ではないため(全人口の90%をカバーするためには、10億人のボランティアと数十億円の費用が必要なのだとか)、日赤の協力を得て、倫理的に問題のない方法でドナー探しをしているそうです。具体的に何個のiPS細胞がどの状態まで進んでいて、いくつの機関に配布しているというような具体的な数字も挙げられていました。

このようにして進められているiPS細胞ストックプロジェクトですが、やはりそこにも問題はあるそう。ひとつは、ドナーのRecruitmentで、今後はどうしても国際間の協力が必要になってくるとのことでした。もうひとつは、やはりコストの問題。いずれの場合も、国毎の規制が大きな壁となっているということを、やんわりと、でもはっきり仰っていました。

さて、もうひとつの応用分野である「創薬」ですが、iPS細胞は、薬に付きものの神経毒性その他の毒性がまずないことから、再生医療以上に守備範囲が広いそうです。さまざまな分野で研究が進められていますが、特に、患者が少なく研究さえ進めてもらえない難病への対応が期待されています。

たとえば、FOP(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva:進行性骨化性線維異形成症)。これは、筋肉や腱などに骨組織ができてしまうという難病なのですが、iPS細胞を用いて、原因物質を特定し、ラパマイシンという既存の薬剤が骨化の抑制に有効であることを確認することができたそうです(蛇足ですが、ラパマイシンは薬剤溶出型ステントに用いられることも多いため、個人的に割りとお馴染みの薬剤です)。

マウス実験で効果が確認され、先月から、ラパマイシンと偽薬を用いた臨床試験が開始されたとか。効果が確認されれば、半年後からは全例にラパマイシンが投与されるそうです。あるFOP患者の方の特集をTVで見たことがありますが、彼もこの薬の恩恵を受けてほしいと願わずにはいられません(臨床試験には参加しているそうです)。

企業とコラボする形の研究も進んでおり、今後、協力を求める機会も増えると思いますが、協力を宜しくお願いしますという言葉で、先生は講演を締めくくられました。

決して情熱的に語られる訳ではありませんが、逆に「研究者としてどうしてもやらなければ」という秘めた情熱のようなものが感じられ、最後はうるうるしてしまったのでした。

以上、記憶が新しいうちにと、記事にしました。
「行きたいけど行けなかった」方たちにも伝わるものが何かあれば嬉しいです。
2017.10.28 18:11 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(7) |
11月8日追記:
開催時間が変更(延長)になりました。


鈴木さんから、「3時間ではとても語り尽くせない」とのありがたいお申し出があり、勉強会の開催時間を延長しました。
開催時間が若干繰り上がっております。ご注意ください(開場同じ)。
ゆっくり来阪されるのは本当に久し振りとのことです。この機会を逃せば、また何年、何十年とお待ち頂かなければなりません(<ホンマか)。
時間の都合のつく方は是非!

11月9日追記:
鈴木さんからメッセージをいただきました。


鈴木さんから、案内に以下の説明を追加してほしいとのメッセージを頂きました。
しかも「可能であれば、関西弁に翻訳して掲載せよ」との超手強い課題つき(ご無体な~)
畏れ多くてとてもそのようなことはできませんので、原文のまま、引用させていただきます。悪しからずご了承ください。

(以下、鈴木さんからのメッセージです)

===
1点補足しておきますと、翻訳ストレッチ体験は、参加者の皆様に実際にいろいろな学習作業をやっていただきますので、最初の10分程度簡単な説明をし、「よ~い、始め!」のかけ声の後は、5~10分ごとに「はい、次に行ってください」というかけ声と皆さんの音読(または朗読)の声だけが約70分ぶっ続けとなります。これまで3回やりましたが、遅れて入ることも、途中でトイレに立つこともできません(というかそうしてしまうと、自分がどこにいるかわからなくなってしまう)。
したがって参加される皆様へのお願いは二つ・・・

①開始時間に遅れないでください。
②事前にトイレに行っておいてください(当日もそう申し上げます)。

というわけで、一つ(あ、いや二つ)よろしくお願いします。
===

(以下、掲載時の本文-会場・開催日時等の必要情報を太字にしました)

***

来年早々、金融翻訳者の鈴木 立哉(スズキ タツヤ)さんをお招きして、大阪で「十人十色」勉強会を開催する運びとなりました。
詳細は以下のとおりです。

なお、申込み要領は、12月初旬に、FBの「十人十色」グループで発表され、申込みも同じ頃に開始される予定です(メールでの申込みとなります)。
 * グループ外の方の申込み等については、本記事の末尾をごらんください。

日時:
 2018年1月6日(土)  13:30 ~ 16:30 13:20 ~ 16:50 (開場13:00)
場所:
 神戸大学学友会大阪クラブ・大阪凌霜クラブセミナールーム(大阪駅前第1ビル11F)
 アクセス
 
内容:
1 翻訳ストレッチを始めようと思った理由&翻訳ストレッチの内容の変化etc.
2 翻訳ストレッチのやり方の説明(トイレ休憩)+翻訳ストレッチ演習+翻訳ストレッチに関するQ&A
3 出版翻訳を始めた経緯&産業翻訳との両立・どのような流れで翻訳を行うかetc.
4 全体Q&A
 * 全体Q&A以外の内容は、お話し頂く順番が前後する可能性があります。

勉強会後、17時30分より、懇親会も予定しております



ご存じの方も多いと思いますが、鈴木さんは金融分野の実務翻訳をされながら、出版翻訳もなさっています。訳書に「Q思考―シンプルな問いで本質をつかむ思考法」(ウォーレン・バーガー)、著書に「金融英語の基礎と応用 すぐに役立つ表現・文例1300」などがあります。勤勉実直で...お話していて楽しい方です。

「翻訳ストレッチ」は、鈴木さんが、毎朝、仕事を始める前にルーチンでされている勉強法で、2016年のJTFセミナー(東京)で、その内容を惜しげもなく公開してくださいました。その後、セミナーに出席できなかった方の要望に答える形で、「十人十色」勉強会(ワークショップ)が2回開催され、2回とも満席の盛況ぶりでした。

2回目の勉強会に出席したおり、「ぜひ関西でも」とお願いしたところ、「喜んで」と快諾頂き、今回大阪編として開催できる運びとなりました。お願いした責任を取って、臨時スタッフを務めさせて頂いています(なので、全力宣伝中)。「翻訳ストレッチ」の内容は時間とともに進化しているようですので、今回「最新バージョン」をお聞きできるのを楽しみにしています。

鈴木さんのようにストイックにルーチンをこなすことはなかなか難しいと思いますが、どなたも「ここは自分の勉強に取り入れられる」という部分が見つかるのではないかと思います。
また、大阪では、(鈴木さんは「あくまでも自分の場合ということで」と断っておられますが)出版翻訳に関する話を聞ける機会も少ないですから、そうしたお話も参考になるのではないでしょうか。

まだ少し先のことになりますが、カレンダーに印をつけて予定を空けておいて頂ければと思います。


ご参考まで ↓

・2016年の鈴木さんのセミナー内容
https://www.jtf.jp/east_seminar/list_e.do?fn=search&archive=2016
(第4回「いつまでもアマと思うなよ 8年後の逆襲(?)~金融翻訳者が語る自立するための心がけと具体的な方法2~」)

・2017年4月に第2回十人十色ワークショップに参加した際の報告記事
http://sayo0911.blog103.fc2.com/blog-entry-524.html


「十人十色」について:
「十人十色」勉強会はFB上の翻訳者・翻訳学習者のためのクローズドグループです。
勉強会も、通常はグループ内で実施されますが、オープンで実施されるものもあります。
そのような勉強会やセミナーは、申込み方法も含め、こちらのページでご確認頂けます。
(メンバー加入を希望される方は、以下のFBページの「メッセージを送る」からメッセージをお送りください。その際翻訳者または勉強中であることを明記してください。)
https://www.facebook.com/jyunintoiro

2017.10.26 20:16 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(0) |

屋根裏には、「・・・から(強引に)翻訳へ」という得意技があります。

アスリートやベテラン俳優などに関する記事や、そうした方々のインタビュー記事を、翻訳と強引に関連付けるという荒技です。

周りにさまざまに支えられているとはいえ、こうした方々の「よい」パフォーマンスの一番の拠り所は、自分自身--自身の中にある、練習や稽古に裏打ちされた技術や経験、「できる」という自信、「まだまだ」という謙虚な気持ちなどであり、その「最終的に拠り所とできるのは自分自身(の力)」という部分が、翻訳にも通じるところがあって、自分の中の「強引にもってくるで」アンテナがぴぴっと反応してしまうのかなと思っています。

ワタクシは決して「通」ではないけれど、フィギュアスケートを観るのが好きなので、フィギュアスケートから強引に持ってくることが多いです。
最近では、コンパルソリーから「強引に翻訳へ」をやっています。


今日の「強引に翻訳へ」の元記事は、Web Sportivaに掲載された、「佐藤信夫氏・久美子氏(元浅田真央コーチ)に聞く『喜びと苦しみの日々』」。
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/figure/2017/10/05/post_23/index.php
(最後は、「続きはSportivaフィギュアスケート特集号へ」になるんですけど<ありがち)

以下、ウェブ掲載版からの抜粋です。


専属コーチが不在のなかでバンクーバー五輪のシーズンを戦った浅田にとって、課題はジャンプの修正だった。だが、10年以上もジャンプを跳び続けてきたなかで、いくつかの癖がついていた。そこを見破った佐藤コーチだったが、すぐにはジャンプの修正に着手しなかった。まず始めたのはスケーティングの基礎を教えること。そのめどが立ってから、ジャンプの見直しに入ろうと考えていた。だから「道のりは長く厳しい」と覚悟を決めていた。(文:辛仁夏)

「スケートというのはひと滑り、ひと滑りじゃないですか。そのひと滑り、ひと滑りを毎日チクッと言っておけば、ふと変化が起きるわけです。その変化がやがて、いつのまにか本人にとっては心地よい変化になるんです。気持ちよく滑れるものだから、少しずつ変わってきたのかな、というふうには思います」(佐藤信夫コーチ)

「一番簡単なことを大切にするということですよね。一番簡単なことだから無視するのではなくて、簡単なことを大事にするということの積み重ねですね」(佐藤久美子コーチ)

「彼女からすると、受け取り方としては『また同じことを言ってるわ』になるんですけれども、それでもいいんです。何かあった時にふと、それを思い出すというふうになれば」(佐藤信夫コーチ)

(ソチ五輪のSPで失敗を重ねた浅田に対し、佐藤信夫コーチは)「練習をきちっと全部やってきた。できない理由はないし、できない理由が見つからない。できて当たり前なんだよ」と、背中を押した。(文:辛仁夏)


結局、また「基礎ですかい」て話なのですが、自分は、やはりいつもここに辿り着いてしまう(進歩がないともいう)。

久美子コーチのいう「一番簡単なことを大切にする」というのは、漫然と毎日基礎練習をするということではなく、「何かを意識しながら」基礎練習をするということかなと思います。フィギュアだったら、たとえば、身体の軸を意識するとか、のってるエッジを意識するとか。翻訳だと、たとえば、「流れを意識しながら」「使われている言葉を意識しながら」文章を読むとか、「引き方を意識しながら」辞書を引くとか、「接続を意識しながら」文を書くとか。

そうしたことは、そのうち「無意識に」できるようになるのでしょうけど、たとえばゴルフのフォームなどのように、何かのきっかけで崩れてしまうこともあるかもしれない。そうしたら、また「意識しながら修正する」。技術は、そういことを繰り返して向上させていくものなのかもしれません--てことで、考えてみれば終わりがないのだった。でも、考えようによっては、「(気力・体力・知力が続くかぎり)いつまでも改善・努力できる」職業というのは幸せな職業なのかもしれません。

今日は散漫になりましたが、散漫なままで失礼致しまする。
2017.10.06 18:13 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(0) |
翻訳フォーラム・レッスンシリーズ第7弾、講師はT橋(さ)さんです。

この「述語から読む・訳す」については、「翻訳フォーラム・シンポジウム」の中でもお話がありました。
そのときの記事がコチラです。
(時間があれば、まずコチラから読んでいただけたらと)


お話をお聞きし、「衛星図(上の記事の中に例があります)」を作って考えるというやり方を示していただき、「翻訳事典2018年度版」や「翻訳のレッスン」を再読して、やっと考え方の全貌が掴めてきたという感じですが、それでも、きちんと把握できているのか、書籍や雑誌の中で示されたトレーニングができているのか、自分のやり方でいいのか等々、不安が多々ありました。

そうしたら、東京でワークショップがあるという。これはもう、行かねばなるまい。
決して、遊びに行ったわけじゃありませんよ、決して。
いちおー、「翻訳事典」の該当記事と「翻訳レッスン」のT橋さん担当部分を再読して参加しました。


てことで、以下、ワークショップのまとめです。長いので、お時間できましたときに。
(* 応用もきくかと思いますが、ワークショップの話は、英語原文→日本語訳文の方向です。)

前半は、「述語から読む・訳す」という考え方の概要の説明でした。
(この部分は、JTFジャーナルの次号に、復習的な形で、T橋さんが寄稿なさるそうです。)
(JTFジャーナルは、会員でなくても、登録すればPDF版を読むことができます。私もそのようにしています。)

以下、その概要のそのまた概要を、箇条書きでまとめてみました。
(あくまで、ワタクシが理解し得たかぎりですので、間違っている部分があるかもしれません)

・翻訳は、本来不自然な作業なので、日本語力を向上させる努力をしなければ、翻訳すればするほど日本語単体の文章力は低下する(ホラーやな<と前も言ったような気がする)。

・日本語を維持向上させるための方策として、日本語文法と英語文法の共通部分を体系的に身につけることをしておけば、原文が理解しやすく(最終的に)効率的でもある。

・その「日本語側と英語側を対応させる」方法として、述語に目をつけて文の構造を考える、というやり方がある。
 * ここで、衛星図について説明。
 ** 述語を中心に衛星図を描くことで、主-述のねじれ等を防ぐことができるということなのですが、実際にやってみると(ワタクシは和訳者なので、まず英語でこれをやるんですが)、確かに「主語が迷子にならない」感があります。

・文の構造を考えるときは、構文が、単文、二股合せ文(主語は1つで述語が複数ある場合)、重文(合せ文)、複文(入れ子文)のいずれであるかを意識する。

・また、意味的内容から、できごと文(なにがどうした=動詞述語文)としなさだめ文(なにがどんなだ=形容詞述語文、なにがなんだ=名詞述語文)に分類する。SV、SVO、SVOO、SVOC、SVCの5文型は、できごと文、しなさだめ文のいずれかに(概ね)分類することができる。
 * できごと文としなさだめ文については、「翻訳事典」の該当記事にもう少し詳しく書かれています。
 ** ここで、20例ほどの課題文を、できごと文、しなさだめ文に分類するという実習があり、前半終了です。


後半は、いよいよワークショップの時間です。
これをグループワークで行うため、予めシャッフルされた7班に分かれます(顔見知りの方がいてホッとするやら、まったく別の意味でキンチョーする方とご一緒するやら...)

50個弱のMostの訳例が記載されたカード(訳例は、新和英大辞典の逆引きで得られた例文から抽出されたもの...だったと思います<カード切離し作業をしながら聞いていたので間違っているかも)を使用し、これを、グループで相談しながら、日本語訳でmostにあたる部分が置かれている位置によって、6パターン(フレーム外=外出し、主語の前、主語の後ろ、述語の前、述語=文末、その他)に分類します。

訳例カードはこんな感じ。
訳例横








実際は、配布資料に各パターンの衛星図も用意されていて、迷ったときの助けになります。
分類の過程で、「おお、その訳は出てこない(新和英逆引き恐るべし)」という訳例に遭遇したり、グループ内で意見が割れたり、文脈がない中では分けにくいよね、という話になったり。「自分でやってみる」+「グループワーク」のよさですね。
 * 蛇足ですが、通常「語彙」と呼ばれるものは、各パターンの中での変化なので、パターン変化が自在にできるようになれば、表現の幅は格段に広がります(ハズです)。

「仕分け」が終わったら、次は自分たちで6パターンの訳語を考えます。時間の制約がある中では、どうしても無難な訳になりがちでしたが、それでも、自分では思いつかないようなアイディアも出てきたり。これもグループワークのよさですね。最後に各班の発表があり、そこでまた、自由度の枠が広がったような感じです。
今回は、参加者の中に十代の学習者の方が1人混じっておられて、若者向けの表現に場が湧くということもありました。若者向けの表現を取り入れるかどうかは、これはもうケースバイケースでしょうが、年代の異なる同業者や学習者の方と話をする機会は大事だなあと改めて思いました。

その後、駆け足でoftenの訳例に触れたあと、簡単なまとめがありました。またまた箇条書きで。

・英語文法と日本語文法の整理には時間が掛かり、一時的に翻訳スピードが下がる可能性もあるが、それは初期投資。長い目で見れば力がつく。「急がば回れ」。
・述語に目をつけられる(述語を中心に考えられる)ようになると、日本語も構文として考えられるようになる。
・最終的に翻訳作業の正確さと自由度が増すので、「文章を見たら課題だと思って頑張りましょう」。


「予習」をしていったので余計にそう思えたのかもしれませんが、特に「翻訳のレッスン」には、この日お聞きした内容がうまくまとめられていると思います。
未読で出席された方がおられましたら、今読んでみると、「砂に水が染み込むように」という感じで頭に入ってくるのではないかと思いました。
ワタクシ、決してフォーラムの回しものではありません、念のため。


もうすでにかなりの長さになっていて、本当に申し訳ないのですが、最後に若干の感想など。

三日坊主の多いワタクシですが、できごと文としなさだめ文の仕分けは、時々思い出したようにやっています(正しくは「思い出したときに三日坊主する」)。思い返してみれば、パターン変化も、それとは意識せずに、日々の仕事の中でやっていたりします。ワークショップに参加したことで、やり方や目的がもう少し明確になったような気がします。聴くばかりではなく、参加するセミナーも大事だなと再認識しました。

T橋さんは「考える」という言葉をよく使われたのですが、この言葉がとても「深い」言葉であるように思えました。
さまざまなことを考えていると、当然翻訳速度は落ちるわけで、ワークショップでは、それが、先に進むための「初期投資」と表現されていました。
「だから、つまり今は頑張りどきで、もう少しすべてを整理することができれば、もう少し楽に早く、日本語として齟齬のない(できれば「そこそこ読ませる」)訳文が書けるようになるのかなあ」といったことをとつおいつ考えていて、ふと、翻訳が「早い」には2種類の「早い」があるのではないか、ということに思い至りました。「考え」分類し多くの情報を整理して自分の中に蓄積できているがゆえに早い人と、外部の用語/例文集等にうまく頼って早い人の2種類です(この場合の「用語/例文集」とは、決していわゆるTMのみを指しているわけではなく、狭い分野に限定した用語や言回し、定型文などをまとめたものもこれに該当するかと思います)。基礎力のある方が、きちんとした信頼の置ける用語/例文集を使って仕事をしていく分には、分野限定の成果物という点ではまず問題はないのかもしれません。でも、わりと根本的なことから考え悩むことなく外部に頼る、ということは、「そこから隔絶されてしまうと自分の中に戦う武器がない」という危険性も孕んでいるのではないかと、そんな風に思ったのです。「考え、修正し、正しい(この場合はきちんとした翻訳ができるということですが)方向に進む」ことができるというそのことこそが、「戦う武器」なのかもしれません...自分の中でも、まだ言葉として上手くまとまっていない状態なのですが、まずはワークショップの報告を書いておきたく、分かりにくい感想も含めさせていただきました。ご容赦ください。


最後になりましたが、資料の準備も含め、実り多い勉強会を企画してくださった翻訳フォーラムの皆さま、それぞれお忙しい中、本当にありがとうございました。
2017.10.02 20:36 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(4) |

1年ほど前に「見出しを文章に、文章から見出しを」という記事を書きました。

だいたい毎日紙版の新聞を読むので、この作業は、その後も続けています(サボる日もありますが)。

続けることで、何か身につくものはあるのか。
...てことで、ちょっと振り返ってみます。

「見出しを文章に」の方は、ちょっと油断すると「本文盛り込みすぎ(見出しにそこまでの情報ないやろ)文」になってしまい、「上達した」感はありません。やはり、「漏れてると言われたらヤバいので」という小心者の性格が災いしているのか。翻訳でも、この「冗長」グセが出てしまうことが多々あります。「見出しを文章に」を続けることで、そういう自分のクセ(弱点)を短い周期で「はいはい、そうでしたね自分」と肝に命じることができている、というのが、「強いていえば」のadvantageかもしれません(なのに、なかなか直らんという...)。

「文章から見出しを」の方は、最近、「そのおかげかも」と思ったことがありました。
(前にも書きましたが、ワタクシは、見出しを考えるという作業はけっこう好きなので、どちらかというとコチラの作業の方が楽しいです)

わが家ではA新聞を購読しているので、「文章から見出しを」には、火~土曜日は3面の「てんでんこ」という記事を、日曜日は(「てんでんこ」の連載が日・月は休みのため)同じく3面の「日曜に想う」を使用しています(月曜日は休日♪)。「てんでんこ」は、「頑張ってやろうかい」と思える程度の絶妙な長さです。記事には、2~4文字の見出しと、30文字程度の副見出しがあります。
たとえば、今は「音楽の力」がテーマなのですが、9月22日の「てんでんこ」は、見出しが「沖縄民謡」、副見出しが「『あす』が津波で一瞬にして失われる現実。宮沢和史は動き始めた。」です。

新聞の副見出しを隠した状態で全文を読み、5分程度で副見出しを考えます。文字数にはあまりこだわりません。自分なりの副見出しができたら、答え合せ。新聞の副見出しに「うーむ、そこを取ってくるか」と敗北感とともに納得したり(←だいたいこちら)、「いやいや、それだと内容モロ分かりでしょ」と若干のケチをつけたりして終わります。頭の中で考えているだけなので、自分の見出しを特に推敲することはありません。

副見出し作成作業を無理に順序化してみると(普段は頭の中でやっていて、特に「こういう流れで」みたいなことは考えていないので...)、頭の中で文を要約 → 一番言いたいことは何かを考える → それを基に何となく骨格的なものを作る → そこに「引き」はあるか(見出しが単なる要約になってしまっていないか、つまり読者に「中身も読んでみよう」と思わせる「何か」があるかみたいなことです)を考える → 最終的な副見出し作成、という流れになるかなと思います。

これを1年と少しやってきた先日、マーケティング(もどき)の仕事が舞い込みました。
たくさんの国語辞書さんと類語辞書さんのお世話になり(ふだん、何と狭い語彙の中で仕事をしていることでしょう!)、遅々として進まない日もあり最後はへろへろでしたが、こういう案件、嫌いではないです(こういう案件ばかりもしんどいので、翻訳会社さんには控え目にアピールしておきました)。

その中で、小見出しの翻訳がありました。いつもの定型的な小見出しではなく、多少の「引き」が求められる小見出しです。その小見出しを考えるのが楽しくて。もちろん、自分で考えるのではなく翻訳ですから、「いやいや、そこまでは言うてへんで」と却下し、無難にまとめた箇所も多かったですが、「見出しを考える」作業をやってきたので、すんなり楽しめた(...若干表現がおかしいですが...)のかなと思っています。

というわけで、1年経って若干惰性になりつつあった「見出しを文章に、文章から見出しを」ですが、初心に戻り(<そもそも「初心」はあったのかという説もありますが)「意識してやる」ことをもう少し取り入れつつ続けていこうと思っています。
2017.09.29 17:33 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(0) |