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2013. 06. 05  
ということで、恒例の読書感想文であります。

佐藤多佳子さんが、大阪世界陸上の4×100 mリレー日本代表(塚原、末續、高平、朝原+控えの小島)5人を取材して書かれたドキュメントです。前半は世界陸上の予選と決勝の描写、後半はメンバー1人1人に焦点を当てて描く構成で、取材期間が2008年春までだったので、北京五輪の快挙は描かれていません。ちょっと物足りない感も残りますが、「北京五輪前に発刊を」という編集側の意向があったのではないかと思われます。文庫版には、五輪後の朝原選手との対談も収められています。

この本の存在を知ったのは2年ほど前です。もう少し早く読みたかったのですが、図書館借出しではなく、手元に置いておきたいということで、「Book Off待ち」をしていたら、タイミングの問題でこんなに遅くなってしまいました。

大阪世界陸上は、地元開催でしたし、ボランティアに応募しようかどうか迷ったこともあり(両親のこともあり結局断念したんですけど)、かなりの種目をTVで観戦していたはずなのですが、リレーについては実は記憶がありません。どうやら北京五輪決勝で記憶の上書き操作がなされてしまったらしく、朝原選手がバトンを放り投げる例のシーンしか思い出すことができないSayoなのでした。本書に「(個人種目で脱水症状になり)体調の思わしくなかった末續選手が、予選を走った後レーン上で座り込んだ」(←Sayoがテキトーに要約)という記述があるのを読んで、やっと、「そう言えばそんな記憶が」と思い出したくらいです。でも、アジア新記録が続けざまに2回も更新されているんですよね。

さて、私は、本書を、興味深く面白く楽しく読んだのですが、たとえば、「ナンバー」の記事のようなドキュメントを期待されていた方は、「もっと競技に踏み込んだドキュメントを期待していたのに」的な物足りなさが残るかもしれないと思いました。

佐藤多佳子さんは、ご存知のように「一瞬の風になれ」という高校陸上部を舞台にしたスポーツ小説を書かれており(未読)、その取材の過程で、陸上競技そのものや練習方法、陸上選手の考え方などにかなり詳しくなられたには違いないのですが、競技をなさっていた訳でもずっと競技を追い続けて来られた訳でもなく、その意味では「部外者」と呼んでもよい立ち位置におられると思います(もちろん様々な知識はハンパないですけど)。ご自身を「ミーハー」と呼んでいらっしゃいますしね。

なので、スポーツライターさんが「そのスポーツにおける個人を(おおむね)淡々と事実の積み重ねで描く」とすると(←ざくっとした括りということで)、佐藤さんは、「スポーツも個人も描く」という描き方をされます(「夏から夏へ」については、ということですが)。個々の選手の考え方に言及する部分(「**選手はこんな風に考える」)、そうした考え方などを、佐藤さんが「(私は)~なのではないかと思う」と分析する描写も多いです。作家さんだけあって、「こうではないか」の人間観察は鋭いなと思います。

ただ、スポーツ雑誌のコラムなどでは、「私はこう思う」的な文章にはあまりお目に掛からないような気がします。そんな「外から観察する人の視点」で描かれるドキュメントを面白いと思うかどうかは、これはもう、好みの問題かと。個人的には、どちらも好きですけど。今回は、素人ライター佐藤さんの視点に同化できたということで、楽しく読ませて頂きました。

前半の予選、決勝の描写と、後半の個人個人を追ったドキュメントは、微妙に文体が異なるような気がします。前半は、一文が短く、体言止めが多用されていて、根拠はないのですが、何となく、「一瞬の風になれ」はこちらのタイプかなと。体言止めについては、昔、「流れを止めるものだから、多用せず、ここぞという時に使う」みたいなことを習いましたが、効果的に使うと、緩急出るなあなどと感心しながら読んだのでした。あ、作家さんだから当たり前ですね。


「『夏から夏へ』から翻訳へ」に続く(たぶんそのうち・・・)
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2013. 06. 01  
いつもは愛想ないタイトルを心掛けているのですが、今日は「訳語を探している人が辿り着くかも」的なタイトルにしてみました。

参考までに、この前、「皆さんはサーチエンジンのどんなキーワードから『屋根裏』に辿り着くのか」という解析結果を見てみましたら、1位はぶっちぎりで「柳田邦男離婚」(ていうか、その記事は離婚がメインではありません、念のため)、続いて、「歯性上顎洞炎関連」(気持ちは分る)「お登勢関連」(続編絶版継続中だしな)「ゴルデーワグリンコフ」(若い方だともうご存知ないのだろうなとしみじみ)、という感じで、邦訳書が発刊されたこともあり。最近は「only time will tell」での検索も多いです。
・・・ここは、いったい何のブログなのだろうと自問自答する今日この頃。

閑話休題。

今日の記事は、「in triplicate」の訳語についての考察(?)です。

医療機器の翻訳を始めて数ヶ月経過した1年半ほど前、初めて非臨床試験の打診を頂きました。
最初は「未経験の分野なので・・・」と渋ったのですが、「参考資料付けますからダイジョブです」と押し切られました。きっとよっぽど人手が足りなかったのだと思います。

その時、細胞毒性試験で登場したのがこの「in triplicate」。

幸いなことに、英語原稿と翻訳原稿がセットになった参考資料に同じ表現があり、「3連で」と訳されていました。むむっ、「3連」とは何ぞや??? ・・・というところから始まった訳なんですが(お恥ずかしい限りです)、色々調べていくと、これはどうやら細胞を培養するウェルプレートの3つのひと続きのウェルを言うらしい、ということが分かりました。試験液1種類について、3つのウェルを使用して試験を行うことを、このように表現しているらしいのでした。

その後も頻繁に参照するようになった「医療機器の生物学的安全性試験法ガイダンス」さん
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/medical_device/T120302I0070.pdf
の細胞毒性試験の項にも「各濃度の試験液について、少なくとも3 つのウェル又はシャーレを使用する」という記載があります。

ということで、同様に「3連で」という訳語を使用し、然る後に、秀丸とExcelのmy対訳辞書に「in triplicate = 3連で」という項目を追加し(項目にもよりますが、秀丸には簡単説明やURLも記載、Excelはただただ対訳と使い分けてMy辞書を作っています。項目は仕事中にどんどん追加します)、心安らかにその先に進みました。

その後も何度か非臨床試験報告書を訳す機会があり、「in triplicate」にも何度が遭遇しましたが、やはり細胞培養に関する記述でしたので、同じ訳語を使用しました。

そして、最近もまた、この「in triplicate」に遭遇したのですが、今回は、細胞培養ではなく「こうやって試料を抽出するよん」というcontextでの記述で、力技(?)で「3連で」とできないこともない感じでしたが、何だかちょっと違うような気もしました。

なので、「医療機器の生物学的安全性試験法ガイダンス」さんをひっくり返してみましたら、該当する試験の説明の中に「同一ロットの3 試験試料を・・・(中略)・・・抽出し」という記述があり、今回の翻訳ではこれ(同一ロットから3つの試料を取ってサンプルを調製する)が該当しそうな感じでした。Googleさん調査では、この仮説(?)を覆すだけの資料は得られませんでしたので、この解釈を採用することにしました。

もちろん、別の文脈では、また別の解釈をしなければならないこともあるでしょう。「in triplicate」を自動的に「3連で」とmy対訳集に収める怖さを改めて感じたのSayoでありました。秀丸君には説明を付け加え、Excel君にも追加訳語の他に「ちゃんとチェックしろよ<自分」マークも追加しておきました。

大学や職場で細胞培養をされてきた方には、あっさりと分ることなのかもしれませんが、そのような経験のないSayoはその度に四苦八苦です。とはいえ、インターネット上で画像や時には動画もチェックできるようになり、ずい分便利にはなりましたが。私が皆さんに多少自慢できる(?)ことと言えば、「何度も環境試験室に入った」(←生産ライン派遣時代)ことくらいなので、医療機器の仕事を頂くようになって2年弱になろうとしていますが、まだまだ毎日が勉強のSayoです。

(注:翻訳以外で本分野を専門的に扱った経験はなく、これらの訳語は調べ得た結果を元に類推するもので、納品の際には、その旨をコメントにて申し送りしています。従って、本ブログで用いた訳語は、あくまで「参考」に留め、ご自身でさらに調査下さるようようお願い致します)
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プロフィール

Sayo

Author:Sayo
医療機器の和訳も9年目。
老眼腰痛、最近は膝痛とも闘いつつ
翻訳人生をまっとうしようと奮闘中。
この頃になってやっと翻訳の奥深さ・
難しさ・楽しさが分かってきたような。
記事は「翻訳一般」多め、ときどき読書感想文、本業(医療機器)やや少な目。
(2019年4月現在)

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