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屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

The Philadelphia Chromosome: A Mutant Gene and the Quest to Cure Cancer at the Genetic Level(Jessica Wapner) Unabridged, 8 CDs

聴了。
Amazon.comさんの画面はこちら↓
http://www.amazon.com/The-Philadelphia-Chromosome-Mutant-Genetic/dp/B00C7DXYHY

内容も用語も少し難しかったですが、医薬翻訳者には興味深い1冊、もとい1CDかと。ただ、あくまで個人的な感想ですが(Amazonさんは高評価ばかりなのだった)、分子生物学や生化学満載(注:Sayo比)の最初の3分の1程度はあまり話が面白く感じられず、例によって、「聞き流し」でなければ途中で挫折していたかもしれません。あんまり根性ないんで。


Philadelphia Chromosome(フィラデルフィア染色体)とは、慢性骨髄性白血病(CML)を引き起こす染色体異常です。

詳細については、近畿大学医学部付属病院輸血細胞センターの「血液学を学ぼう」の第5回「Philadelphia染色体によって 発症する造血器腫瘍」に、おおむね本書の内容に沿った説明がなされていますので、興味のある方は参照なさってください。
おお、今日は、多少はお役に立てそうなことを書いとる<自分。

「血液を学ぼうTOP」
http://www.med.kindai.ac.jp/transfusion/ketuekigaku.html
「Philadelphia染色体によって 発症する造血器腫瘍」
http://www.med.kindai.ac.jp/transfusion/ketsuekigaku-5.pdf

医療従事者が対象ですが、分かりやすくまとめられていると思います。

本書は、

フィラデルフィア染色体の発見 ~ CMLとの関連性の証明 ~ 新しい作用機序による悪性細胞増殖抑制の確認 ~ 創薬 ~ 非臨床試験(動物試験)実施 ~ 第1相臨床試験(はじめてヒトを対象に試験) ~ それ以上試験を進められない停滞期が続く(CMLは、たとえば糖尿病などに比べて患者数が少ないため、利益が見込めず、企業が商品化にあまり乗り気ではなかった)~ 第2相臨床試験 ~ FDA承認(市販可能に) ~ 市販とその後(第2世代、第3世代治療薬の開発を含む)

という、50年余に渡る研究者たちの奮闘を描いたもの。
開発・市販に至った新薬は、イマチニブ(グリベック)です。
耳にされたことのある方も多いかもしれません。

最初にも書いたとおり、生化学や分子生物学は、きちんと学んだことのない苦手分野で、仕事でも殆ど遭遇しないため、「意味よう分からん」状態で少し辛かったですが、動物実験が開始される段になると、参考書や講座等で「こういうもの」として学んだ創薬過程や治験が一気に身近なものとなり、最後まで興味深く読む、もとい聴くことができました。

開発した新薬を何とか広く使用できるようにしたい研究者と、企業としてコストと利益を天秤にかけなければならない経営陣との駆引きはさもありなんという感じで、イマチニブが、当時の標準治療であったインターフェロンに対し圧倒的なベネフィットを証明し、試験や申請が軌道に乗っていく様は、小説を読んでいるようでした(それでも、開発から承認まで20年近い年月を要しているのですが)。オーファンドラッグ指定やFDAとの事前ミーティングの話題など、医薬辺縁翻訳者として参考になる話も多かったです。一方で、随所に挿入された実際の患者のストーリーによって、新薬開発というものを、無機質な仕事の対象ではなく、もっと身近なものとして感じられたような気もします(知人に患者がいたので余計かも)。

というわけで、実際の仕事の分野とは異なるのですが、興味深く聴了したのでした。


蛇足:
タイロシンカイネース、本名Tyrosine kinase(チロシンキナーゼ)
英語を観察すると「さもありなん」な発音ですし、
「だからどうよ」と言われればそれまでなんですけど、
「チロシンキナーゼ」に慣れた身には驚異の(?)発音でした。
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2015.05.16 14:01 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(8) |