屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

翻訳フォーラム・レッスンシリーズ第7弾、講師はT橋(さ)さんです。

この「述語から読む・訳す」については、「翻訳フォーラム・シンポジウム」の中でもお話がありました。
そのときの記事がコチラです。
(時間があれば、まずコチラから読んでいただけたらと)


お話をお聞きし、「衛星図(上の記事の中に例があります)」を作って考えるというやり方を示していただき、「翻訳事典2018年度版」や「翻訳のレッスン」を再読して、やっと考え方の全貌が掴めてきたという感じですが、それでも、きちんと把握できているのか、書籍や雑誌の中で示されたトレーニングができているのか、自分のやり方でいいのか等々、不安が多々ありました。

そうしたら、東京でワークショップがあるという。これはもう、行かねばなるまい。
決して、遊びに行ったわけじゃありませんよ、決して。
いちおー、「翻訳事典」の該当記事と「翻訳レッスン」のT橋さん担当部分を再読して参加しました。


てことで、以下、ワークショップのまとめです。長いので、お時間できましたときに。
(* 応用もきくかと思いますが、ワークショップの話は、英語原文→日本語訳文の方向です。)

前半は、「述語から読む・訳す」という考え方の概要の説明でした。
(この部分は、JTFジャーナルの次号に、復習的な形で、T橋さんが寄稿なさるそうです。)
(JTFジャーナルは、会員でなくても、登録すればPDF版を読むことができます。私もそのようにしています。)

以下、その概要のそのまた概要を、箇条書きでまとめてみました。
(あくまで、ワタクシが理解し得たかぎりですので、間違っている部分があるかもしれません)

・翻訳は、本来不自然な作業なので、日本語力を向上させる努力をしなければ、翻訳すればするほど日本語単体の文章力は低下する(ホラーやな<と前も言ったような気がする)。

・日本語を維持向上させるための方策として、日本語文法と英語文法の共通部分を体系的に身につけることをしておけば、原文が理解しやすく(最終的に)効率的でもある。

・その「日本語側と英語側を対応させる」方法として、述語に目をつけて文の構造を考える、というやり方がある。
 * ここで、衛星図について説明。
 ** 述語を中心に衛星図を描くことで、主-述のねじれ等を防ぐことができるということなのですが、実際にやってみると(ワタクシは和訳者なので、まず英語でこれをやるんですが)、確かに「主語が迷子にならない」感があります。

・文の構造を考えるときは、構文が、単文、二股合せ文(主語は1つで述語が複数ある場合)、重文(合せ文)、複文(入れ子文)のいずれであるかを意識する。

・また、意味的内容から、できごと文(なにがどうした=動詞述語文)としなさだめ文(なにがどんなだ=形容詞述語文、なにがなんだ=名詞述語文)に分類する。SV、SVO、SVOO、SVOC、SVCの5文型は、できごと文、しなさだめ文のいずれかに(概ね)分類することができる。
 * できごと文としなさだめ文については、「翻訳事典」の該当記事にもう少し詳しく書かれています。
 ** ここで、20例ほどの課題文を、できごと文、しなさだめ文に分類するという実習があり、前半終了です。


後半は、いよいよワークショップの時間です。
これをグループワークで行うため、予めシャッフルされた7班に分かれます(顔見知りの方がいてホッとするやら、まったく別の意味でキンチョーする方とご一緒するやら...)

50個弱のMostの訳例が記載されたカード(訳例は、新和英大辞典の逆引きで得られた例文から抽出されたもの...だったと思います<カード切離し作業をしながら聞いていたので間違っているかも)を使用し、これを、グループで相談しながら、日本語訳でmostにあたる部分が置かれている位置によって、6パターン(フレーム外=外出し、主語の前、主語の後ろ、述語の前、述語=文末、その他)に分類します。

訳例カードはこんな感じ。
訳例横








実際は、配布資料に各パターンの衛星図も用意されていて、迷ったときの助けになります。
分類の過程で、「おお、その訳は出てこない(新和英逆引き恐るべし)」という訳例に遭遇したり、グループ内で意見が割れたり、文脈がない中では分けにくいよね、という話になったり。「自分でやってみる」+「グループワーク」のよさですね。
 * 蛇足ですが、通常「語彙」と呼ばれるものは、各パターンの中での変化なので、パターン変化が自在にできるようになれば、表現の幅は格段に広がります(ハズです)。

「仕分け」が終わったら、次は自分たちで6パターンの訳語を考えます。時間の制約がある中では、どうしても無難な訳になりがちでしたが、それでも、自分では思いつかないようなアイディアも出てきたり。これもグループワークのよさですね。最後に各班の発表があり、そこでまた、自由度の枠が広がったような感じです。
今回は、参加者の中に十代の学習者の方が1人混じっておられて、若者向けの表現に場が湧くということもありました。若者向けの表現を取り入れるかどうかは、これはもうケースバイケースでしょうが、年代の異なる同業者や学習者の方と話をする機会は大事だなあと改めて思いました。

その後、駆け足でoftenの訳例に触れたあと、簡単なまとめがありました。またまた箇条書きで。

・英語文法と日本語文法の整理には時間が掛かり、一時的に翻訳スピードが下がる可能性もあるが、それは初期投資。長い目で見れば力がつく。「急がば回れ」。
・述語に目をつけられる(述語を中心に考えられる)ようになると、日本語も構文として考えられるようになる。
・最終的に翻訳作業の正確さと自由度が増すので、「文章を見たら課題だと思って頑張りましょう」。


「予習」をしていったので余計にそう思えたのかもしれませんが、特に「翻訳のレッスン」には、この日お聞きした内容がうまくまとめられていると思います。
未読で出席された方がおられましたら、今読んでみると、「砂に水が染み込むように」という感じで頭に入ってくるのではないかと思いました。
ワタクシ、決してフォーラムの回しものではありません、念のため。


もうすでにかなりの長さになっていて、本当に申し訳ないのですが、最後に若干の感想など。

三日坊主の多いワタクシですが、できごと文としなさだめ文の仕分けは、時々思い出したようにやっています(正しくは「思い出したときに三日坊主する」)。思い返してみれば、パターン変化も、それとは意識せずに、日々の仕事の中でやっていたりします。ワークショップに参加したことで、やり方や目的がもう少し明確になったような気がします。聴くばかりではなく、参加するセミナーも大事だなと再認識しました。

T橋さんは「考える」という言葉をよく使われたのですが、この言葉がとても「深い」言葉であるように思えました。
さまざまなことを考えていると、当然翻訳速度は落ちるわけで、ワークショップでは、それが、先に進むための「初期投資」と表現されていました。
「だから、つまり今は頑張りどきで、もう少しすべてを整理することができれば、もう少し楽に早く、日本語として齟齬のない(できれば「そこそこ読ませる」)訳文が書けるようになるのかなあ」といったことをとつおいつ考えていて、ふと、翻訳が「早い」には2種類の「早い」があるのではないか、ということに思い至りました。「考え」分類し多くの情報を整理して自分の中に蓄積できているがゆえに早い人と、外部の用語/例文集等にうまく頼って早い人の2種類です(この場合の「用語/例文集」とは、決していわゆるTMのみを指しているわけではなく、狭い分野に限定した用語や言回し、定型文などをまとめたものもこれに該当するかと思います)。基礎力のある方が、きちんとした信頼の置ける用語/例文集を使って仕事をしていく分には、分野限定の成果物という点ではまず問題はないのかもしれません。でも、わりと根本的なことから考え悩むことなく外部に頼る、ということは、「そこから隔絶されてしまうと自分の中に戦う武器がない」という危険性も孕んでいるのではないかと、そんな風に思ったのです。「考え、修正し、正しい(この場合はきちんとした翻訳ができるということですが)方向に進む」ことができるというそのことこそが、「戦う武器」なのかもしれません...自分の中でも、まだ言葉として上手くまとまっていない状態なのですが、まずはワークショップの報告を書いておきたく、分かりにくい感想も含めさせていただきました。ご容赦ください。


最後になりましたが、資料の準備も含め、実り多い勉強会を企画してくださった翻訳フォーラムの皆さま、それぞれお忙しい中、本当にありがとうございました。
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2017.10.02 20:36 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(4) |