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屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。


先日「泣き童子」を読んで、宮部さんの描く怪獣に心をわしづかみにされてしまい(「まぐる笛」)、これはもう、この勢いで「荒神」を読まねばなるまいと思ったのでした。
某紙連載中はちらちら横目で眺めてましたが、コワくて読めなかったのでした。ええ、なかなか凄惨な場面も続きましたので。脳内アニメ変換は得意です。

宮部さんは、書籍紹介&インタビューの中で、「特撮時代劇を書きました!」「60年代の映画『大魔神』のような、昔の特撮時代劇の持つレトロな雰囲気を楽しんでもらえたら」と書いておられますが、いやいやいや、なかなか凄惨な怪獣大暴れシーンでした。
https://publications.asahi.com/original/shoseki/koujin/(物語世界の紹介)
https://dot.asahi.com/dot/2014081400045.html?page=1(インタビュー)


舞台は、「物語世界の紹介」にあるとおり、主藩と支藩の関係にある東北の架空の2藩。その藩境近くの支藩(香山藩)側の小村(仁谷村)から一夜のうちに村民が消えた。
当初「逃散」と呼ばれる集団逃亡かと思われたものの、徐々に怪獣に襲われたらしいことが分かってくる。怪獣は人の臭いに引かれ、次に主藩(永津野藩)の砦を、続いて同藩の小村(名賀村)を襲う。
人間しか襲わない、がまとも蛙ともトカゲとも蛇とも見えるその怪獣は、呪術によって生み出された土塊で、百年余の間山中に眠っていたのがこの春目覚めたものであることが分かる。
その怪獣「つちみかどさま」を鎮めることができるのは、術者の血を引く者だけだ。自ら喰われることでその心となり、怨念の塊ともいえる怪獣を鎮めることができるのである。


今回は、ネタばれは止めておきます(いや、すでにかなりバラしてるんですが)。
怪獣が砦を襲うあたりまでは、説明も多く、若干もどかしい感がありますが、そこから先は、凄惨シーンも含めて一気にラストまで突っ走った感じでした。宮部さんは、アクションシーンが難しかったと仰っていましたが、いやいやいや、ワタクシは、「クロスファイア」を読んだときから、いつかこんな日がやってくることを予感していました。

「で、主人公は誰なん?(ワタクシの中ではやはり朱音様)」状態で話が進行していくのですが、宮部さんは、群像劇が書きたかったそうで、そう言われてみれば確かに群像劇でした。
そういう視点で読んでみると、「今誰の視点でものを見ているか」によって、その人物が使いそうな言葉遣いで情景が語られていて、微妙な書き分けが見事だと思いました(でも、正直にいえば、それが、読み進める際に若干の引っかかりになったのも事実なのですが)。

さて。
宮部さんは、「特撮時代劇エンタテイメント」的なことを仰っていますが、本当にそれだけ? と思うのはうがち過ぎでしょうか。
「物語世界の紹介」を見て頂ければ分かるとおり、舞台は上州(福島県)の山中です。新聞連載は2013年から2014年でした。

作中の
-戦が起これば、敵も味方も等しく傷つく。武器は、それ自体の意志で敵と味方を見分けることはできない。
-人の都合で作り、うち捨てたもの。忘れ去ってきたものが起き上がり、今、その怒りを滾らせている。あの怪物は、人の咎だ。
-「こうしたことをみんな、誰も悪いと思ってしているのではない。よかれと思ってやっているのだ」
 呪詛にしろ、お山の怪物にしろ、(中略)我が藩を富ませるため。我が藩の領民のため。大事な家族のため。この地に生きる民を守るため。
といった記述を読むと、宮部さんは、連載開始2年前の厄災、特に人の手になる厄災の方を多少なりとも念頭に置いておられたような気がしてなりません。あくまで想像ですが。

怪獣のために、多くの善良な民が命を落としますが、それでも残った者たちは生きていかなければならない。
物語は、残された少女が、ほんの少し前を向くことができたところで終わります。

宮部さんは、上記のインタビューの中で、「近年は、ミステリー味を多少薄くしても――作中の全部の謎が解決するわけではなくても、ともかくこの件は片付いた、そして物語の中の人物はこれからも生きていくんだ、という風に小説を作りたいと思うようになっています」と書いています。そういう風に舵を切ったのは、2001年の「模倣犯」以降だとか。確かに、この頃では、宮部さんの書く(特に)現代ものに、「そこでそう終わる?」という若干もやっとした気持ちを感じることが多かったのですが、そのような作風の変化は意図したものだったのですね。

最後に。
この「特撮時代劇エンタテイメント」、来年早々、NHKでドラマ化されるようです。
ドラマでは朱音様(内田有紀)が主人公になるらしい。双子の兄、曽谷弾正は平岳大さん。「真田丸」でも少ないシーンで強い印象を残した方ですから、復讐心に凝り固まった悪役、楽しみです。絵師圓秀に柳沢慎吾さんは、なんとなく小説中の圓秀さまの3倍くらい煩そうな予感が。浪人榊田宗栄は平岡祐太さんですが、うーむ、ビミョー。平岡祐太さんがどうこうということではなく、内田有紀さんの相手役ということで考えた場合、ここは西島英俊さんあたりを持ってきてほしかったところです。あくまで好みの話ですが。
特撮はCGなのでしょうけど、個人的には、小説の怖さを上回るものは描けないんじゃないかと危惧しています。
恐ろしく辛く哀しく心に残る物語でした。
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2017.12.17 21:19 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(2) |