屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。


先日、第2回目の「1年勉強会」が開催されました。

前回課題は各段落の要約でしたが、今回課題は指定の数パラグラフの翻訳です。
事前に、各人が提出した翻訳をまとめたファイルがFB上のグループページにUPされるので、各自それを印刷し予習をして勉強会に臨むという、こんなしんどい勉強会に誰がした!!! (...まあ、「こうしましょう」という提案に、ワタクシも賛成しましたよ、しましたけどね...)

というわけで、当日は、持ち寄った訳文をもとに、訳しにくかった箇所、理解があやふやな箇所等の検討です。ときには、「アナタのその訳語どうでしょう」という指摘も頂いたり。なので、「やさしい言葉で容赦ない」と書いてみましたが、いずれも頷ける指摘でしたし、対象はあくまでも訳文で、なおかつ「その訳文をこうしたらもっとよくなる」という気持ちが感じられるものでした。
ですから、最後まで楽しく勉強できたかなと思います。帰宅したら目の下にクマがおりましたが。

今回の反省点は、「一度訳語を選んだら、同系統の訳語の中でしか推敲ができなかった=大胆な発想の転換ができなかった」「スルーすべきでない箇所をスルーし、どうでもよい(さほど重要ではない)箇所で悩んだ」「全体的に読込みが足りなかった」といったところです。同じ過ちを繰り返す自分の未来が見えるようですが、少しでもこうした点を減らして、1年後には多少なりとも成長していたいものです。

皆さんの訳語や訳文にはハッとさせられるものがたくさんありましたが、面白いもので、そうした訳語をそのまま自分の訳文で使おうとすると、浮いてしまいます。各人の全体のトーンが微妙に違うので、違和感を覚えてしまうのでしょうか。とはいえ、そのまま忘れてしまうのももったいなく、「どこかで何かの機会に使えるかも」といくつかの語を控えさせて頂きました。「自分と異なる発想を知ることができる」というのも勉強会のよさかなと思います。

今回、課題に取り組んでみて、改めて「普段、本当にせまい語彙の範囲で翻訳しているなあ」と思いました。仕事の文章は「こういう場合はこう訳す」というものが多く、もちろん、その中で「分りやすさ」「伝わりやすさ」を心がけるわけですが、「言葉や表現を思いつく」ための苦労は、こうした一般的な文章ほどではありません。
この「語彙の範囲がせまい」というのは、ここ2年くらい痛切に感じていて、それが分野を限定しない翻訳勉強会をやりたいと思った理由のひとつでもあります。


さて。
今回の課題は、SARAH EVERTSの「The Art of Saving Relics」。「The Best American Science and Nature Writing 2017」に収載されたものですが、初出はScientific Americanです。
「日経サイエンス」の2016年7月号に翻訳版があり、近くの図書館で入手できたので、勉強会でコピーを配布しました。それなりの期間で全体を訳されたに違いないことを考えると「プロの仕事は凄いな」と舌を巻きます。
以下に、参考まで、原文とSayo訳(「愛の鞭」後のリライト入ってます)の順に、指定訳出箇所の一部を記載しました。リライト後でも、Sayo訳には間違いや「・・・」な点がいくつもあると思うのですが、そこは目を瞑って、「こんなものをやっている」という雰囲気だけ掴んで頂ければ。1回だけ恥さらししときます。

(タイトルと冒頭2段落)
The Art of Saving Relics
These suits were built to last. They were pristine white and composed of 20-plus layers of cutting-edge materials handcrafted into a 180-pound frame of armor. They protected the wearers from temperatures that fluctuated between ?300 and 300 degrees Fahrenheit and from low atmospheric pressure that could boil away someone’s blood. On a July day in 1969, the world watched intently as astronaut Neil Armstrong, wearing one of these garments, stepped off a ladder and onto a dusty, alien terrain, forever changing the landscape both of the moon and of human history. Few symbols of vision and achievement are more powerful than the Apollo mission spacesuits. 

Back on Earth, the iconic garments found new lives as museum pieces, drawing millions to see them at the National Air and Space Museum in Washington, D.C. And staff members there have found, to their surprise, that the suits need their own life support. They are falling apart.
(「The Art of Saving Relics」SARAH EVERTS、以下同じ)

保存・新時代
 それは長持ちするように作られた。20以上の最新素材の層を手作りで仕立て上げた180ポンドの純白の防護服だ。華氏マイナス300度からプラス300度まで変動する温度や血液を沸騰し蒸発させてしかねない真空環境から着用者を保護した。1969年7月のある日、ニール・アームストロング宇宙飛行士が、この宇宙服に身を包み、梯子から砂だらけの異境の地へと降り立ち、月と人類の歴史の地平を一新するのを、全世界が固唾を呑んで見守った。アポロ計画の宇宙服ほど理念と成就を見事に体現しているものはそうない。

 地球に帰還後、このシンボル的着衣は博物館の展示物として生まれ変わり、ワシントンD.C.の国立航空宇宙博物館に何百万もの観覧者を呼び寄せた。だが博物館スタッフが驚いたことに、宇宙服自身も生命維持装置を必要としていたのだ。すでに崩壊が始まっている。
(Sayo訳、以下同じ)

* 「日経サイエンス版」の単位表示はkg、℃(摂氏)です。日本向けの雑誌だと、そこはやはり、キロ、摂氏で記載すべきところかなと思います。

(最終段落)
The great hope of conservation scientists is that restoring the past will also help them prepare for the future, when today’s plastic materials?such as 3D-printed objects?start entering museum collections. One such item might be the first 3D-printed acoustic guitar or a retired International Space Station suit. Eventually all will be past their prime, and conservators want to have the tools in hand to give these cultural icons a facelift.

 保存修復科学者は、過去の作品をよみがえらせることが未来の備えにもなると大いに期待する。時あたかも、3Dプリント作品など現代のプラスチック素材が博物館の収蔵品に加えられようとしている。それは、初めて3Dプリントで作られたアコースティックギターかもしれないし、国際宇宙ステーションでの務めを終えた宇宙服かもしれない。だがいずれも劣化と無縁ではない。こうした文化遺産に化粧直しを施す手段を確保しておきたいというのが、保存修復士の願いだ。


次回の課題は、新しい課題のパラグラフ単位の要約です。
要約しようとすると、パラグラフ内のキモの部分を押さえたりパラグラフ同士の繋がりを考えたりしなければならず、それなりにきちんと読まなければならない、ということでこの要約作業を取り入れてみたわけですが、今回は全40パラグラフと分かって、すでに死んでいます。いや、こんなハズじゃ...ハズじゃ...(泣)
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2018.04.02 14:54 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(4) |