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屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。


『文章は接続詞で決まる』(石黒圭、光文社新書、2008年)
『「接続詞」の技術』(石黒圭、実務教育出版、2016年)

 ブログに書こうと机の脇に積んでひと月。「明日こそは明日こそは」詐欺を続けている(?)うちに、「翻訳フォーラム」さんがYou Tubeで紹介してくださいました!
URLはコチラ→https://www.youtube.com/watch?v=soeaJjdXIio

 もう、こちらの動画を見て頂くだけで十分なのですが、動画ではどちらかというと『「接続詞」の技術』が中心でしたので、オマケというか「気が向いたら読んでね」的に、二冊の読書感想文を書いておきます。

 あえてこの二冊の違いを挙げるなら、『文章は…』が接続詞を考えるための本であるのに対し、『「接続詞」の技術』は、日々のカキモノに接続詞を適切に使うための本であるということができるかなと思います。手を伸ばせば届くところに置いておくなら『「接続詞」の技術』の方。巻末の一覧表は切り離せるようになっていますので、一読したあとは、この一覧表を見えるところに貼るなり置くなりするのもよいかと(字が小さすぎて老眼にはツラい&スペースの問題がありまして、私はやっていませんが)。

 『「接続詞」の技術』は、動画でも紹介されていたとおり、四種十類の各分類に属する接続詞について、例を挙げながら細かな違いを説明しています。その明解な説明に、ナルホドと頷くばかりです。
 一読して心に残った部分は何箇所もありましたが、そのひとつが「『そして』は帰着点を表す働きがあり(中略)『そして』のあとに情報の比重が置かれるような語感があります」という部分です。よく、andの訳語として安易に使ってしまいがちな「そして」ですが、気をつけて用いないと、うるさいばかりでなく、本来際立たせるべき情報も霞ませてしまうと思いました。以前、柴田元幸さんが「日本語の『そして』はandより強い」と、どこかに書いていらしたのを拝読した記憶があるのですが、それはここで石黒さんが仰ることとも関係しているのではないかとも。そんな風に、別の著者がまったく別の文脈で言っておられたことが、自分の中で関連づけられるのも、(翻訳にかぎりませんが)「学び」の醍醐味のひとつではないかと思います。

 そういう実践的な書籍なので、どちらか一冊をということであれば、『「接続詞」の技術』の方かなと思いますが、できれば『文章は接続詞で決まる』の方も併せて読んでいただきたいです。
 こちらでも、やはり接続詞が四種十類に分類され、その説明にかなりのページが割かれており、実際『「接続詞」の技術』とかぶる部分も多いです。けれど、それ以外の部分に、接続詞を使うに当たってあらためて考えてみてもいいんじゃないかという箇所がいくつもあると思うんですよね。

 目次はこんな感じ。

 序章 接続詞がよいと文章が映える
 第一章 接続詞とは何か
 第二章 接続詞の役割
 第三章 論理の接続詞
 (ここから第六章までの四章を使って四種十類の接続詞を説明)
 第四章 整理の接続詞
 第五章 理解の接続詞
 第六章 展開の接続詞
 第七章 文末の接続詞
 第八章 話し言葉の接続詞
 第九章 接続詞のさじ加減
 第十章 接続詞の戦略的使用
 第十一章 接続詞と表現効果

 第二章「接続詞の役割」で、石黒さんは、書き手・読み手両方の立場から「接続詞」というものを考えておられます。この書く側からも読む側からも考えてみるという姿勢は、石黒さんの新著『段落論』にも引き継がれているように感じました(『段落論』はまだ途中なので、気のせいかもしれません)。
 第七章の「文末の接続詞」は、「日本語の場合、接続詞が文末に埋め込まれている場合があります」と始まります。最初はその考え方に「え」と思うかもしれませんが、読み進めていくと、納得できることばかりで、私は、この章を読んでから、訳文で「のだ」を使いそうになるたびに、「ここは本当に『のだ』がいいのか?」と考えるようになりました(←「のだ」が結構好きだったヒト)。だれでも文章をかくとき無意識のうちに、このいわゆる「文末接続詞」を使っているに違いないのですが、それらの働きについてあらためて考え直すことができる章だと思います。
 また、第九章の「接続詞のさじ加減」には、「接続詞を使わない方がよい場合」が、「接続詞の弊害1~5」として具体的に述べられています。接続詞は文章をnavigateする大事なものではあるのですが、「使わない方がいい場合」というのもあるんですよね(と読んで納得)。『「接続詞」の技術』にも、「不要な接続詞を間引く」という項目がありますが、この第九章ほど詳しく述べられているわけではありません。

 という感じなので、両方併せて読んだ方が、接続詞に対する理解(…いや、自分の場合まだ「理解」できたとは言えないので、「興味」かな)がより深まるんじゃないかと思います。

 動画の中で帽子屋さんは、『「接続詞」の技術』にはたくさん付箋をつけたと仰っていましたが、私は、アンダーラインはしまくりましたが、付箋はつけませんでした。(これもやはり帽子屋さんが仰っていたことなのですが)目次と索引が充実しているので、付箋がなくてもすぐに探している情報に辿り着けるんです(『文章は…』にはぺたぺた貼りましたが)。

 というわけで、「翻訳フォーラム」さんの動画を見てから、表題の二冊を読めば、接続詞がこれまでより可愛い(?)ものに見えてくるんじゃないかと思います。興味の湧いた方は、是非試してみてください。
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2020.05.16 21:24 | 辞書・参考書 | トラックバック(-) | コメント(0) |

遺言を認めた。

決してうつになっているわけじゃない。まあ、精神的な疲れは溜まっているし、毎日うつうつはしてるけど(笑)。


実は、遺言を書くのがこれが三通目。

一通目は、もう10年以上前、両親の介護、特に母親への対応でテンパっていたときに書いた。
とにかく母親から逃げたくてしかたなく、でも、「逃げたあとのことはきちんと頼んでおかなくちゃ」と考えていたところからして、もう若干(いやかなり)普通じゃない。
(これは当時も今も変わらずなのだけれど、「血縁」という意味で私は天涯孤独だ。実家は私で途絶える。だから、実家の始末はきちんとしなければ、という強迫観念のようなものがあるのは事実だ)

二通目は、両親を(無事に)送ったあとに書いた。
お願い事項の内容を書き換えないといけなかった。


今回、遺言のことが頭に浮かんだのは、コロナウイルス感染症が急激に重篤化し死に至る例が、何例も報道されたから。
そういえば、両親を送って10年近くになるけれど、実家はそのままだし、永代供養の話も全然できてないし(かろうじて実家の仏壇だけは始末した)。

というわけで、登記謄本の場所を確認し、生命保険証券の場所と内容を確認し、預貯金通帳、実印、年金手帳、現在の住いの賃貸契約書の類も確認し書き留めた(旦那は自分のものも含め、これらの在処を知らない)。
(この部分は、あまり変更がない)

連絡してほしい人をリストアップし、SNSへの投稿とアカウント削除の手順も書き留めた(旦那はSNSはまったくやらない<だから私が安心して呟けるわけなんだけど)。
(連絡してほしい人の内容が少し変わる。SNSへの言及は新規)

それから本文を書いた。いつも本文は最後だ。
25年も一緒にいると、むかつくこともあるけど(<でもたぶんそれは向こうも同じ)、「私がいなくなったあとに一人でこれを読むんだ」と考えたら、やっぱり出てくるのは感謝の言葉になる。特に、実親の介護は、旦那の有形無形の強力なしには乗り切れなかった。書きながら、翻訳や自分のしたいことを優先させて(まあ、それは向こうも一緒なんだけど)、一緒に過ごしたり話をしたりする時間が少なかったなと思えてくる。せめて、これからの時間をもう少し大切にしようと、殊勝なことを考えたりもする。もっとも、それが、あとまだ20年くらい続くかもしれないんだけど。

…という一種の正常性バイアス的なものが、これを書いた今も、自分の心のどこかにあるとは思う。「自分は、自分だけは大丈夫」という根拠のない自信。
ともあれ、これからの毎日を、自分のためだけではなく、二人のために大事にすごし、これからの世の中を、自分なりに生き抜きたいと思う。

書いたことで、ちょっとほっとし、少し自分を見つめ直し、周りの人々のことにも思いを馳せた。
「書きたい」「書かなければ」と思ったことを文字にするのは、私には一番の自浄作用のような気がする。
明日からまた、少し落ち着いて、日常のさまざまなことをこなしていこうと思う。

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2020.05.12 00:47 | 分類不能 | トラックバック(-) | コメント(1) |

と考えておられる方もいらっしゃるかもしれません。
楽かどうか、稼げるかどうかは別として、在宅でできる仕事には違いありませんから。

Twitterでは、ある翻訳講座に関するツイートがよく流れてきます。
そのやり方を踏襲すれば、英語力がなくても簡単に翻訳者になれるのだとか。
(講座受講費用はかなりの金額でしたが)

「翻訳」がどういうものかよく分からなければ、そういうものかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
私も、他の業種や職種が実際どのようなもので、相応の収入を得ようとした場合、どれくらい頑張らなければならないかということは、正直よく分かりませんので、それも当然かと思います。
(私は翻訳で継続して収入を得るのはかなり大変なことだと思っています。そして、どんな仕事も、同じように勉強や工夫や努力が必要なのだろうなと思います。楽して稼げる仕事などありません)

「屋根裏」は、「自分の場合はこうです(こうでした/こう思います)」というスタンスで記事を書いているのですが、今回のみ、「翻訳をしてみたい」「翻訳に興味がある」という方を(読者として)念頭に置いて、できるだけ安価に「翻訳とはどういうものか」に関する情報を得られるよう考えてみました(独断と偏見ですが)。
(私は英和翻訳者ですので、そちら方面(?)中心の情報になっておりますこと、ご容赦ください)

書籍:
1 『できる翻訳者になるために プロフェッショナル4人が本気で教える 翻訳のレッスン』(講談社、2016年)
2 『最新版 産業翻訳パーフェクトガイド』(イカロスムック、2019年)
https://www.ikaros.jp/sales/list.php?srhm=0&tidx=36&Page=1&ID=4555

まず手に取る書籍としてこの2冊を選びました(他にも何冊も「これは」という書籍はありますが、「できるだけ安価に」ということで2冊に絞りました)。
1を読むと、「翻訳とはどういうものか」という輪郭が掴めるのではないかと思います。2は、翻訳エージェント寄りの内容になっている点が若干気にはなりますが、業界の動向や各種産業翻訳に関するおおまかな知識が得られると思います。全国のエージェント一覧表もあります。

ウエブサイト(ブログ):
書籍1、2で輪郭が掴めた方には、以下のブログ(記事)をお勧めします。

Buckeye the Translator
Budkeyeこと井口耕二さんのブログ。
「翻訳」そのもの、翻訳の品質、ビジネス的側面等、ためになる記事が満載です。いくつかご紹介しようと読み進めましたら、逆にどれを外していいか分からなくなってしまいましたので、わりと最近のものから3本選びました。どの記事にも、ご本人が関連する過去記事へのリンクを張ってくださっています。

誤解されやすい翻訳業界の常識――産業翻訳は情報を伝える、文芸翻訳は心を伝える

ひょうたん図

JTF翻訳祭2019のレポートを読んで思ったこと-その3「機械翻訳に関する提言について」


岩坂彰の部屋 
ノンフィクション書籍とニュースの翻訳をされる岩坂彰さんが、以前ウエブマガジンに連載された記事をまとめたもの。前半(~28回)は翻訳者以外の翻訳関係者に向けて、後半(29回~)は翻訳学習者を念頭において書かれたとのこと。かなり古い記事ではありますが、基本的な考え方は変わらないかも知れないと思いましたので、第1回、第2回の記事へのリンクを張りました。

なぜ翻訳をしなければならないのか

翻訳者が伝えるべきもの


翻訳横町の路地裏
齊藤貴昭/Terry Saitoさんのブログ。翻訳者として「翻訳会社に搾取されない、自分を卑下しない、翻訳者としての自分を大切に」という視点からさまざまな記事を書いてくださっています。


翻訳に必要な7つのカード ー翻訳を独学するー
YujiさんのKoujou Blogの記事。「翻訳を独学するには何が必要か」が、それらの関係性も含めてまとめられた素晴らしい記事だと思います。勉強を始めようという方は、まずここから。


書籍のおまけ:
『翻訳とは何か:職業としての翻訳』(山岡洋一、日外アソシエーツ、2001年)
上記のブログ記事(翻訳に必要な7つのカード)でも触れられている山岡洋一さんの著書。翻訳をされる方なら、どこかで一度読んでおかれるのがいいと思いますが、翻訳(の勉強)を始める前より、少し勉強してからの方が身につくことも多いのではないかと思いましたので、最初のX冊からは外しました。


ウエブ上の辞書:
翻訳者はCD-ROM形式の辞書を揃え、それらを串刺し検索するというのが、今も一般的なやり方かと思います。けれど、辞書を揃えていくにはそれなりにお金も掛かります。そこで活用したいのがウエブ上の辞書。無料辞書もたくさんありますが、内容が玉石混淆ですので、それだけに頼るのは危険です。そこで私のお勧めは、Japan Knowledge Personal。少し高くなりますが+Rのオプションがお勧めです。「利用できるコンテンツの一覧」を見ると分かるとおり、基本辞書に加え、「ビジネス技術実用英語大辞典V6」(通称「海野さん」の最新版)の他、「理化学英和辞典」「医学英和辞典」「岩波 生物学辞典」などの専門辞書、ヨーロッパ言語辞書も検索できるからです。
https://japanknowledge.com/personal/price.html

蛇足ですが、医療翻訳者としては、この他に、

日本医学会 医学用語辞典
http://jams.med.or.jp/dic/mdic.html
(要登録)
ライフサイエンス辞書
https://lsd-project.jp/cgi-bin/lsdproj/ejlookup04.pl
(日英翻訳時にコーパスが便利)

も重宝しています。

また、辞書ではありませんが、JTF(日本翻訳連盟)が昨年発行された『JTF日本語標準スタイルガイド 』(2019年8月20日)も、訳文表記の指針になるかと思います。作成にあたって参考にされた資料の一覧も付記されています。


上で紹介した書籍やブログをじっくりと読めば、翻訳はどんな仕事なのか、どんな能力・資質が必要なのか、それをどんな風に身につければよいのかが、分かってくるかと思います。
決して、手元にPCがあり、インターネットに接続でき、英語がそこそこ読めればできる仕事ではないことも、お分かりいただけるのではないかと。

この先、翻訳でそれなりの収入を得ることは、今までにも増して難しくなるのではないかと思います。私自身も、「いつ仕事がなくなるかもしれない」という不安と戦いながら毎日を過ごしています(体力も落ちてきたし…)。それでも翻訳を続けて行くには、業界や顧客の動向を読みつつ、もっと力をつけるしかないと思っています。

そんな、明るいかどうか何とも言えない業界ですが、今は、おそらくどんな業界でも多かれ少なかれ事情は同じですよね。核となり幹となる考えをしっかり持ち、勉強して力をつけていくことを厭わなければ、翻訳者として長くやっていくことは十分可能だと思います。一人でも多く、そうした翻訳者の方が育っていって下さればと思います。
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2020.05.07 04:53 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(2) |