屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

最近Richard Prestonの”Panic in Level 4”を聴いてます(ながら聴き用に旦那友人一時帰国時に持ち帰って頂いたAudio Bookのひとつです)。

Prestonは、「ホットゾーン」の著者で、医療モノを多く発表するノンフィクション・ライターさんです。という訳で、私的には、医薬関連の単語の発音もたくさん聞くことができて、一石二鳥。文章も分かり易いと思う。何より、描写に臨場感があるので、何巡してもなかなか飽きません。この”Panic in Level 4”は、過去に雑誌(おおむねThe New Yorker)に掲載された数本の記事に加筆修正してまとめたもののようです。というわけで、過去に”The best American scientific writing”でお目に掛かっていたものもあり、何だか旧知の友に出会ったって感じ(←大袈裟です)。

タイトルにもなっている”Panic in Level 4”、メインストーリーは、USAMRIDと略称される研究施設の非常に危険な病原体を扱う「レベル4」Lab(入室にいわゆる「宇宙服」が必要な、最も厳重な管理を必要とするLab)への著者の入室体験(&Lab内で宇宙服のジッパーが開いてしまうというかなりホラーな体験<炭そ菌騒ぎの前には、ごく稀にではありますが、そんな風に部外者がレベル4に立ち入ることも可能だったようです)と、エボラウィルスの女性研究者の同様の危険体験なのですが、その中に、「自分はいつもこんな風にインタビューを行ないます」的な記述があって、ちょっと興味深かったので、今日はそのお話。今日も翻訳に関係なくてすいません。

Prestonは、自分の書きものをnarrative non-fictionと呼んでいるのですが、その基本となるのはtaking noteで、テープレコーダー等の機器を用いてインタビューを録音することはしないのだそうです。「大事な時に必ずきちんと動作しないから」というのと、「話者が『録音されている』ことを意識して本当の気持ちを語らないから」というのがその理由だそうです。
というわけで、インタビューする人物の目の色や手の様子まで、とにかく何でも書き留める。特に重要な事実を捕えるテクニックを、彼はdelayed noteと呼んでいます。話者がそのような事実について話し始めると、メモを取るのを止め、ひたすら相手の言うことを記憶する(ただし、相手にそれがばれないよう‐ばれると自然に話さなくなるので‐try to get a natural expression on may face as if I’m not interestedしながら)。で、もうこれ以上記憶できないというところまで来たら、答えが分かり切っているようなdull questionをする。そうして、その答えをメモする振りをしながら、記憶した内容を書き留める。ゆえに、delayed noteと呼ぶのだと。
これは、Prestonが発案した方法ではなく、大学在学時に”Literature Fact”という講義で教えて貰った方法なのだそうです。
それらの膨大なnoteを基に書き上げた文章は、後で必ず話者に読んで聞かせて、事実の正誤をチェックして貰う。時には修正されることもあるけれど、それが、specific dramatic and terrifying momentの記述の場合、話者の説明は一貫している・・・

というような内容です。あの細部に渡る描写は、この「とにかくメモ取り」のなせる業なのね~と妙に納得したのでした。
レベル4 Labに入る時も、もちろんいつものメモとペンを持参しようとするのですが、メモは「持って入ることはできるけど、持って出れないよ~」と却下され、ペンも「先が尖っているからだめ」と却下され、結局、テフロン製の退室時に高温殺菌できる特製のメモ用紙(?)とLab備付けのペンを使用することになります。

もうひとつ興味深かったのは、The New Yorkerの原稿チェック体制。
同編集部には、(Prestonが原稿を書いている時点では)Fact Checkerと呼ばれる専任のチェッカーがいて、書かれていることが細部まで事実であるかどうか(例えば、文章中に特定の靴下の描写があれば、話者は本当にその靴下を持っているのかどうかということまで)確認するのだそうです。
さらに、Grammar Checkerさんもいて、Grammarに間違いがないかどうかをチェックするのだとか。「読み易い」文章なのは、このgrammar checkerさんのおかげなのかもと、The New Yorkerの他のただ読み可能記事をチェックしてみましたが、表現こり過ぎていて挫折ということもなく、概ねさくさく読めましたけれど、Prestonほどに読み易くはなく、「読み易い」一番の理由は、やはりPreston自身が、癖のない平易な文章を書くというのが大きいのだろうなあと思いました。

ということで、現在、”Panic in Level 4”、ながら聴き中です。
仕事一段落失業、仕事以外一段落せず継続中。
2012.04.03 13:41 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(0) |












管理者にだけ表示