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2012. 07. 14  
医療ミステリーを「ながらリスニング」していると、結構頻繁に耳にするのが、これらの名称。手術室や手術用の器具の翻訳で遭遇したことも、2、3回あります。

「スクラブナース」の個人的な第1印象は、看護師さんがたわしで手術室の床をごしごししている姿。誤解しないで頂きたいのですけれど、これはあくまで「スクラブ」という語からの単純な連想で、決して看護師さんを上から目線で見たりしている訳ではありません。

同様に「サーキュレーティングナース」の第1印象は、循環器系の手術専門の看護師さん。

・・・もちろん、どちらも間違いなんですが。

Scrub nurseは、Dorland’sにもTaber’sにも説明がありますが、ここは、より丁寧なTaber’sの説明を引用しておきます。”nurse”の項に副項目として掲載されていました。

Scrub nurse:an operating room nurse who directly assists the surgeon, primarily by passing instruments and supplies (Taber’s Cyclopedic Medical Dictionary 18th ed.)

分かり易い説明ではありますが、できれば日本語の説明も読んでみたい。それに、circulating nurseの説明は載ってないし。
そういう時に役に立ってくれるのが、「最新 英和メディカル用語辞典」(講談社2000年)。これは、病院内や医療従事者の間で用いられるスラングなども多数収録された、どちらかと言えば「読んで『へえ~、ほお~、そうなんだ~』と楽しむ」辞書です。2000年の出版なんで、もう「最新」とは言えんけど。といっても、もちろん、いい加減な訳語が記載されているという訳ではありませんが。で、調べてみましたら、ちゃんと両方とも記載されていました。

Scrub nurse(スクラブ・ナース、手術室付きナース、直接介助ナース、手洗いナース)滅菌手術チームのメンバーであるナース、または手術技師。滅菌した器具や備品を装備して外科医に渡したり、手術の進行中に外科医を援助したり、器具などの説明をしたり、新しいメンバーに手術室のしきたりを教えたりする(P. 289)

・・・「手術室のしきたり」って何なん??
(深読みのし過ぎとは思うんですが、この辞書には時々淡々と面白いことが書かれていたりするので、ついつい深読みしてしまうSayoなのでした)

気を取り直してCirculating nurseですが・・・

Circulating nurse(手術室巡回ナース、間接介助ナース、外回りナース)スクラブ・ナースと同様に手術チームのメンバーであるが、スクラブ・ナースが文字通り消毒をして手術室の中の滅菌された範囲内で仕事をするのに対して、手術室巡回ナースはそれ以外の範囲で手術器具を用意したり麻酔の援助をするなど手術チームの他のメンバーができない仕事を担当するナースである(pp 72-73)

滅菌エリアで作業をするか、非滅菌エリアで作業をするかという違いのようです。巡回しているからcirculatingなのね~と改めて感心したのでした。
日本の手術室でも、これにぴたっと対応する看護師の呼称があるかどうかは不明(該当する知人がいないので)。2000年時点では定訳がなく、そのために、複数の日本呼称が記されているのかな~と思ったりします。そう言えば、以前「医龍」というドラマで、「器械出しナース」という言葉が使われていましたが、あれもscrub nurseさんに相当するんでしょうね(たぶん)。

さて、「ながら」で、これ以外によく遭遇する語句にorderlyがあります。残念ながら、「英和メディカル」さんには記述がないのですが、Taber’sさんには、

Orderly: an attendant in a hospital who does general work to assist nurses. Orderlies are responsible for lifting and transporting patients and preparing them for surgery (e.g., shaving, catheterizing, or administering enemas).

とあります。
Wikipediaさんには、もっと詳細な説明があります → http://en.wikipedia.org/wiki/Orderly
「看護助手」とか「病院付添人」と訳されているサイトを見た記憶もあります。「例えば…」の記述を読むと結構専門的なこともされているような気がするのですが(←素人的判断なので間違っていたらすいません)、Wikiさんにはnon-licensedと書かれていますので、準看護師さんではないですよね。
これまでは、医療ミステリーでお目に(耳に?)かかるのみで、実際に仕事で遭遇したことはないのですが、もし遭遇したら、訳語で悩むかも・・・なorderlyでした。
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Re: タイトルなし
鍵コメント下さった**様、
こちらこそはじめまして。これからもどうぞ宜しくお願い致します。

おおっ、有益な情報ありがとうございました!
(**さんは、「聞きかじり情報ですが」ということで、手術室には「器械出し」「外回り」「オペ付き」ナースがいるようだということを教えてくださいました)
リスノさんへの返信でも書きましたが、こういう語って、前後の文脈とか全体の文章の感じとかも考慮して訳語を決めた方がよい語かな~と思いますので(←あ、あくまでも個人的な考えですが)、ビミョーに厄介ですよね。お医者さん(の立場的訳語?)にも、苦しめられたことがありました。

**さんも、医薬の翻訳に関っておられるんですよね。
私は、医薬関係の仕事はここ1年くらいで、しかも全て医療機器の分野です。まだまだ勉強勉強の毎日です。お互い頑張りましょ。また遊びにいらしてくださいね。
Re: タイトルなし
リスノさん、まいどです~。

おおっ、やはり「器械出しナース」さんには、対応する訳語があるんですね。ありがとうございます。

>sterile productとun-sterile productでそれぞれ未使用品、使用済みの製品

なるほど~。私は、滅菌関係では、滅菌工程そのものに関連する翻訳が多いので、個人的には「滅菌済み」「未滅菌(これから滅菌)」「非滅菌(滅菌しない)」なんかをまず連想してしまいますね~。こういう、一見難解に見えない言葉って、逆に文脈に合わせて最適の訳語を選択しないといけなかったりするので、あなどれないですよね。

一気に暑くなりましたが、お互い夏バテしないよう(&屋内熱中症にかからないよう)頑張りましょう。私は、今日からlast resortの寝室避難です。ではでは。
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こんばんは(^o^)
家に帰って確かめてみたらやっぱりinstrument nurseでした。それから(un)sterilized staffに出会ったことはないんですが(これも覚えておこう!)、sterile productとun-sterile productでそれぞれ未使用品、使用済みの製品と訳している文に遭遇したことがあります。自分では出せない訳語です~。
Re: タイトルなし
リスノさん、まいどです~。

おお、「器械出し看護師」に該当する英語がちゃんとあったのですね。
私の場合、手術室のスタッフに言及する表現として、sterilized staffとunsterilized staffという語に遭遇したことがありますよ~。医師と看護師以外に、滅菌エリアで作業するヒトがいるのかどうか、どうしても分からなかったので(麻酔科医はお医者さんですよね)「(非)滅菌作業担当者」みたいな感じで逃げましたが。「手術室」という場所が、まず私には未知の世界ですし(自分が患者の時は麻酔で寝てますからね)、お医者さんや看護師さんの位置付け(?)も、日本と他国で微妙に違う感じがするので、こういう語句に苦しめられること、結構多かったりします。

最近、仕事で渡された参考資料(類似文書の過去訳)で「器械出し看護師」を知りました。今、手元に英文がないのですがもとの英語はinstrument nurseだったかなぁ(ちがうかも)。わたしはスクラブナースと聞いて清拭を担当するナースかと思いました(^^;)。今回の単語、どれも知りませんでした。勉強になります!
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プロフィール

Sayo

Author:Sayo
医療機器の和訳も9年目。
老眼腰痛、最近は膝痛とも闘いつつ
翻訳人生をまっとうしようと奮闘中。
この頃になってやっと翻訳の奥深さ・
難しさ・楽しさが分かってきたような。
記事は「翻訳一般」多め、ときどき読書感想文、本業(医療機器)やや少な目。
(2019年4月現在)

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