屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

「銀盤のトレース」(実業之日本社 2010)
「銀盤のトレース age15 転機」(実業之日本社文庫 2011)
「銀盤のトレース age 16 飛翔」(実業之日本社文庫 2012)


最初の作品(「銀盤のトレース」)を図書館で偶然手に取ったのでした。
続くと言えば続くような、終わりと言えば終わりとも取れるようなラストだったので、続編が出るとは期待していなかったのですが、去年のフィギュアスケートシーズン、いきなり続く2冊が文庫で出版され、貪るように立ち読みしたのでした。何だか、買うのが恥ずかしかったもので。十分大人の鑑賞に堪え得る内容だと思うのですが、ちょっとジュブナイル限定を窺わせるような表紙でして・・・って、それを必死で立ち読みするおばさんも、かなりアヤしいですが。でも、どうしても繰り返し読みたくて、先日、ついに文庫2冊を購入してしまいました。シーズンも始まるしね。

てことで、タイトルから予想されるとおり、フィギュアスケートについてのお話です。


「銀盤のトレース」
主人公の竹中朱里は小学6年生。もともとミニバスケをやっていたのですが、引越しを機にフィギュアスケートを習い始めます。「フィギュアスケート王国」とも呼ばれる名古屋が舞台。朱里ちゃんは運動神経がよく可能性もありそうですが、もちろん、将来を嘱望されるほどの選手ではありません。練習風景やバッジテストなどスケートシーンも勿論多いですが、それ以外の内容、たとえば、リンク事情や家族関係、暫く前までやはりスケートを習っていた姉の瑠璃との姉妹関係なども丁寧に描かれます。お母さんから5級(だったと思う)のバッジテストに受からなければスケートを止めるよう言われた朱里が(母親がそう宣言したのにもちゃんと理由があります)何とか昇級できたところでお話は終わります。少女の成長譚として、これはこれで完結してもおかしくないと思える終わり方です。


「銀盤のトレース age15 転機」
朱里は中学3年生に成長。スケートは続けています。そこそこの高校にスポーツ特待生として推薦入学できそうな程度の実力はあります。経済的なこともあり、その高校への進学を考えていた朱里ですが(特待生は授業料免除)、家族の後押しもあり、ジャンプに失敗・転倒して骨折し練習ができないでいる間に猛勉強し、有名選手が多く進学し立派なスケートリンクのある名南大附属高校に一般入学を果たします。朱里はそこで、1作目で、偶然リンクで出会い、時々コンパルソリという今はもうなくなってしまったスケートの基礎を教えて貰うことになった朝倉さんという「ヘンなおじさん(実は往年の名選手)」と再会。骨折後怖くて飛べなくなっていたジャンプを矯正して貰うことになります。朱里はもともと左利きで、本来なら時計回りで回転するのが自然なのですが、これまでは他の選手と同じように反時計回りのジャンプを飛んでいたのですね。それを、身体にとって自然な時計回りジャンプに直せば恐怖心なくもっとよいジャンプが飛べるかもしれないというのです。それまで、朱里は、「おじさん」のことを本来のコーチである明子先生には内緒にしていたのですが、事ここに至ってきちんと話さざるを得なくなります。こっそり他のコーチに習っていたことだったり、学校のリンクで過ごす時間が増えたことなどいくつかの要因が重なり、明子先生とは何となくうまくいかなくなっていきます。そうした師弟関係の変化、級友との関係、家庭の事情でスケートを止めることを余儀なくされる親友のことなどが描かれます。最終的に、ジャンプ矯正は成功し、明子先生との信頼関係も回復し、西日本選手権の出場を賭けた中部ブロック大会で、朱里は素晴らしい演技で優勝を勝ち取ります。その演技の描写は何度読んでも泣ける。


「銀盤のトレース age 16 飛翔」
朱里は、西日本選手権を勝ち上がり、初めて「全日本ジュニア選手権」に出場します。そこで、熱で朦朧とした中で反ってよい演技ができ2位に入るのですが、そのことより、朦朧とした中でジャンプに入る軌道を間違い、1つのプログラムの中で右回りと左回りの両方のジャンプを飛んでしまったことから、一躍「スイッチジャンパー」としてメディア全国区になってしまいます。推薦で初出場した全日本でも7位に入り、エキジビションも初経験。ついには、それまで全く国際経験のないまま、その年の世界ジュニア選手権への派遣が決まります。メディアの取材も経験しますが、皆が聞くのは「試合で左右両方のジャンプを入れるのか」「なぜ入れなかったのか」ということばかり。ジャンプ以外のエレメンツも加点が取れるように一生懸命練習してきた朱里はそれが不満で、時にはぶっきら棒な対応をしてしまうこともあります。そんなメディアシンデレラ的存在の朱里は、2CHで叩かれたりするようにもなります。姉の瑠璃も、妹ばかり持て囃されるのはやはり多少面白くないようで、彼女が、そうしたネットいじめ者の気持ちを一般的に代弁するような形で、自分の気持ちをちらっと吐露したと思われる場面もあります。結局、世界ジュニアでは、試合の前に足を捻挫して満足の行く演技ができず、SP25位、FP滑走に届かずの結果に終わりましたが、左右両回りのジャンプを跳んだということで、試合後のパーティーではちょっとした話題になります。朱里が「スイッチジャンプ」も自分の個性のひとつと受け入れ、来年はそのことだけではなく演技の結果で評判になるためにもう一度ここに戻ってくると誓うところで本作は終わります。


ここで終わりかもしれないし、まだ続くかもしれないしって感じなのですが。
シーズンも始まることですし、「age 17」に期待しましょう。
朱里が悩みながら少しずつ成長し、大会で成功を収めていく過程はやはり読んでいて爽快ですし、世界レベルのスケーターへと育って行く様を見届けたい気持ちもありますが、競技者としては「そう言えば『スイッチジャンパー』として一時騒がれた選手もいたよね」レベルで止まってしまうけれど、本人がその事実を向き合いその後の人生を選択するという方向の話も読んでみたい気がします。

本作では、メディアの煽りや、色々な立場の人々の良きにつけ悪しきにつけ「掌を返す」的な対応も描かれていて、その辺りもきちんと書いてくださっているのが嬉しい。合わないスケート靴の話も「こういうことなんだな」と興味深いです。著者は周辺事情なども本当によく取材されていて、フィギュアスケートが好きな方なのだろうなあと思います。

続編、カモ~ン!!
2012.10.19 10:57 | フィギュアスケート(~13-14 season)  | トラックバック(-) | コメント(6) |

鍵コメント**さま、

まいどです~。

まず、ご心配頂いた眼の方ですが、ここ10日ほど完全に普通の眼状態に戻っています。このまま綺麗な眼でいたいです。サプリのビタミンCが効いたのかどうかは不明ですが、取り合えず今も飲み続けています。これでシミも薄くなってくれるとさらに嬉しいかも。

「銀盤のトレース」は私も図書館で偶然遭遇した本でして。この季節に読まれておくと、これからのシーズン、さらに楽しくフィギュアスケートを観戦できるのではと思います。同じ作者の「図書館ウォーズ」(文庫化では「書店ガール」と改題されたようです<未確認)も、全然違う系統の作品なのですが面白かったです。

そして。
フィギュアスケート、始まりましたね~。今年もGPシリーズは、基本you tube観戦(?)になりそうな嫌な予感なんですが(とりあえず11月一杯は、たぶん)、何とか時間を作ってTV観戦したいです。

ホントに朝晩寒いくらいになりましたよね~。**さんも、お風邪など召されないようになさってくださいな。
ではでは。

2012.10.25 12:35 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

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2012.10.25 08:49  | # [ 編集 ]

レモネードさん、まいどです~(とナントカの一つ覚えの挨拶です)

おおっ、皆さん、結構「銀盤のトレース」本編をご存知なんですね~。個人的にはそちらの方にびっくりです(嬉しい驚きです)。続編もいいですよ~。手に汗握っちゃいますよ~。朝倉先生と明子先生も、過去に何らかの繋がりがありそうな感じなので、そこの部分の解決に向けて(?)もう少しお話も続くと思うんですけど(希望的観測)。

私は、バレエの方は「SWAN」で仕入れた知識だけなんですけど、「SWAN」で色々な演目のことを知り、バレエの舞台を(TVだけですが)見るのが少し楽しくなりました。

> 「SWANモスクワ編」、お近くだったらすぐにでもお貸ししますのに~♪

あ、コミック持ってらっしゃるんですね。私も買うつもりではいるのですが、「完結してから一気読みしよう」と購入は我慢してます(連載は読んでますよー)。でもでも、暖かいお申し出ありがとうございます。年月を経て画風が変わってしまう漫画家さんも多い中、有吉京子さんは、本当に昔と変わらず丁寧で美しい絵を書かれますね。

フィギュアスケートは佐野稔さん、五十嵐文男さん、伊藤みどりさんなどの滑りをTVで見てファンになりました。年季だけは入ってます(自分は全然滑れないんですが)。ここ数年はもっぱらYou Tubeさんのお世話になるほどの堕落(?)ぶりで、熱くフィギュアスケートを語る資格はないのですが、それでも、毎年この季節になるとそわそわします。
今年も頑張って動画で応援致しましょうね! ・・・て、ここはいったい何のブログなんだろう(<自分)

またいらしてくださいね~。

2012.10.21 20:35 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

Sayoさん、こんにちは^^

ひとつ前のエントリーにコメさせていただこうと思っていたのですが、
こちらの話題に反応してしまいました-。

私も「銀盤のトレース」の続編知らなかったです。これはぜひ読まなければ!
ところで皆さん、バレエコミックやフィギュアスケート、お好きなんですね。
私も大好きです。話が合いそうで嬉しいです (*´ェ`*)
「SWANモスクワ編」、お近くだったらすぐにでもお貸ししますのに~♪

フィギュアGPも始まってしばらくはTV観戦に忙しくなりそうですね。
といっても、我が家はBSやらCSやら全く視聴できないので
もっぱらネットで動画探しです。
仕事をしている時間よりそちらの方が長いかもしれません・・・。

ではではお邪魔しましたー!

2012.10.21 16:54 URL | レモネード #- [ 編集 ]

KYOKOさま、まいどです~。

おおっ、KYOKO様も「銀盤のトレース」読まれてましたか(KYOKOさん宅の本棚はホントに充実されていて羨ましい限りです)。少女の成長譚としてもフィギュアスケートストーリーとしても面白いですよね。続編、個人的には「表紙で読者を狭めてるよなあ」と思います。アレを立ち読みした自分を褒めてやりたいです。

「愛のアランフェス」、私も読みました。もちろんSWANも。ああ、そんな青春もあった(遠い目)。既にご存知かもしれませんが、今、「SWAN MAGAZINE](http://www.heibonsha.co.jp/swanmagazine/)というバレエ季刊誌で、その後のSWAN「SWANモスクワ編」を連載中です(←こちらは立ち読み問題なし<同世代の方がやってたりすることもあり心強い)。SWAN次世代編の「まいあ」は持ってますが、「SWANモスクワ編」は完結してからまとめて買おう!と楽しみにしています。あ、すいません、つい、ちょっと熱く語りました。

ではでは、また。
いつでも遊びにいらしてくださいませ。

2012.10.21 13:25 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

sayoさま

「銀盤のトレース」面白いですよねぇ。フィギュアにはさほど興味がなかった私も興味深く読ませてもらいました。続編が次々出ているのを知らなかったです!早速読んでみます。確かに表紙が何とも・・・なぜに??

そう言えばマンガですけど「愛のアランフェス」が大好きでした(バレエのスワンも!)。

ではでは。

2012.10.21 12:30 URL | KYOKO #- [ 編集 ]













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