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2013. 07. 02  
というわけで、例によって読書感想文なので、
お好みによりスルーして頂ければと思います。
決して翻訳トライアルの話ではありません、念のため。

以前「夏から夏へ」の読書感想文を書いた時、
スポーツ小説としてふと思い浮かべたのがこの本でした。

銀盤のトレース」も立派なスポーツ小説と思いますが、
私の中では、あれは「フィギュアスケート小説」なので。
個人的には「スポーツ小説」と並び立つ堂々のカテゴリです。

というわけで、「トライアル」なのですが。
これをスポーツ小説と呼べるかどうかは正直微妙です。

題材は、競輪、競艇、オートレース、競馬。
これらのギャンブル・レースを舞台に、スポーツそのものというより、それらの世界で生きる人々を描いた短編集4作です。主人公は競技者なのですが、人間関係や家族関係の描写に力点が置かれている感じです。真保裕一さんは「ホワイトアウト」しか読んだことがありませんが、勝手なイメージとしては「男を描く」。本作もそんな感じです(注:競艇を扱った作品の主人公は女性です<競艇レースに男女の別はないのだ!)。

練習場、各レース会場、厩舎など、普段垣間見ることのできない場所の描写も興味深い(興味があればってことですが)。

競技者が主人公ですので、もちろんレースのシーンもあります。物語は3人称ですが、一人の視点で語られるため、主語が省略された短い文章が続くことも多く、レースの描写など、その手法が生きていて、緊迫感が伝わってきます(と勝手に思っています)。たとえば、競馬を扱った「流れ星の夢」ではこんな感じ(主人公の騎手視点です)。

***

三コーナーに入ったところで、後続馬が仕掛けてきた。
馬場を揺するような重量音が迫り、後ろから圧力となって体を押した。先頭を逃げる騎手が、内ラチ沿いを離れずに回りながら、早くも鞭を用意するのが見えた。
ここだ。そう思った瞬間、セキノウイングはグンと体を沈ませ、もう追い込み体勢に入っていた。
レース運びを馬自身が覚えていた。あとは馬の気迫に負けじと、手綱をしごいて追うだけだった。四コーナーの出口でわずかに外へ出して、鞭をくれた。
最後の直線。鞭は二発。それで十分だった。
ゴールが近づくごとに、体が沈んでいくような走りだった。五十メートル手前で、逃げる先頭馬を捕らえた。そう確信した時にはもう、あっけなく引き離していた。
(「流れ星の夢」より)

***

我が家では旦那さまが手慰み(??)に競馬をなさり、私も結構TVで競馬中継を見るので(滞米時は近くに競馬場があったので、競馬場にも脚を運んでいたのだ~<家族連れも多く、休日の割りと健全な娯楽という感じでした)上の描写だけで場面が目に浮かぶようです。「セキノウイング」というお馬ちゃんの名前も、芸がないっちゃないですが、逆にいかにも栗東や美浦あたりを実際に走っていそうな感じですね。

文章の好みも題材の好みもあるかと思いますので(万人向きの小説とは言い難いかと)、お気が向かれましたら、ということで。


そして、「屋根裏通信」は、ますます翻訳ブログから遠ざかる道を歩んでいくような気がしてならないSayoなのだった(でも「勝手に読書感想文」はなかなか気に入っているのだった)。
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Re: タイトルなし
Mayoさま、まいどです~。

おおっ、MayoさんもGIはTV観戦ですか! 私も旦那による観戦強制により、あのファンファーレ(?)歌えまっせ(<だからどーした<自分)。競馬観戦(TV)は結構好きですよ。第4コーナー周ったあたりから、ドラマだねえ。

ディック・フランシス作品は、翻訳物ですので、原作の好み+翻訳文の好みの両方があると思いますが、ストーリー的に楽しめるものが多いかなと。個人的には「混戦」(小型機のパイロットさんが主人公)、「侵入」(上記のクリスマスさんが主人公)あたりが好きですが、たぶん傍流かと思いますので、他のフランシスト(?)様にも意見を伺ってみてくださいませ。
出遅れましたが、まいどです~。

ディック・フランシス、面白そうですね(不勉強なもので、初めて知りました)。シリーズ中、Sayoさんの一押しは何ですか?次の趣味本はそれにします♪

私もGⅠなんかはテレビで観ますよ~(大きい声では言えませんけど)。あとは凱旋門賞の行方を密かに気にしております(笑)
Re: タイトルなし
おおっ、Yasukoさんもファンでいらっしゃいましたか。
私は、騎手のキットさんが主人公のシリーズが結構好きだったんですよね。本名クリスマス、愛称キット、双子の妹がホーリー(だったと思う)て、それだけでもう最高!て感じで(<そこかよ<自分)
Yasukoさんとは、今年もう一度お会いできますかね。楽しみにしております。 お休みなさ~い!

再びまいどです~。

すみません。ディック・フランシスに思わず反応してしまいました。
「競馬」の文字を見たとき、私も頭に浮かんだのですが、なんとなく書かずにいました。
ミステリ好きの人たちはやはりディック・フランシス、読んでるんですね。なんか、もう、ほんとうにうれしいです。こういう部分(どういう部分?カッコよく言えば知的好奇心)を共有できる方々とお知り合いになれていい年でした(まだ7月)。

と一人うれしい気分になって寝てしまうyasukoなのであった(Sayoさん風)。

Re: タイトルなし
Kyokoさま、まいどです~。

ありがとうございます! 私もKyokoさんの書籍紹介楽しみにしてますよ~。

ディック・フランシス、私もだいぶ読みましたよ~。今でも「度胸」とか、売り飛ばせなかった子が、どっかに2、3冊あるはず。菊池光さんの訳も、「いやいやいや、実際喋る時はそんな言葉遣いせんし」と密かにツッコミ入れながら楽しんでました。もう、どちらも亡くなられてしまいましたねえ・・・

> PS.医薬ランチ会、落ち着いたらまた連絡します。T嬢も快諾してくれたので。業務連絡まで。

了解です。
まいどです~。

読書感想文、楽しいです。湊さん、宮部さんの時もいろいろ書きたいことがあったのですがタイミング逸しました。私も感想文挙げなくちゃ!(誰も待ってませんが)読みたい本が増えてきて困ります。

さて、競馬と言えば、ご存じですかね?元騎手のディック・フランシスの競馬ミステリシリーズは本当に最高です。

ではでは。

PS.医薬ランチ会、落ち着いたらまた連絡します。T嬢も快諾してくれたので。業務連絡まで。
Re: タイトルなし
Yasukoさん、まいどです~。
ううっ、Yasukoさんも、優しいお言葉ありがとうございます。まだまだ色々あるんですが、絶版などで入手が難しくBook Offだの図書館だのを当たって頂かないといけない本が多いのが、ちょっと気になっています。新しい本も交えながら、小出しにしていきたいと思います。

あ、「かまいたち」までこられましたか! 「お初ちゃんシリーズ」いいですよねえ。残念ながら[天狗風」で止まってしまっていますが。「てつ」可愛かったでしょ(というか生意気というか・・・)。
Sayoさん、まいどです~。

私も読書感想文楽しみにしてます。おかげさまで読む本に困りません。(今は「かまいたち」。お初ちゃんLOVEになってしまってどうしましょ)。海外ミステリもKindleの中で順番待ちだし。ああ、忙しい。
またお勧めお待ちしています~。
Re: タイトルなし
ちょりーたさん、まいどです~、相変わらずのlate satarterですいませんです~。

よっしゃ。ほんでは、「屋根裏」は今月から完全読書感想文ブログ化します・・・というのは嘘ですが、自分の好きな本を「好きなの、読んで~、読んで~」と気合を入れて紹介できる読書感想文を書くのは、ホントに楽しいんですよね(そこが、ガッコの読書感想文との一番の違いかと)。好みに偏りがありますが、これからも宜しくお願いします。あ、頑張って、フツー(翻訳)の記事も書きます。
「勝手に読書感想文」好きですよ~(実は朝日新聞の書評より好きだったりする)。ぜひ続けてくださいませ。
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プロフィール

Sayo

Author:Sayo
医療機器の和訳も9年目。
老眼腰痛、最近は膝痛とも闘いつつ
翻訳人生をまっとうしようと奮闘中。
この頃になってやっと翻訳の奥深さ・
難しさ・楽しさが分かってきたような。
記事は「翻訳一般」多め、ときどき読書感想文、本業(医療機器)やや少な目。
(2019年4月現在)

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