屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

漫画だって読書感想文致します。

本編は「陽の末裔」という大正初期~戦後に掛けての「女の一生」的女性版大河ドラマ(←大袈裟)。本編はかなり重い物語ではありますので、好みが分かれるところかと思いますが、この「懐古的洋食事情」は、本編の脇役たちが主人公の(いわゆるスピンオフものですね)1話読切りの当時の洋食事情についての短編集なので、楽しく懐かしく読むことができます。

「陽の末裔」本編は、紡績工場の女工として東京へ出てきた東北の貧農の娘、石上卯乃と、没落した名家の娘、南部咲久子の2人が主人公。

咲久子は工場長高島の養女となって高島家を継ぎ、様々な男遍歴(!?)ののち、大人しいお坊ちゃん桜町伯爵と結婚し婚家を没落させ、その後深草子爵と再婚。子爵亡き後は、その美貌と才覚で一大財閥を築き上げるのですが、戦後の財閥解体により全てを失います。それでも諦めない咲久子は、単身アメリカに渡り再起を果たそうとします(くらいのところで終わっていたと思う←手元にない)。

一方、卯乃は、「元始、女性は太陽であった」という平塚雷鳥の言葉(本編の題名はここから)に感動するような生真面目な女性で、年季明け後新聞記者となり、女性解放運動に奔走します。その過程で咲久子の義兄高島森(いわゆる「アカ」活動家)との同棲を経て、もと特高の青年野方と結婚しますが、夫は出征、身体を病んで戻り亡くなります。(それでも、戦後再び立ち上がるくらいのところで終わっていたと思う)。

という感じで、置かれた環境も思想も歩む人生も全く異なる2人なのですが、それらを全て超えたところで、友情で繋がっているという不思議と言えば不思議な関係です。

昼ドラでやると、どろどろな部分が強調されてしまいそうなので(男女関係とか結構どろどろなんですが)、N*Kさんあたりで8回連続くらいでドラマにしてほしいところです。

で、戻りまして「懐古的洋食事情」。主人公2人は登場しないのですが、本編に(おおむね)ちらっと登場する登場人物たちが主役を張り、存在感ハンパないアクの強い深草子爵やお抱え画家の九門京也さんなどがしっかり脇を固めます。なので、このスピンオフ3冊だけでも楽しめるかと思いますが、できれば「陽の末裔」から始めて頂きたいところ。本編で悲劇に涙した後、「懐古的・・・」で「あの人たちにも本編の外でこんな幸せな人生があったのね」とじわっと暖かい気持ちになって頂くのが、精神衛生上宜しいかと。

この「懐古的・・・」は、もともと、発表順にYOUコミックスとして単行本化されたのですが、3巻ものとして集英社文庫に再度収載された時に、物語の年代順に並べ替えがなされました(という訳で「新編」とついているのだと思います)。1作目は明治10年が舞台で、主人公は「えーと、作中登場人物のご祖父様ですか?」くらいまで遡らなければならず、「こじつけましたね」感もあったりしますが。まあ、それはそれで「登場人物とどういう関係なのかな♪」と想像する楽しさもあったりします。長い年月に渡って書かれたものなので、絵が微妙に違っているのはご愛嬌でしょうか(個人的には初期=1990年頃の絵が一番好きです)。

というわけで、お料理好きな方もそうでない方も、この浪漫的美食シリーズに興味を惹かれた方は、お盆休みのお供に、Amazon又はBook OffにGOでございまする。
2013.08.09 23:52 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(0) |












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