屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

10月頃読了したのですが、どう書いたらよいか考えあぐねているうちに、ついに映画公開日が来てしまい、「こりゃいかんぜよ」という訳で、やっと重い腰を上げました。

私は、普段はあまりベストセラーは読まないのですが(世間から忘れ去られた頃に図書館で借りる、若しくはBook Offで入手する)、この本は、旦那からせしめた図書カードで購入して読みました。

百田尚樹さんが、太平洋戦争や特攻をどのように描いておられるのか知りたかったのが理由のひとつ。もうひとつは、「皆が涙する」と大々的に宣伝されている「永遠の0」に自分も涙するかどうか確かめてみたいというヨコシマな理由からでした。まったく困った性格です。

もう粗筋やら感想やらがAmazon書評を初めとする各所に出まくっているので、「前知識ゼロ」の状態で臨むのは無理ということで、Amazonの星1つから5つまでの書評を、それぞれ何件か読んでから本編に臨みました。まったく困った性格です。

結果は以下のとおり。
あくまで、個人的な感想ということで、さらっと流してやってください。

泣きました。ただし、結末はすでに分かっているので、最後のどんでん返しの場面ではなく、それより少し前の、宮部を嫌っていて空中戦で撃ち落とそうとまでした景浦が、宮部が特攻に出て未帰還だったことを知って号泣する場面です。自分でもなぜそこなのかよく分からないのですが、景浦の気持ちに同調してしまったようです。
巧みなストーリー展開で、ラストに向かってぐいぐい読ませてくれますので、勢いで泣いてしまった部分もありました。「神はサイコロを振らない」(大石英司)を読んだ時がこんな感じ。行方不明になった旅客機が、10年後に3日という期間限定で戻ってきて、当時の姿のままの乗客が10年後の「遺族」と再会し、それぞれの心に何かを残してまた消えてしまうというストーリーなのですが、再開した家族との別れの場面が、分かっていても、涙、涙でした。でも、逆に、それでカタルシスを得てしまったのか、「再読は別にいいや」になってしまって、いつか手放してしまいました。「永遠の0」も、個人的な気持ちですが、たとえば山崎豊子さんの「白い巨塔」や三浦綾子さんの「塩狩峠」などのように、時々読み返そうという気持ちには、今のところなっていません。
個人的には、星3.8個くらいの感じ。
ストーリーはよく練られていますし、星1個の方々からは「借りてきた説明」みたいに酷評されていた戦況の描写も、登場人物の言葉を借りて、よくぞここまで整理して語らせたな、と舌を巻きました(まあ、実際は、皆が皆、ああも大局的に戦争を語ることはないかと思いますが)。それでも、どうしても厳し目の感想になってしまうのは、所々に「ここ感動どころです」みたいな著者の作意を感じてしまうからです。放送作家からの転身1作目ということですから、仕方のないことなのかもしれません。もう少しブームが去ったら、「海賊と呼ばれた男」も読んでみたいと思います。
「本人を知る人に語らせる」という形で宮部という人間を描いているため、人間・宮部に感情移入することができなかったというのも、「入りこめなかった」一因かもしれません(あ、だから景浦さんに感情移入しちゃったのね)。

百田さんは「70年前には日本ではこんなことが起こっていた」(まあ、これは小説ですけど)ということを次の世代に伝えたいという思いで、この小説を書かれたのだと思います。そのことはきちんと伝わりました。


読み比べ、というと語弊があるのですが、フィクションとノンフィクションでは、感じるものはどう違うか体験してみたくて、

「戦艦大和ノ最期」(吉田満<「戦」は旧仮名遣い)
「雲ながるる果てに‐戦没海軍飛行予備学生の手記」(白鴎遺族会編)

の2冊も併せて読みました。

1920年生まれの父は、高専(当時)卒業後応召し、海軍技術将校として舞鶴海軍工廠で終戦を迎えました。自ら戦争体験を語ることはありませんでしたが(私も尋ねなかったし)、本好きの父の本棚には、この手の本が山ほどあります。上の2冊も、その中から拝借したもの。「きけわだつみのこえ」も目にした記憶があるのですが、探し当てることができませんでした。

「戦艦大和ノ最期」(手元にあるのは1978年北洋社発行のもの)は、数少ない大和乗員の生残りである吉田氏が、大和が沈没するまでの様子を記録されたもの。「一部記述は事実ではない」という批判もあるようですが、それでも、大和が敵の攻撃を受け沈没に至る様子が、(ほぼ)忠実に再現されていると思います。旧仮名遣いとカタカナのみの文語体という、かなり高いハードルがありますが、逆に文語体だからこそ、さらに胸に迫るものがあったような気がします。

「雲ながるる果てに」は、戦死した海軍飛行予備学生数十名の日記だったり手紙だったり遺文だったり遺書だったり。もちろん「お国のために」的記述も随所にありますが、それは、家族に送られる手紙が検閲を受けることを考えれば、無理からぬことと思えます。大学を出たての20代前半の若者が殆どです。驚くのは、皆が、本当にきちんとした、深く内省する文章を書いていること。

どちらの本も、事実であることが分かっているだけに、やり切れない気持ちばかりが残りました。「永遠の0」とどちらがどうという問題ではなく、「比べよう」とすること自体が、そもそも不遜で間違っていたと思います。

特に、「雲ながるる果てに」の手記を書いている若者たちは、私の子供といっても差し支えない世代。そんな若者が、国や家族や愛する人たちを守るために、と死んで行くような世の中は二度ときてほしくないと思うのです。


戦争について知りたいと思った「永遠の0」の若い読者の方には、こうしたノンフィクションも併せて読んでいただきたいと思うのでした。
2013.12.21 00:57 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(0) |












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