屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

情報機構さんですよ、情報機構さん。
お値段の察しつきますよね。
消費税込み、36750円也の書籍です。
(http://www.johokiko.co.jp/publishing/BA130301.php)

この書籍のお話は暫くあとね。


生物学的安全性試験に関する依頼は結構多く、1回の案件の報告書数が10報などということもざらにあるので、報告書数だけでカウントすれば、昨年だけでも3~40報訳したのではないかと思います。ただ、特にGLP試験では、試験方法も報告書への記載内容も事細かに定められているので、試験報告者(試験所)によって報告書の型もだいたい決まっていて、差分翻訳になることが多いです。慣れてくると楽といえば楽なのですが、逆に、注意ミスによるポカをやらないように気をつけなければなりません。

最初の頃は、どんな試験なのかということもよく分からず、「よく似た参考資料を付けますから」と頂いた資料を基に、ただただ必死で訳していたのですが、先輩翻訳者さんにお役立ちサイトを教えて頂いたり、自分でもネット上で資料を探したりしながら数をこなすうちに、この種の試験で参照する資料はだいたい決まってきました。

1. 参考資料
クライアントさん(ORクライアントが使用した試験所)によって報告書の「型」があるので、既にある型から大きく逸脱しないように翻訳する必要があります。
2. 薬局方 
発熱性物質試験、エンドトキシン試験の場合は、まず薬局方を参照します。
以前は、コチラのPDFファイルをDLしたものを検索していましたが、今は、対訳君に収録のもの(版が違いますが、該当する試験について変更はないよう)を使用しています。
3. 厚労省「医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について」の別添
(http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/medical_device/T120302I0070.pdf)
個々の試験については、この資料を参照。個人的には一番使用頻度が高い資料です。
4. 書籍「医薬品GLPと毒性試験の基礎知識」(馬屋原宏、薬事日報社)
医薬品対象ですが、「毒性試験法ガイドライン各論」で、個々の生物学的安全性試験の大まかな内容を知ることができます。
5. 書籍「実験動物の管理と使用に関する指針 第8版」(日本実験動物学会監訳、アドスリー)
動物の取扱いに関する用語を知りたい時などに使用。
6. 実験動物学用語集
日本実験動物学会が編集したものなのですが(http://www.jalas.jp/gakkai/edu_book.html)、時々参照しています。
(書き忘れ追加分)
7. OECD毒性試験ガイドライン
http://jonai.medwel.cst.nihon-u.ac.jp/uploadfiles/file/pdf/OECD%20TG%20Health%20Effects%20jp.pdf


・・・と、手元にこれだけあれば、医療機器の非臨床試験に関する武装はひとまず完成かな、と思います。生物学的安全性試験と言っても、全種類の試験の報告書の翻訳を求められることはなく(あくまで私の場合ですが)、「細胞毒性試験」「感作性試験」「皮内反応試験」あたりが多いでしょうか。その他、「復帰突然変異試験」とか「埋植試験」とか。

ただ、これもあくまで私の場合なのですが、循環器系の医療機器の翻訳を依頼されることが多いため、この他に「血液適合性試験」の報告書に遭遇することがあります。(3)の別添にも、この試験についての記載はあるのですが、「溶血性試験」以外はあまり詳しく記載されておらず、「溶血以外の試験の情報もあればなあ」と常々思っていたのでした。


そこで登場するのが、「医療機器の生物学的安全性試験」(情報機構)です。半年くらい前に情報機構さんのサイトで見つけてから、「目次を見る限り、役に立ちそうだよな~、でも高いしな~」とうじうじしていたのですが、昨年半ば頃から、時々血液適合性試験に関する案件を打診されることがあり、年末に思い切って購入しました(そして風邪を引きました<懐が)。

結果から言えば、購入してよかったです。
これまであまり考えなかった、「なぜその試験をするのか」「その試験では何をどのように見て判断するのか」ということが分かったこと、海外基準(ISO)と国内基準の違いを分り易く説明してくれていること、目次から推測した通り、血液適合性試験についてそれなりのページ数を割いて説明してくれていることなどが、その理由です。

ただ、個々の試験方法については、薬局方やガイダンスの方が詳しいですし、抽出方法、試験方法、判定基準が分かれば実際の翻訳はできるかなと思いますので、非臨床試験の翻訳にどうしても必要な書籍だとは思いません。お値段的なこともありますし。
また、今の自分には有用ですが、非臨床試験の翻訳を始めた頃の自分にとっては、たとえば、書いてあることが殆ど理解できず、宝の持ち腐れ以外の何物でもなかったと思います。「将来のために所持しておく」べき資料であるとは思えません。

これまで、頂いた参考資料の記述については、多少「?」という部分があっても、調べがつかず自信のないものについてはそのまま使用してきたのですが、この本を一読して、「やはりこの語はおかしい」「この語を使用する時は気をつけないといけない」ということがありました。

その1つが、以前「非臨床、in triplicate」でも話題にした「in triplicate」です。たくさんの方からコメントを頂き「概ね『3連』という語を使用してよさそうだ」という結論になりました。ただ、その結論は、「ガイダンスにこういう表現があるから」「現場でその言葉が一般的に用いられるから」といった根拠の上に立つもので、その後も、in triplicateを訳す時に、文脈によって「3連」「3つ」「3個」等の語を使い分けながらも、今イチ訳語に自信が持てずにいたのです。

この書籍の「細胞毒性試験」の項に

「(ISO 10993-5:2009では)試験方法の項では、最低n=3の繰り返しが求められている。これは試験そのものを3回繰り返すのではなく、細胞を播種したディッシュやウェルを3以上設定することである」(P.57)

と記載されており、試験報告書中のin triplicateはこれにあたるのだということが確認できました。という訳で、このin triplicateと共によく出現するreplicate(s)という語も、「複製」ではなく、設定した3個のうちのそれぞれを言うらしいということも分かったのでした。めでたしめでたし。

とはいえ、「血液適合性試験」に関する言及も、「他の資料より充実している」という程度ですので、この種の試験については、今後も、アンテナを張りつつ、遭遇するたびに調査調査で乗り切っていくことになろうかと思います。
2014.01.12 21:05 | 辞書・参考書 | トラックバック(-) | コメント(5) |

> 鏡検用の組織切片作成関連の用語は...
Sayoさん、お心遣い恐縮です。今回の案件でその方面のものはなかったのですが、今後のためにとっておきます。というか、「鏡検」という用語を今初めて知りました...(^^ゞ

2016.01.30 01:19 URL | 天翔る龍 #- [ 編集 ]

天翔る龍さま、ありがとうございます!

おお、(案)が取れている! と確認したら、自分、ちゃんとPDFに落として保存しておりました。そして保存したことを忘れておりました。加齢のせいと思われます(泣)。 ご指摘ありがとうございました!

あと、一部裏取りした記憶もあるのですが、鏡検用の組織切片作成関連の用語は、こちらの論文にかなり助けて貰いましたので、ご参考まで(・・・もう遅いか・・・)
http://ir.kagoshima-u.ac.jp/bitstream/10232/392/2/KJ00004258713.pdf

2016.01.30 00:23 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

Sayoさん、早速ご返事くださりありがとうございます。背中を追いかけますよ(笑)。

すみません、1つ申し忘れました。厚労省の資料のURLは、こちらに変わっています。
https://www.pmda.go.jp/files/000157391.pdf

タイトルでググったらすぐヒットしましたが、使用頻度が最も高い資料だそうなので念のため。この資料は私も気に入りました^^

2016.01.29 23:40 URL | 天翔る龍 #- [ 編集 ]

天翔る龍さま、まいどです~。
おお、非臨床試験と戦っておられたのですね。
私も最初は、頂く参考資料と首っ引きでしたよ~。個人的には、細胞を使用する試験と、補体を用いる血液適合性試験の前には討死寸前でした。
情報機構さんの書籍は・・・ホントになんであんなにお高いんでしょうね。「in triplicate」を自信をもって訳せるようになったのは、確かに機構さんのお陰なんですけど。
とにかく、このような古い記事がお役に立って、本当によかったです。
「屋根裏」の仕事関連の検索キーワードダントツは「in triplicate」とpredicateなので、みなさん、やっぱり同じところで苦労されているのね~、といつもしみじみしています。

2016.01.29 22:43 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

こんばんは。実はここ半月ほど、まさにこの方面の翻訳に追われてました。初めての分野だったので、このご投稿をもっと早く知っていれば...。それでも、厚労省の資料、日本薬局方のページ、「in triplicate」の訳し方は、早速活用させていただきました。そのお高い本を買う気にはまだなれませんが、さすがによくまとめていらっしゃいますね(尊敬の眼差し)。ありがとうございます。<(_ _)>

2016.01.29 22:00 URL | 天翔る龍 #- [ 編集 ]













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