屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

「医療機器開発のエッセンス」雑感。

講義内容の概要は、シラバスで。
http://mei.osaka-u.ac.jp/cou05_15

「総論」に比べてアイソのない概要でして(MEIさん、スイマセン)、内容が掴みにくいかなと思いますが、乱暴にまとめてみると、設計開発→申請・承認→上市(&上市後)という、医療機器の一生(??)を俯瞰する講座、という感じです。材料調達や特許申請など、普段あまり扱われることのない部分についても(駆け足ですが)説明の時間が設けられました。

正直、「ここまで知らなくとも」と思う部分もありましたし、こうした知識が翻訳に絶対必要かと問われれば、恐らく私は「否」と答えるでしょう。知識がなくても、翻訳を行うことは可能ですし、実際、私も、医療機器の仕事を始めた頃は、「右も左も殆どわからない」新参者で、翻訳会社から頂く参考資料を頼りに必死に翻訳をしていました。
3年経って、ようやく、様々な文書の性質や立ち位置(?)が少し分かってくるとともに、ある程度自分で仕事量が調節できるようになり(つまり、能動的に(?)収入減を甘受するって意味ですが)、「(今の)自分は、どこに力を入れて知識を得たいのか」というようなことを考えるようになりました。その結果の「規制・制度・大局」強化年間です(その割に強化できてないという説もある)。
逆に、仕事を始めたばかりの自分がこの講座を受講したとすれば、講義の内容を十分咀嚼することができなかったと思います。ですから、自分にとっては、せっせせっせと様々な文書を翻訳した3年間は、「大局について学ぶ」ために必要な時間だったかなと思います。


医療機器センターさんのe-learningやMEIさんの講座を通じて、(自分比)集中的に規制・制度関について学んできて思うことは、大雑把に言えば、
「医療機器の開発製造は、薬の開発製造より、むしろ機械の開発製造に似ている」
ということ。医療「機器」なのですから、当たり前っちゃ当たり前かもしれませんが。
ただ、(特に体内植込み機器の場合は)「一定期間体内に留置される」機器ということで、「人体に悪影響を及ぼさない」ことが保証できなければなりません。そのために医療機器特有の規制や承認基準が必要となります。
これは製薬分野も同じだと思うのですが、そうした規制なり基準なりが「なぜ必要なのか」「どう運用されるのか」を理解しておくことは、長い目で見れば、決して無駄ではないと思います。


最後に。

今年に入った頃からでしょうか、同業者の方々から
「これからは医薬翻訳、特に医療機器分野の翻訳が増えるらしい」
という言葉をお聞きすることが多くなりました。

確かに、「健康」は誰にとっても関心事ですから、医療の進歩を扱う医薬分野の翻訳が、(今後翻訳形態が変わるのか、変わるとすればどのように変わるのかということはひとまず置いておいて)衰退することはなかろうと。そういう意味では、堅調な分野ではあると思います。
また、実際、政府も異業種参入を支援しようとしているようです。医機連さんの「産業ビジョン」でも、政府の「医療イノベーション5カ年計画」について触れられています(http://www.jfmda.gr.jp/vision/pdf/industrial_vision.pdf)。「医療機器分野が伸びるらしい」という予測は、一部はここからきているものではないかと思います。

*以下は、あくまでも個人的な印象というか感想で、調査やデータに基づくものではありません*

上記「産業ビジョン」の最後のデータが示すように、医療機器に関して言えば、今のところ、診断用機器を除いて輸入超過の状態です。体内植込み機器については(もちろん国内開発のものもありますが)、かなり輸入に頼っている印象です。というわけで、私のような、丁寧だけが取り柄の平均的な翻訳者にも、循環器だの整形外科だのの和訳案件が、そこそこ回ってくるわけですね(たぶん)。

この傾向が、すぐに劇的に変わることはないのではないかと、個人的には思います。
確かにTV番組等でお目にかかる日本企業の技術力には目を瞠るものがあります。でも、そうした高度な技術力が生体内環境にそのまま応用できるかと言えば、それはまた別の話で。生体内にあっても、浸食に耐え組織を傷つけない材料・形態の製品でなければなりません。そうした製品を生み出すためには、設計・製造・品質管理の全段階で、医学の知識が必要になろうかと思います。産学提携、医工連携が叫ばれるのは、その理由によるところが大きいのではないかと思います。
そして、技術が「製品」という形になったとしても、(全機器が対象ではないものの)今度は「申請(・承認)」業務が発生します。
たとえばCROやコンサルタント企業などが申請業務を代行するという形になるとしても、この2つの難関は、そう容易く踏み越えて行けるものではないのではないかという気がします。

というわけで、現状、飛躍的に「医療機器分野が成長する」という意見には・・・やや悲観的。
とはいえ、翻訳者として「参入」する価値は十分ある分野だと私は思います。
「これからは日英」という話も耳にしますが(先述の政府支援から出てきた話なのかな、情報の出所不明)、輸入超過という現状を見れば、まだまだ「英日」だけでも十分やっていけるのではないかとも思います。ただし、生き残っていくためには、今まで以上に、「各国規制を理解している」「工業分野の翻訳経験があり、解剖生理もきちんと理解している」といった付加価値を身に着ける努力が必要になってくるのかと思いますが。

「医薬品医療機器等法」と、改正薬事法の名称も別建てとなったように、今後、「医薬品と医療機器は分けよう」的な流れが進んで行くのではないかと思います(完全に分けることは不可能かと思いますが)。というわけで、今後は、「医薬品の翻訳も、医療機器の翻訳も」というやり方は難しくなってくるのではないかなという気がします。個人的には、やはり、免疫や薬理学の基本のキ程度は抑えておきたいかなと思っていますが(<野望は大きく)。

話が激しく逸れましたが、「医療機器開発のエッセンス」雑感ということでお許しくださいませ。
少しでも、どなたかの何かの参考になれば幸いです。

いかん、日付を跨いでしもうた。
2014.08.01 00:16 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(2) |

リスノさん、まいどです~。

そうなの、土曜日まる1日潰れますからね。毎週だと4週連続はちと辛いかなと。まあ、根性の問題かもしれませんが。リスノさんは、お嬢さんもいらっしゃいますものね。
他に参加したいセミナーや勉強会も出て来るかもしれませんし、申込みは1週間前までできますから、様子を見ながら1番身に着けたいものから1つずつ、というやり方もありかもしれません。

英語力や専門知識も、中には短時間で身に着けられる方もいらっしゃいますけれど、ワタクシなんか、20年近くちまちま、ちょっとずつ前進(希望的観測)のクチですから。リスノさんは、まだお若いのだし、気長に、でも寄り道せずに行けばダイジョブ。ワタクシの年になるまで、まだまだまだまだ時間があるよ。一緒に頑張って参りましょう。

2014.08.06 13:35 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

こんにちは(^_^)/ 遅くなりましたがこの記事も興味深く拝読しました。

なんとか都合をつけて通おうかなと一時は思っていたのですが、日が近づくにつれて他に用事や参加したいものなどが現れてきました。Sayoさんのおっしゃる通り来年以降にしようかなと思い始めています。

Sayoさんを始め、翻訳をしていらっしゃる方には語学力や専門知識の高い方が多くて圧倒されます。自分には難しすぎる世界なのかもと思うときもありますが、他に選択肢もないのでこの道でがんばります。これからも色々教えて下さい☆

2014.08.06 13:09 URL | リスノ #- [ 編集 ]













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