屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

参考にした資料&URL
「図解で学ぶ医療機器業界参入の必要知識」(じほう 2013年)
PMDAの該当ページ HOME URL
医療機器センター e-learning URL
MEDIC 医療機器開発支援ネットワーク HOME URL


こんなワタクシでも、「医療機器翻訳者です」と言うと、「今後成長が見込める分野ですか」的なことを尋ねられることがあります。

たいていは、「あくまでも個人的な感触」と断って、「ムック本などにもそのように書かれていますし、今後も健康や医療に対する関心が薄れることはないでしょうから、全体的な翻訳需要が大きく減ることはないと思います」と答えているのですが、今日は、ワタクシの分かる範囲で、も少し真面目に、「医療機器」という翻訳分野について考えてみたいと思います(とここまで書いただけで、真面目な書出しにすでにバテ気味<最後は尻すぼみになってしまいましたが、Figure Skate観戦の方も忙しいので、許してやっておくんなさい)。

流れとしては、「今後も堅調ちゃうか」 → 「和訳と英訳で、傾向的なものがあるねん<たぶん」 → 「政府が力を入れとるようやけど、今後の和訳と英訳はどんな感じやねん」を、あくまでも勝手にまとめてみました、という感じです。


生老病死はワタクシたちの大きな関心事ですから、それらに関わる医療分野の翻訳については、(医療分野内での変動、というのはあるかもしれませんが)ニーズの増加はあっても減少はないと思います。

翻訳対象として考える場合、医療分野は、大きく(&かなり乱暴に)製薬関連、医療機器関連の2種類に分けられます(今後、新たに再生医療が3本目の柱となる可能性がありますが、再生医療については、メディアや雑誌から得られる程度の一般的な知識しかありませんので、本記事では扱いません)。両方の分野をこなされる翻訳者の方もおられますが、ワタクシの知る限りでは、皆さん、優秀で情報アンテナの精度も高く、常に勉強を怠らない方々ばかりです。なので、両分野でそれなりに重宝される翻訳者を目指すのであれば、かなりの努力が必要になるかなと思います。


医薬品と医療機器の市場規模はどうなのか、と言いますと・・・

2010年のデータですが、世界市場における医薬品と医療機器の市場規模の比率は、8:2です。
ただし、「種類」という点から見れば、医療機器の種類の多様性は医薬品を大きく凌駕しています(30倍弱という資料もあり)。
 * 医療機器の市場環境については、MEDICさんのコチラのページが大要を掴みやすいかなと→
 http://www.med-device.jp/html/state/market-environment.html

こちらでは、国内市場は輸入超過になっていますが、ペースメーカ、人工関節、歯科インプラントなどの生体機能補助・代行機器は輸入超過、CTやMRIなどの画像診断システム、臨床化学検査機器などの医用検体検査機器は輸出超過です。前出の「図解で学ぶ医療機器業界参入の必要知識」には、後者(輸出超過分野)については、生産の7割近くを輸出していると書かれています。
翻訳対象として考えた場合、(あくまでも比較的、てことですが)輸入超過の製品群では、英日翻訳が多く、輸出超過の製品群では日英翻訳が多くなるかと思います。


さて。
翻訳という点からは、医療機器を政府承認を必要とするものとしないもの、の2種類に分けるのが分かりやすいかなと思います。
承認を必要とする医療機器では、日本国内では厚労省の承認が(審査業務はPMDAが代行)、米国ではFDA承認が必要で(欧州では、CEマークを取得し、適合宣言をすることにより、上市が可能となります<まだイマイチよく理解できていないので、ここはあまり突っ込まないでやってください)、そのために大量の資料の翻訳が発生します(と思われます)。

国内の市場についていえば、医療機器は、(おおむね)不具合が生じた場合の人体へのリスクに応じて、I~IVの4クラスに分かれていて、数字が大きくなるほどリスクが高く、たとえば、クラスIVの機器は、「患者への侵襲性が高く、不具合が生じた場合、生命の危険に直結するおそれがあるもの」と定義されます。クラスIII、IVの機器(改正後の医薬品医療機器法ではIIIの一部とIV)については、PMDAの審査/承認が必要となります。機器自体がどれだけ複雑であるかということよりも、人体とどのように接し、どれだけ血液や体液に触れ、どのような生体反応を惹起するか(しないか)の方が問題となります。

たとえば、医用検体検査機器である血球分析装置はクラスI、画像診断システムであるCTやMRIはクラスIIに分類され、ともに承認は不要ですが、人工関節、コンタクトレンズ、歯科インプラントなどはクラスIII、ペースメーカ、植込み型補助人工心臓、カテーテルやステント(III又はIV)、脳動脈瘤用クリップ、人工心臓弁(←「下町ロケット」後半はコレよ、コレ)などはクラスIVに分類され、承認が必要となります(改正法の下では、一部承認が不要となる可能性あり)。

クラス分類に興味のある方は、分類表をご覧ください(ただし、老眼には優しくない)→
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/24267/00165601/classlist.pdf
PMDA画面上でも、クラスを確認することができます(名称入力の必要あり)→
http://www.std.pmda.go.jp/stdDB/index_jmdn.html

補助人工心臓、ステントグラフト、人工関節等については、国内メーカ製造のものもありますが、輸入超過と述べたとおり、海外メーカのものがほとんどです。
ということで、ざっくり乱暴にまとめると、クラスIII、IVの(外資系企業)製品では、PMDA承認関連の英文資料の和訳案件が多く発生すると思われます。

では、画像診断システム等の海外輸出時に、FDA提出資料は発生しないのかといえば、必ずしもそうとは言えず、クラスII機器*については510k(市販前届)の提出が必要となります(ので、たぶんそれに伴う各種資料の英訳も)。
なので、日本製の大型医療機器については、おおむね510k用資料や膨大な量の使用説明書の英訳案件が多いのかなと、個人的には思っています。
これは、あくまでウエブページや紙版資料のみに基づく机上の類推で、実務は経験がありませんので、「ほおお、そんな感じかい」程度で流して頂ければありがたく存じます。

* 米国では医療機器はI~IIIの3種類に分類され、クラスI機器は510k免除、クラスII機器は510k届出、クラスIII機器は市販前承認申請要となります。510kは、ざっくり言えば、「米国で上市済みの同種製品と同等以上だよん」ということを証明する届です。

FDA画面上でも、クラスを確認することができます(名称入力の必要あり)→
https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpcd/classification.cfm


で、えーと、何でしたっけ。「今度の動向的な?」でしたね。

経済産業省は、輸入超過の現状に鑑み、日本メーカの優れたものづくり技術の医療機器分野への応用を勧める医工連携事業化推進事業を打ち出し、実際、一定の成果も出ているようです(経済産業省の政策に興味のある方は→
http://www.med-device.jp/html/state/policy.html)。

この動向自体は、医療機器翻訳者としてはありがたいものなのですが、高度管理医療機器(III&IV)では、精度はもちろんですが、それ以上に「生体と長期間接触させても悪させえへんで」ということがとても重要になりますので、個人的には、中小メーカや医療現場に(ここでは主に医師や研究者とお考えください)、医療機器という特殊な機器の開発製造、さらには、PMDAやFDAの承認申請についてのノウハウがあるヒトがどれだけおるんやろ、ということが不安ではあります。

外資系企業は、医療機器メーカとして大手の企業も多く、多くの場合、ひとつの企業が、循環器、整形外科、脳神経外科、医療用消耗品など複数の事業を展開しています。このため、承認申請も含めて「医療機器を開発・製造・販売する」ノウハウの蓄積も大きいのではないかと思います。
対して、国内企業は、大手メーカの一部門として「医療機器部門」が存在するというケースがほとんどです。技術力は高くとも、「医療機器製造」という点では、まだ外資系企業の後塵を拝する部分も多いのではないかなあと、素人は考えるわけです。そこに、新たに参入しようというのですから、医工連携の体制が整い、高度管理医療機器を「輸出超過」の状態に持って行くまでには、まだ暫く時間が掛かるのではないかと、個人的には思っています。


というわけで、英訳より和訳が好きなワタクシの個人的願望も含め、「当面現状維持」と今後の動向を占ってみました。
ただ、「当面」というのがどれほどの期間になるかはなんとも言えません。

ワタクシは、「もう和訳ひと筋で朽ち果ててもいいぜ」という年齢なので、希望としては、和訳者のまま朽ち果てたいですが、別に「特に英訳が嫌い」というわけではありませんので、一応、日々、脳細胞の老化を遅らせる意味もこめて、仕事以外の英語をインプットし、たまにアウトプットもして、有事(?)に備えています。ただ、もし、あと15歳若ければ、今後の業界の動向を考慮し、現在の「植込み型機器」(クラスIII又はIV)中心という状態を維持したまま、実際に英訳案件の比率をもう少し上げていく方法を模索したかもしれません。
2015.11.08 00:19 | 伝える | トラックバック(-) | コメント(0) |












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