屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

Working Stiff: Two Years, 262 Bodies, and the Making of a Medical Examiner

聴了。
Medical Examinerである著者のNY市のOffice of the Chief Medical Examiner (OCME)の2年間の体験を綴ったもの。

Amazonさんのレビューはかなり好意的。
http://www.amazon.com/Working-Stiff-Bodies-Medical-Examiner/dp/1476727252

Medical Examiner (Forensic pathologist)の職務については、英語ですが、以下の説明が一番分かりやすかった。
Overviewにあるように、遺体を検め、死因と死亡の種類(manner of death、自然死、不審死、事故死など)を特定します。
http://explorehealthcareers.org/en/career/129/forensic_pathologist

日本では、監察医がこれにあたるそうな。
検索するといくつかのサイトがヒットしますが、論文1件挙げときます。お好みで。
(「監察医制度」「諸外国の死因究明制度」の部分)
http://www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp/05/papers/v05part16(yoshida-tsujimura).pdf

「死因を究明する」という職務が医療ミステリーに馴染みやすいせいか、ロビン・クック、パトリシア・コーンウェルの著作など、シリーズ化されているものも多いようです。
本書はノンフィクション。

「聴き流し」的観点からは、解剖用語が「これでもかっ」と出てくるのでおススメ。
訳書を読みたいかどうかについては、かなりグロい描写もあるので、個人的にはビミョー。

最初の2分の1くらいは、時系列に一貫性がない部分が多く、各案件には興味深いものが多いものの、ややかったるい感も。

残り3分の1ほどになったところで、「2001年9月11日」に戻ります。

MelinekがOCME(NY)に勤務したのは、2001年7月~2003年夏までなので、ずっと、いつ「その日」が語られるのかと思いながら聴いていました。
「私も検屍に携わった同僚の人生もその日から変わった」的な表現がありましたので、特別な出来事として、最後に置かれたのでしょう(その後の炭疽菌事件、マンハッタン島沖旅客機墜落事件と併せて、かなりの頁数が割かれています)。
このあたりの描写は、グロいという意味でも、様々な点で胸に迫るものがあるという意味でも、たぶんワタクシは日本語では読めない。

ツインタワーの崩壊を知ったMelinekの上司が、集められる限りのMedical Examinersを集めて「今後暫くの間、遺体の身元を特定し家族の元に返すことが、我々の唯一の目的になる」と指示を出す場面があるのですが、ふと先日目にした、有名歯科医バンドのリーダーさんの3.11後の歯科医としての活動を扱ったインタビューが頭に浮かびました。状況や立場は違っても、受けた医学教育の内容が異なっても、有事に際しての対処や考えることは変わらないのだなあと。

解剖学用語の勉強にもなり、「その日」を思い出して色々考えさせられ(いちおー、その頃アメリカにおりましたんで)、Medical Examinerについて少しばかり調査をすることにもなり、なかなかに実り多い1冊でした。


* 本書は少し前に聴了していたのですが、どう攻めようかと考えあぐねているうちに3月に入ってしまい、予定より遅れての本日UPとなりました。
2016.03.09 22:32 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(0) |












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