屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

土曜日は関西女性翻訳者の会のセミナーでした。
案内に、「ツールの使用を無視することができない現状も考慮しながら、ツールのメリット・デメリットについてきちんと話します」(正確にはこのとおりの文言ではありませんが)と書かれていたのが、参加を決めた一番の理由です。
ワタクシはCATツールは使用しておらず、当面その予定もありませんが、それはそれとして、そうしたツールについてはある程度きちんと知っておきたいと思っていますし、しんハムさんが、様々なツールについて中立的な立場から語ってくださるとあっては、この機会逃すわけにはいかないではありませんか(そして修羅場るいつものパターンなのだった)。

4時間超のセミナーは、ざくっと3部構成です。

最初は、「翻訳支援ツールとは」というタイトルで、以下の特徴的なツールの要素について簡単な説明。
 ・プロジェクト管理
 ・ファイル変換
 ・翻訳メモリー
 ・用語ベース
 ・翻訳エディタ
 ・プレビュー
 ・品質管理
 ・クラウド機能

続いて、様々な支援ツールについての簡単な説明。
統合型翻訳支援ツール
 ・Trados Studio 2015
 ・MemoQ 2015
 ・Memosource 
 ・Felix
 ・OmegaT
 ・Open TM2
 ・対訳君(対訳登録が可能という点でここに分類)
その他の主な翻訳支援環境ツール
 ・Xbench、Wildlight、AutoHotKey、Simply Terms、Kwic Finderなど

最後に、主にTradosとMemoQを使ったデモ。

各種ツールの説明の中では、ツールを導入する前に考えるべき点(「自分」にとってメリットはあるか、支援ツールの存在が頭を使う作業の妨げにならないか、それによって本当に作業効率は上がるのか、総合的な時間単価は上がるのか下がるのかなど)、翻訳者にとっての翻訳メモリーのメリット(類似文を繰り返し全文翻訳する手間が省ける、既訳の再利用が可能、表記や用語の統一が可能など)、同じくデメリット(無理に既訳に合わせる必要が生じ、訳文の質の低下に繋がる可能性が高い、一貫性が必ずしも保証されないなど)、導入すべきかどうか最終決定する際に心に留めておくべき事柄(ツールの使用に向いた分野・案件であるか、導入しない場合自分はどうするのか、使用に際しては本来ある程度の技術的な知識・技術が必至であるなど)が語られました。
これは、他ではなかなか聞くことのできない話であると思います。


「今後もこうしたツールを使用する案件が増えるのは必至と思われ、また、個人個人のバックグラウンド、状況も千差万別であることも踏まえ、自分は、ツールの使用を否定するものでも肯定するものでもないけれど、ツールは道具/手段であるということをよく理解し、自分が使用する目的を明確にしてから使用することが大事で、まずは翻訳の実力ありきです」という、ツールを研究し使い倒して来られた方の言葉には重みがあります。また、「ツールを使用する場合も使用しない場合も、翻訳そのものに関係ない部分での効率化は大事だし、そこは大いにやるべきです」とも。そこは、ワタクシが、つい忘れがちになってしまう部分で、これからも気をつけないかんな~と思う部分でもあります。


ワタクシは「導入は考えていない」と書きましたけれど、よく考えてみれば、翻訳作業はツールと似たような手順でやっているんですよね。

PDF原稿のWord化(主にFineReaderを使用) → Word化した文書を整形(無駄な改行をなくす、訳出不要箇所を削除するなど) → Word文書の文字色を「数字や固有名詞のコピペは可能だが、パッと見た限りでは内容が目に入ってこないうすい色」に変更 → プリントアウトした原文を見ながら、だいたい段落毎に原文の上に訳文を作成 → 原文を消去した納品用原稿を作成 → Wildlightでチェック → 納品

という手順で、手元には必ず対訳のWord原稿を残すようにしていて、類似・継続案件(結構多いのよね)がきた時に参照します(これとは別に、作業しながら用語集追加も行っています)。自分の既訳を参照する、という点ではツールを使用されている方と同じかなと思うんですけど、前後の文脈も必ずラクに確認できる点が、ワタクシ的には気に入っています。ツールを使用しないのは、正直「この年になってメンドいわ~」というのもありますが、なんとなく「選択」は自分の手に残しておきたい、というのがあるのですよね。一括置換をすることもあるし、1つの文書の中で同一表現が出てくれば、前の部分を確認して(対訳で作業しているとこの部分は楽です)コピペして「うっしっしっ」と思うこともありますが、前後の部分も確認して「ホントにええんか、それ?」は自分で決めたい、みたいな。自分、よく考えないと、簡単に「引っ張られて」しまうんで。とはいえ、これはあくまでも個人的な考えでして、ワタクシの場合ってことです<念のため。

でも、医療機器翻訳の現状を見渡してみますと(トライアルの申込みはしなくても、いくつか目をつけたエージェントさんの募集要項を確認する、ということは定期的にやっています)、「ツール使用/所有経験あれば尚可」「ツール使用経験者優遇」「未経験でもツール所有者は応募可」みたいな募集が増えているのは確かなのですよね。こういう募集要項を目にすると、これから参入を考えている翻訳経験のない方が「とりあえずツールは使えるようになっておこう」と考えるのは無理ないよなあと思ってしまうわけです。

というわけで。
「使用しないけど聞きにきました」なワタクシとしては、隅っこで大人しく気配を殺してセミナーを受講させて頂くのがスジってもんなんですが、ついつい「(上記のような方に)アドバイスされることがあるとしたら、どのようなことをお話されますか」と鬼のような質問をしてしまいましたですよ。そして、「ツールを所持しているからぎりぎり受かるような翻訳力でその先やっていけますか、やっていきたいですか。実力があってこそのツールだと思うので、そこをよく考えてほしいです。状況が許すのであれば翻訳会社の「なかの翻訳者」として働いてみるのがよいと思います」というアドバイスを頂きました。講師先生、その節は本当に申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました。

色々お話を聞きながら、これから巣立って行かれる方にこそ、こういうセミナー聞いて頂きたいよな、としみじみ思ったSayoなのでした。
2016.06.19 17:42 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(0) |












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