屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

ある日の夜中、特にあてもなくTVリモコンの選局上下ボタンを押していると、「あの日」の光景に出くわした。

撮影者が走っているのだろう、カメラは激しく上下にぶれ、灰らしきものが厚く積もった路面を、窓の割れた車を、建物の壁を、くもった空を映し出す。
撮影者の激しい呼吸と「水はどこだ」という声が聞こえる。

場面が変わる。ひときわ高くそびえ立つビルが炎上している。旅客機が激突したツインタワー。1棟だけだ。南棟が崩落した直後と思われた。

・・・そうか、あれからもう15年経つのか。

何人かが記録した映像を編集したドキュメンタリーらしかった。

場面が変わる。大スクリーンに炎上する北棟が大きく映し出され(CNNのBreaking Newsのようだった) 、人々が見入っている。背広姿の男性たちが「目には目を」「すぐにアルカイダ攻撃を」と、マイクに向かってまくし立てる。女性の多くは泣いている。故意か偶然か、カメラは一瞬中東出身らしい風貌の男性の姿を捉えた。彼もまた大きなショックを受けているようだった。

また、別の場面。消防士たちが装備の点検をしている。撮影者(記者と思われる)の「どんな指示が」との質問には「言えない」と手を横に振った。カメラが、粛々とツインタワー方向に向かう消防士たちの後ろ姿を捉え続ける。その時点ではまだ「消火に当たれ」との指示があったのか。十数分後にはもう1棟のビルも崩落することなど、誰も考えていないに違いない。

10時28分、北棟が崩落する。

わたしは、その日、病院の予約があって朝から外出していたので、旅客機の激突もビルの崩落もリアルタイムでは見ていない。その後、何度もReplay映像を見たけれど、それは、やはり「メディアに切り取られた一部分」の映像だった。
ドキュメンタリーを見ながら、撮影者のカメラを通して、はじめて連続的な時間軸の中の出来事として、ビルの崩落を見たような気がする。思わず「Oh My God」と呟いていた。

撮影者のマイクも、たくさんの「Oh My God」を拾う。日本語では、文脈によってさまざまに訳される言葉だけれど、こういうときの「Oh My God」は、「何、これ」+「信じられない」+「神様(そこにいるなら助けて)」などいくつもの感情が混じったもののように思う。それだけの感情をひと言で表す日本語は、いくら考えても思い浮かばない。番組でも、いくつもの「Oh My God」が「何だ」「ひどいわ」など、さまざまな言葉に訳されていたと記憶している(←日本語訳はうろ覚えです)。

あたりは、枯草色の灰に覆われている。ところどころ色のついたものが散乱しているのは、紙類なのか、それとも、何か別のものなのか。
爆撃を受けたあと、というのはこういう状態なのかもしれない、とぼーっと考えていた。

カメラがパンする。灰の積もった路面から、割れたショーウィンドウへ、建物の壁面へ、空へ。弧を描くように。灰色の世界に少しずつ色が戻ってくる。そして、青空。そうだ、あの日は本当はとてもよい天気だった。カメラは、最後に、哀しくなるほど青い空を映して静止する。

場面が変わる。ハドソン川を渡るフェリーの上だ。乗客の肩越しに、カメラはマンハッタン島を映し出す。まだ、灰で霞んでいる。そこにツインタワーはもうない。クレジットが重なる。


途中からだったので40分ほどでしたが、息を詰めて見てしまいました。
番組は淡々とした作りで、個人的にはかえって好感が持てました(あくまで個人的な感想です)。
あれから今までを思い返してみると、「憎しみは憎しみを生み、終わりはない」ような気がします。理想論かもしれませんが、争いのない世の中がきてほしいと願わずにはおれません。

*ウチは地元のケーブルTVに加入しています。History CHの番組だったと思います。

過去記事を探してみたら、5年前にも記事を書いていました。
あれから10年・上
あれから10年・下

5年前もこのブログやっとったんか・・・

・・・年取ったな<自分
2016.09.09 19:23 | 分類不能 | トラックバック(-) | コメント(4) |

ヨシダヒロコさん、まいどです~。
コメントありがとうございます。
前例がないことでしたので(と思う)、やはり「自分はそのとき何をしていたか」を覚えている方、多いですね。向こうで習っていた英語の先生が、「年配者はケネディ暗殺の報に接したとき自分が何をしていたか覚えているだろう、もう少し若い者はジョン・レノン射殺の報に接したとき自分が何をしていたか覚えているだろう、若者は9.11の報に接したときに自分が何をしていたか忘れないだろう」的なことを言っていたのが印象的でした。
普段は忘れているんですけど、9.11が近づくと、その日のこととか、その後暫くぴりぴりしたり、その後の国の動向を目にして考えたりしたことを、色々思い出しますね。

2016.09.18 23:15 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

Sayoさん、こんにちは。

BSドキュメンタリーなどでもこの日が取り上げていなかったような。

わたしはちょうど家庭教師から車で帰ってきて、夜は映画を観ている親がTVにタワーを映し出していました。ビジュアルがとんでもないことになっていて、急いで当時有線入れてたまに聞いていたマンハッタンのWPLJを付けたら、ちょうど朝の、折り悪くリスナーの電話を取ってる時間になっていました。

プレゼンターが冷静に電話をさばいているのはすごかったですが(全部言葉は追えない)、中に「人が降ってくる、Oh my god、Oh my god」って言った人がいてしばらくどーんと落ち込みました。

その後の展開にも参りましたが、あとでGreen Dayが"American Idiot"を出してイラク戦争を批判していたことを知りました(グラミー受賞)。そのイラク戦争あたりの傷病軍人がパラリンピックに出ていた訳です。

2016.09.18 14:46 URL | ヨシダヒロコ #lMBqkpAs [ 編集 ]

めぐりさん、いらっしゃいませ、まいどです~。

ワタクシはやっぱり色々な記憶がまだ鮮明で、(それなのに)もう15年も経ったのかー、という感じでした。
この日はこのブログその他のHNの実際の持ち主(?)である伯母が亡くなった日でもあり、ワタクシにとってはやはり忘れられない日付です。

ワタクシも「Oh My God」は使いますが、God bless youは何となく使えないですね(近しい人にクリスチャンはいないですけど・・・あと、クシャミしたヒトにはbless you使ってましたが・・・)

ただ、人によるのかもしれないと思いますが、米国の方も、特に「Oh My God」の方は、あまり神を意識せずに使ってらっしゃった方も多いような気がします。異なる抑揚、速度、ジェスチャー付きで、本当に様々なシチュエーションで使われていました。ある意味、便利な言葉ですよね。

>Sayoさんの書かれる文章、好きです(いきなりの告白)。

おお、なんか恥ずかしいですが、ありがとうございます。めぐりさんの文章も、なんでしょう、不思議な魅力ありますね。お写真も(ワタクシは個人的には野うさLOVEですが)。

屋根裏では、おおむね、「です、ます」のときは気軽に、「ですます」+「ワタクシ(カタカナ遣い)」のときはどこかで自分に突っ込む気満々で(つまり、もっと気軽)書いてます。「である」調は、文章を書くことや構成を多少意識する、または自分をもっと突き放したいときなんかに使っています(というか、自然とそうなるんですよね)。

「書く」ことは勉強になる、とか、違う側面から翻訳をみることができる、とかよく言われますが、ワタクシの場合は、ただただ「何か書きたい」という気持ちが先にあって、ことばや文や文章を意識し始めたのは最近です。なので、本当は、もっと頻繁に「何か目的をもって」書くのがいいのかも(たぶん、これからも、おおむね気軽に書くと思いますが)。

ただ、このドキュメンタリーは、記憶が鮮明なうちに文字にしておきたくて、ジツは翌日直ぐに記事にしました。
最近、翻訳も「英語で読んで正しく頭の中に思い浮かべる」→「日本語で同じ内容を書く」ということかなと思うようになりましたので、これも、訓練っちゃ訓練かも。ただ、クライアントさんによって、文章の好みもあるようですし、文書の性質もありますし、さじ加減難しいです。「まあ、これでいいや」と納期様の前にひれ伏すこともありますし。

これからも、どうぞ遠慮なく読み逃げしてくださいませ。ワタクシもこっそり読み逃げさせて頂いてますので。

2016.09.10 17:18 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

Sayoさん、こんばんは!

そうか、15年前なんですね。私としてはもっと前のような気がして、今ちょっと頭が混乱しています。もう一回「自分史」との整合をとらないと。

当時の夜のことは今でも覚えています。テレビに映し出される様子、刻一刻と変わる状況を固唾をのんで見ていました。まさに「Oh My God」でしたね。

本当にこの「Oh My God」というフレーズは、日本語では表しきれません。「God」関連の表現は全部そうですね。

身内にクリスチャンがいるので、無宗教を信条としている自分が安易に使うのがなんとなく憚られて、「Oh My God」という表現、自分自身は使えなくなってしまいました。同じ理由で、十字架モチーフのアクセサリーなんかもなんとなく着けられません。

FBでも海外の人からあいさつ代わりに「God Bless You」とか言われますが、これもなんて返していいかわからないんですよね。結局いつも無難な表現で返していますが、もどかしいです。(^_^;)

Sayoさんの書かれる文章、好きです(いきなりの告白)。
私はそのドキュメンタリーを見ていませんが、どんな番組だったのか、映像込み、フルカラーで脳内再生されました。

過去記事も少しずつ拝見していてコメントしようとするんですが、Sayoさんの書かれる文章を読むと脳がなにやら活性化されるようで考えがまとまらず、結局さわやかで前向きな気持ちをもらってそっと読み逃げしています。
(○´ω`○)ゞエヘヘ

私もSayoさんのようにブログを長く続けられるようにしたいです。

2016.09.10 02:04 URL | めぐり #- [ 編集 ]













管理者にだけ表示