屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

今日は100%真面目な記事です。どこにもオチはありませんので(たぶん)、悪しからずご了承ください。

...主に、山中伸弥先生の講演内容についてです。
...でもって、「できるだけ忠実に報告」を心掛けましたが、感想部分はかなり主観が入っています。また、一部、ウェブや書籍で確認した内容(薬、HLA、疾患の説明など)を、拝聴した内容と異なる文言で記載している場合もあります。ご容赦くださいませ(それ以外で話された内容と異なる記載はしていないつもりです)。



日本では初開催となるサミットの公開シンポジウム(京都)に参加してきました。
内容はコチラ。iPS研究所の山中伸弥先生が講演なさるという。これはもう、行かねばなるまい。

薬事規制当局によるものとはいえ、一応国際的なサミットということもあるのでしょう、サミット自体はClosed Meetingで行われ、サミットが閉幕した翌日に、サミットの概要を速報するという形で、シンポジウムが行われたものです(と理解しています)。サミットで話し合われた内容を戦略的に実施する組織としてICMRAがあり、来年からは、ICMRA-Summit(名称はこのとおりではない可能性が高いです)として統合して開催されるとのこと。
(ICMRAについては、PMDAに若干の説明があります。そちらからICMRAサイトに跳ぶこともできます)
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/icmra/0001.html

各国薬事規制当局の合意内容や、今後の方向性について、もう少し具体的な話が聞けるかなと思ったのですが、(ワタクシの頭がついていかなかったということも大きいとは思うのですが)、大枠の話と目標に終始しているような印象でした。まあ、サミットの翌日だし、それはそれでしょうがないのかも。

山中先生が、現状こういう問題点がある → その問題を打破するためにこういう方法を試みた → こういう成果があったが、まだこういう問題がある → その問題を打破するためにこういう試みを行い今ここ、という分かりやすい具体的なお話をされたあとでしたので、余計そのように感じたということもあるかもしれません。

とはいえ、各国規制当局の今後の取組みについて話を聞く機会など、そうそうないでしょうから、出席してよかったと思っています。
お天気にも恵まれて、京都会館前の庭園はとても美しかったですし(<そこか<自分)
一見座り心地のよい椅子はジツは腰にはあまり優しくなく、腰が異議を唱えたため、最後のパネルディスカッションの前に退出しました。


で、まあ、ワタクシ的には、この日のメインの目的は山中先生の講演だったわけです。

この日、先生は、交通渋滞に巻き込まれて遅れて到着され、そのために発表の順番が前後してしまったのですが、冒頭で「行楽シーズンであることを失念していました」というようなお詫びの言葉を述べられ、「全然偉ぶったところのない方だな」と思いました。そういえば、ノーベル賞を受賞された方でしたね、と逆に思い出す始末です。

上でも書きましたが、先生の講演は理路整然としていて分かりやすく、同時に仕事に対する責任感や静かな情熱も感じられ、45分という時間があっという間でした。当日一番発表時間が長かったにもかかわらず、資料(PPT)の枚数は一番少なかったのではないかと思います(数えた訳ではありませんので、お得意の「体感」ですが)。持帰り用のPPT資料が用意されない場での資料の効果的な使用、ということについても少し考えさせられました。以下、山中先生の講演内容です。


「iPS細胞の研究と応用」(山中伸弥)

この日は、まずご自分のお父様のご病気(C型肝炎)のことから話を始められました。
この肝炎ウィルスが発見されたのは1989年(先生のお父様はそれよりずっと前に輸血で感染されています)、画期的な特効薬と言われるハーボニーが米国で承認されたのは2014年(その後日本でも承認)です。1錠/日を3ヵ月程度服用すると、ほぼ100%の患者の体内からウィルスが消失するそうです。

ここで、先生は、ウィルス発見から新薬承認まで時間がかかりすぎていること、コストが高すぎる(1錠およそ5万5000円!)ことの2点を、問題として指摘され、「いかに早くのみならず、いかにコストを下げられるかを研究段階から意識するのが研究者の責任」と仰います。

この2点の問題に対処できるもののひとつが、先生の研究されているiPS細胞です。

***
iPS細胞について詳しく知りたい方は、CiRA(Center for iPS Cell Research and Application)のコチラのページが分かりやすいと思います。
こんがらがりがちなES細胞とiPS細胞の違いについても、分かりやすくまとめられています。
(この部分はSayoが勝手に挿入した、講演とは無関係の部分です)
***

iPS細胞やES細胞は、高い増殖能を有しており、ほぼ無限に増やすことができ、増やしたあとで分化させることも可能です。この性質を再生医療や創薬に応用できないか(どのように応用できるか)というのが、先生の研究の内容です。再生医療の方は、すでに臨床応用が始まっていて、理研の高橋政代先生が、加齢黄斑変性の患者に、自己iPS細胞由来のシートを移植する手術をなさっています。3年が経過した今年3月、1例目の患者の状態が、癌化も免疫低下もなく良好に推移しているという結果が発表されたそうです。

ただ、この研究を進めるなかで、自家移植(患者自身の細胞から作製したiPS細胞の移植)は準備に時間がかかり、患者単位のコストも膨大であるという問題点が明らかになったそう。

この問題を克服する方法として、現在、先生が所属するCiRAが取り組んでいるのがiPS細胞をストックするというプロジェクト。免疫反応は、平たくいえば(<ワタクシも詳しいことは分かっていない)、患者とドナーのHLA型が一致しないために起こるわけなんですが、非血縁者でこのHLA型が一致する確率は非常に低い。ただ、HLAホモ接合体は、HLAヘテロ接合体より一致する可能性が高い。だから、このHLAホモのドナーに細胞を提供してもらってiPS細胞を作製し、安全を確認して保存し、必要に応じて医療・研究機関に提供していこう、というのがこのプロジェクトの骨子です(あくまでワタクシの理解したところです)。

そのためのスクリーニングに必要なボランティアも費用も現実的ではないため(全人口の90%をカバーするためには、10億人のボランティアと数十億円の費用が必要なのだとか)、日赤の協力を得て、倫理的に問題のない方法でドナー探しをしているそうです。具体的に何個のiPS細胞がどの状態まで進んでいて、いくつの機関に配布しているというような具体的な数字も挙げられていました。

このようにして進められているiPS細胞ストックプロジェクトですが、やはりそこにも問題はあるそう。ひとつは、ドナーのRecruitmentで、今後はどうしても国際間の協力が必要になってくるとのことでした。もうひとつは、やはりコストの問題。いずれの場合も、国毎の規制が大きな壁となっているということを、やんわりと、でもはっきり仰っていました。

さて、もうひとつの応用分野である「創薬」ですが、iPS細胞は、薬に付きものの神経毒性その他の毒性がまずないことから、再生医療以上に守備範囲が広いそうです。さまざまな分野で研究が進められていますが、特に、患者が少なく研究さえ進めてもらえない難病への対応が期待されています。

たとえば、FOP(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva:進行性骨化性線維異形成症)。これは、筋肉や腱などに骨組織ができてしまうという難病なのですが、iPS細胞を用いて、原因物質を特定し、ラパマイシンという既存の薬剤が骨化の抑制に有効であることを確認することができたそうです(蛇足ですが、ラパマイシンは薬剤溶出型ステントに用いられることも多いため、個人的に割りとお馴染みの薬剤です)。

マウス実験で効果が確認され、先月から、ラパマイシンと偽薬を用いた臨床試験が開始されたとか。効果が確認されれば、半年後からは全例にラパマイシンが投与されるそうです。あるFOP患者の方の特集をTVで見たことがありますが、彼もこの薬の恩恵を受けてほしいと願わずにはいられません(臨床試験には参加しているそうです)。

企業とコラボする形の研究も進んでおり、今後、協力を求める機会も増えると思いますが、協力を宜しくお願いしますという言葉で、先生は講演を締めくくられました。

決して情熱的に語られる訳ではありませんが、逆に「研究者としてどうしてもやらなければ」という秘めた情熱のようなものが感じられ、最後はうるうるしてしまったのでした。

以上、記憶が新しいうちにと、記事にしました。
「行きたいけど行けなかった」方たちにも伝わるものが何かあれば嬉しいです。
2017.10.28 18:11 | 翻訳祭・フォーラムetc.報告(2016-) | トラックバック(-) | コメント(7) |

Sayoさん、はい、あまり表で書けない話だったのでこれきりにするつもりでいました。わたしは脱線の名人なのでいつもすいません。

2017.11.03 23:40 URL | ヨシダヒロコ #lMBqkpAs [ 編集 ]

ヨシダヒロコさん、
そのような事情があったのですね。大変でしたね。

本文の内容とはあまり関係なくなってきているようにも感じられ、正直、コメントの文言に悩みます。
申し訳ないですが、この流れの話はここまでとしていただけるとありがたいです。

2017.11.03 21:55 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

Sayoさん、高岡市の方は主催者が個人だったようです。ちょっと面倒がありました。掲載に当たって毎回担当者をつかまえて許可は取りますが、画像関係は気を使います。今もそれで前に進んでない話があります。

2017.11.03 13:50 URL | ヨシダヒロコ #lMBqkpAs [ 編集 ]

ヨシダヒロコさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

規制当局サミットの内容の方は、大枠の大枠(?)以外は正直よく分かりませんでした。

サミットがClosed Meetingだったというのが一番大きいと思いますが、主催者側は「撮影・録音禁止」を何度も呼び掛けていました。それでも、一般参加者の中にもスマホで撮影している人がいましたけど(実行委員会企業で、主催者の許可を得ていたのかもしれませんが<席が前の方でしたので)

山中先生はお話がお上手ですね。情熱も感じられるし。
もっと具体的な数字をたくさん挙げられていましたが、ネットやCiRAで確認できた以外のものは省きました。
ブログ報告など特に制限はなかったように記憶していますが、やはり気を遣いますね。

2017.11.03 13:29 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

こんばんは。

規制については疎いのですが…

山中先生のほぼ同じ内容と思われる講演聞きました。夏に高岡市であったのですが、主催者の意向でブログ記事にすることができませんでした(許可を取らずに写真や怪しげなブログを書いている人はいたのに……)。FOPも研究者ご当人からお話がありました。

その前日にあった、金沢の研究者グループとCiRAのサイエンスカフェは、文章をCiRA国際広報部の方に添削してもらって公開しています。よかったらブログ上から検索してみてください。

先月末にも金沢でアートと絡めたサイエンスカフェがあったのですが、残念ながら行けませんでした。

2017.11.03 01:55 URL | ヨシダヒロコ #lMBqkpAs [ 編集 ]

リスノさん、まいどです~。

こちらこそ、見つけてくださってありがとうございました!
おかげで昼食時間も楽しく過ごすことができました。

山中先生の講演、ホントによかったですよね。
機会があれば、またお聴きしたいと思いました。

2017.10.30 18:21 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

当日はお疲れさまでした。多数参加者がいる中でお会いできてよかったです。

ブログのリンクをありがとうございますm(__)m
私もリンクさせていただきました。どうぞこれからもよろしくお願いします!

2017.10.30 16:14 URL | リスノ #- [ 編集 ]













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