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屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

セミナーのタイトルは「脱・辞書の持ち腐れ《60Hz》~どの辞書をいつ引くか~」。
講師は、翻訳フォーラムのメンバーであるF井さんとT橋(あ)さんです。
《60Hz》とあるのは、少し前に、東京で「脱・辞書の持ち腐れ《50Hz》」と題された同様の内容のセミナーが開催されたためで、関西セミナー開催前に「できればやってみてね」と、《50Hz》と同じ課題が送られてきました。

JTFセミナーのサイトの概要には、
「翻訳者と辞書は切っても切れない関係だ。優れた辞書を複数手元において、頻繁に参照することは、とても大切である。一方、辞書は数を揃えればいいというものでもない。上手に使ってこそ、辞書が生きてくる。本セミナーではまず、どの分野の翻訳者も必ず持っていたい辞書は何か、どのようなプラットフォームで揃えるのが良いかといった、辞書の基礎情報について簡単に説明する。さらに、『いつ』『どの辞書を』『どの単語で』『どのようにして』引くかを、実例を出しながら解説し、『紙辞書』『電子辞書』『CD-ROM辞書』『アプリ辞書』『オンライン辞書』等、さまざまな辞書環境を組み合わせた調べ方についての情報を提供する」
とあります。

この「実例」というのが、土壇場になって「やってみてね」と送られてきた課題です。セミナーでは、《50Hz》で参加者(すべて匿名)が、その辞書(又はプラットフォーム)でどの単語(フレーズ)を引き、どのようにして訳文に辿り着いたかというプロセスを表にまとめた資料が配られました。さらに、T橋(あ)さんの手になる「翻訳者が使う定番辞書一覧」と「EBWin4マニュアル」も配られ、とどめに、本日、参加者限定DL資料として、当日のPPT資料が送られてきました(課題が増えとるーーー)。個人的には、これだけでも、元を取ってあまりあるセミナーだったと思います。


さて。
私が翻訳の勉強を始めた1990年代にはすでに、「辞書はお金で買える実力」という言葉がありました。
確かに、辞書は、揃えないより揃えた方がいいに決まっていると思うのですが、「手元にある」「串刺し検索できるように設定している」ことで安心してはいないか、各辞書が持つそれぞれの長所を活かす形できちんと辞書が引けているか、辞書引きの結果をどのように翻訳と結びつければいいか、といったことが、今回のセミナーの主眼であったように思います。
お二人の言葉を借りれば、「辞書の形態が多様化し『とりあえずこれを揃えれば』と言い切ることが難しくなった」現代にあっては、翻訳者一人一人が、それぞれの辞書の特徴をよく把握し、自分の仕事の分野やPC/辞書環境に適した辞書を選び最適の使い方をよく考えることが、これまでにも増して重要になってきているような気がします(といいながら、全然できとらんけど)。

というわけで、セミナーでは、まずF井さんから、辞書の種類、良い辞書か否かを判断する際の大きな決め手、辞書の形態と各形態のメリット・デメリットなどについて説明がありました。
ここで、いったん、T橋(あ)さんにバトンタッチ。これからどのように辞書環境を整えていけばよいかという話になります。現状、ひとつの辞書環境(辞書ブラウザなど)で辞書を揃えるのは難しく、複数の環境をできるだけ使いやすくして使う方法がベストではないかとのことです。そうした辞書ブラウザのひとつであるEBWin4や、アプリをPCから引けるようにする方法などの紹介がありました。続いて、課題(実例)1の解説。成句検索の極意(?)が伝授されます。

ここで、再びF井さんにバトンタッチし、「何のために、いつ、どの辞書を引くか」という話から、課題2の解説へと入ります。まず、翻訳の目標として、「原文を読んだ人と訳文を読んだ人が思い浮かべる絵が同じになること」が挙げられます(フォーラムや関連記事・図書などではお馴染みの言葉なのですが、個人的には、フォーラムの方であるなしに関わらず、大先輩方は、表現する言葉はそれぞれ違えど、ざっくりまとめると同じことを言っておられるような気がします)。そうするための翻訳手順として、原文の意味を正しく把握 → 辞書引きのけっかに基づき、使えそうな訳語の候補をいくつも上げる → 最終的に原文の意味に最も一致する語を選ぶ、というやり方を、課題に即して説明してくださいました。

課題3は再びT橋(あ)さん。簡単な語句ほど辞書引きが難しいことの実例です。「この語は分かっている」と思ってスルーすることの危険性を、辞書の訳例を示しながら説明していただきました(ジツは、ワタクシも「結果的に解釈は合っていたが、辞書引きはスルーした」ヤツの一人です)。「辞書は、単語を引いてそこにある訳語を用いて訳すのではなく、用例まで読んで語義を掴み、それを訳語に反映するために使うもの」と強調されました。DL資料をお持ちの方は51ページあたりです。

最後の課題はF井さん。スピーチが題材だったのですが、どんな人物なのかを調べるのに加え、その人物の(可能であればスピーチそのものの)動画があればそれも視聴し、口調や強調されている部分を確認することも重要と説かれました。普段の仕事ではそこまで考えて翻訳に臨むことはほとんどないのですが、「大事そうな部分は大事そうに、寒いジョークは寒く訳す」という言葉が心に残りました。それが「思い浮かべる絵を同じにする」ことになるのだなと。
F井さんが仰った「辞書は知っている言葉の確認に使うもの、使ったことのない言葉は使えない(だから普段から言換えの訓練をして知っている言葉を増やしている)」という言葉は、T橋(あ)さんの「(辞書は)用例まで読んで語義を掴み、それを訳語に反映するために使うもの」と相通じるものだと思います。

ということで、まとめると、「何のために辞書を使うのか」をきちんと理解し、「そのために、自分の辞書環境には何が足りないのか」を把握して必要な部分を強化し、「最適なやり方で辞書を引く」ことが大切、ということになりましょうか。ありきたりのまとめでスイマセン。
あと、自分に欠けているのは「『!』と思ったら辞書を引く」という基本姿勢なのではないかという気がしました。使える言葉を増やすためにも、そこはこれからもっと心掛けていかねばならんと心に誓ったのでした(問題は、いつまで誓いを覚えているかなんですが)。
2018.03.06 23:31 | 翻訳祭・フォーラムetc.報告(2016-) | トラックバック(-) | コメント(4) |

nestさま、コメントありがとうございます~。
今回も、濃い内容のセミナーをありがとうございました! まだ追加課題まで手が回りませんが、とりあえず駆け足で復習しました。
レポを書こうと思うと、どうしても資料を見ながら復習することになるので、自分のために書いているようなものでもあります。

お話を聞いていると、「あの辞書も」「この辞書も」と、ついついAmazonのボタンに手が伸びてしまいそうになるのですが、自分はまず「気になったら調べる習慣をつける」ことからかなと、今更ですが、スマホでさくっとgoo辞書やJKやOneLookを見に行けるようにしました(やっとらんかったんかーい、というお叱りを受けそうですが、まだ使いこなせていないので)。そうして「知っている言葉」を増やしながら、それらをPC上で引きやすくする環境を、もう少しよく考えてみようと思います。

2018.03.07 20:28 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

いつもながら、素晴らしいレポートをありがとうございます。もうもうもう、嬉しい。

「『!』と思ったら辞書を引く」はやっぱり大事です。子供の頃は居間に国語辞典と地図帳と百科事典が用意されていて、なんでも気になったことは自分ですぐに調べるという癖がつきました。今は、連れ合いが同業者ということもあり、ご飯中でもテレビを見ているときでも「!」と思ったらふたりともすぐスマホやPCに手が伸びます(普通のおうちでは、お行儀悪いと言われるところかも)。結局、辞書環境づくりというのは、「!」のときにもたつかないで済むように、調べやすい環境を作るということですね。

2018.03.07 19:57 URL | nest #MMIYU.WA [ 編集 ]

リスノさん、まいどです~。
一日外出していたので、コメント遅くなりました。

おお、残念でしたね。でも、確か、申し込んでいたら資料は全部貰えますよね?(私も、以前行けなくなったときに、あとから送って頂いたことがあるような...)
DL資料が、ほぼお二人が話された内容に相当しますので、時間のあるときに確認してくださいね。
私も、SII辞書が壊れて修理もきかなくなったらどうしよー、といつもドキドキしています。まずは、対訳君、EBWin、Logovistaに全移行ですかね。
自分の場合、とりあえず、「『?』と思ったことはすぐスマホ」の習慣をつけようと思います。

2018.03.07 18:09 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

申し込んだのに行けなかったのでとてもありがたい記事です!詳しい様子をアップしていただき感謝です。Dayfilerが死んじゃったらiPadを買ってアプリ辞書を使ってみようかなと妄想しています。

2018.03.07 05:58 URL | リスノ #- [ 編集 ]













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