屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。


シンポジウムの感想(というか一番心に残っていること)は人それぞれだと思うんです。
どんな分野の翻訳をしているかはもちろん、翻訳の道程のどこにいるか(学習中なのか、仕事を始めて日が浅いのか、ある程度経験を積んだのか)によっても、今抱えている悩みによっても違うと思います。

今、少し時間を置いて思い返してみると、一番最初に思い浮かぶのは、I口さんの自動運転訳(「自動運転」でここまでいくんやな、タメイキ...みたいな感じ)、そして、サブカル発表中のT橋あさんの幸せそうなお顔(...が思い浮かぶのがちとナゾ)、それからトレーシングペーパー(←これは自分でも割りと納得)です。

そのとき自分の心に響いたことを大切なこととして取り込むのは正しいと思う。それは、自分を感動させたものであり、そこから得るものは果てしなく大きいものに違いないから。

それでも、自分が「一番感動したこと」を切り取らず、すべてをレポートするのは、「行けなかった人にも伝えたい」という気持ちのほかに、「シンポジウムのストーリーを伝えたい」という気持ちがあるからのような気がします。一つのテーマに沿って、何名もの方が入れ替わり発表する翻訳フォーラムのシンポジウム。「なぜその順番なのか」ということがきっとあると思うんです。

「文の構造、段落の構造」では、きれつづきは翻訳にとってどういう意味があるのかという概論(T橋ささん)と、概論が聴講者の頭の中に染み込みやすくしてくれる具体例(T橋あさん、I口さん)。
「2018年辞書最新情報」は、海野さんの辞書の紹介という大事な場ではありましたが、若干リラックスして聞くことができましたので、第1講のクールダウンも兼ねていたような気がします。
きれつづきについて、皆何となく分かってきたなというところで、「パンクチュエーション101」(F井さん)で、英語の(きれつづきに関連する)記号をどう読みどう訳すかについての講義。
続く「今こそ学ぶ!先達の翻訳論」(H野さん)は、きれつづきと直接関係はないようにも感じますが、最後に、(きれつづきも含めて)「原文の絵と訳文の絵を一致させる」という翻訳フォーラムの提唱は先達の延長線上にあるものともいえる、というところに着地します。
「ヲタクじゃないけどサブカル講座」(T橋あさん)は、実用的で楽しい息抜きとも言えるかもしれません。
「コヒージョンを考える」(S復さん)は、結束性という少し違った観点からきれつづきを考えるものでした。
そして最後の「さようならブチブチ文~文章の『きれつづき』」(T橋ささん)は、具体例も含めた壮大なまとめで、最終的に「なぜ翻訳にとってきれつづきが大事なのか」というところに帰結したような気がします。

これが、私が考え抜いた末に「こうじゃないか」と辿り着いたシンポジウムのストーリーです。
もちろん間違っている可能性は大ですが、講義の中で、I口さんも「考えた上での失敗は次につながる」と仰ってくださっています(文脈全然違うけどな)。

こんな風に「ストーリーを考える」という作業は、翻訳に似ていないでしょうか。
原文の書き手が「こう伝えたい」ということがあるとすれば、セミナーやシンポジウムにも「こう伝えたい(こう伝えるのが一番よく伝わる)」というストーリーがあると思うのです。少なくとも、きちんとした目的を持つよく練られたセミナーやシンポジウムであれば。
であれば、「すごいセミナーを受けた」と思った場合は、受け手も、ストーリーごと内容を受け取る努力をするべきなのではないかというのが、最近の私の考えです。
たとえ、具体例が満載の内容であったとしても、「その人は『なぜ』その話をするのか」を考えることが深い理解につながるのではないかと思っています。
(それを自分の仕事に反映させられないところが、Sayoの限界なのだった)

白状しますと、今回、一番まとめに難儀したのは「今こそ学ぶ!先達の翻訳論」でした。決してH野さんの発表が分かりにくかったということではありません。そこは誤解のないようにお願いします。
それでも、なんとかまとめることができたのは、途中までとはいえ柳父章さんの著書を読んでいたからだと思います。
ただ、メモがかなり乱れていて、「柳父さんの提唱内容」「山岡さんの提唱内容」「H野さんの考えたこと」をきちんと切り分けることが困難でした。というわけで、難儀したのは、ひとえに私の理解力の不足とメモ取り失敗によるものです。

というわけで、この発表についていろいろ調べる中で行き当たったのが、山岡洋一さんの「翻訳の過去・現在・未来」という文章です。
以前にもざっと読んだことがあるのですが、そのときの私には今以上に力がなかったようで、記憶からも抜け落ちていました。
今回は、しみじみと読みましたので、最後に紹介しておきます。
http://honyaku-tsushin.net/ron/bn/kakogenzai.html

シンポジウムのレポートはこれが最後です。
読んでくださった皆さま、ありがとうございました。

2018.05.31 15:52 | 翻訳祭・フォーラムetc.報告(2016-) | トラックバック(-) | コメント(2) |

Nestさん、まいどです~。

ああ、この流れで間違いなかったですか! よかった~。
流れの中で考えると、個々の講義の内容や役割も、単体で考えたときより「すとんとふに落ち」やすくなりますよね。まるできれつづきそのものではないですか。狙っておられましたね。

こちらこそ、難しい、でも必要なテーマでのシンポジウム、ありがとうございました!

2018.06.01 00:51 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

Sayoさん、構成会議、こっそり見てたでしょう?(笑)

もう、ここまで読み解いていただけたら、プロデューサー冥利に尽きます。一生懸命やった甲斐があるというものです。ほんとうに、ほんとうにありがとうございます。

2018.05.31 23:55 URL | Nest #MMIYU.WA [ 編集 ]













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