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屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。


挿入や情報追加のために用いられる、いわゆるem dash(—)ですが、普段の英日の仕事でコイツに遭遇することはまずありません。勉強会の課題を別とすれば、数年前に受講した通信講座の課題くらいでしょうか。その頃、私は、ダッシュを含めたパンクチュエーションに対してかなり無頓着でした。参考書を片手にダッシュやセミコロンなどの使われ方を確認するくらいのことはしましたが、ダッシュは、訳文ではそのまま2倍ダーシにしていることが多かったような気がします。

勉強会を始めたばかりの頃、ダーシ使い(笑)の私は、管理人さんから散々突っ込まれました。ダーシのあとに句点を打った部分(「――、」)などは「そもそも見映えが悪い」と酷評されたものです。けれど、そのうち、管理人さんは「なぜそこでダッシュが使われているのか、どういう訳文ならそれを一番よく表現できるか、機械的にダーシを使う前に、まずそれを考えよう」と仰っているのだということが分かってきます(そして、蛇足ですが、特に縦書きでは、確かに「――、」や行頭行末のダーシが、思っていた以上に目立ってしまうことが多いように感じます)。

というわけで、思い立って、英語の参考書ではダッシュ(em dash)がどのように説明されているか確認してみました。

まず、取っつきやすい日本語の参考書から。

●「英語ライティングルールブック 第2版」(デイヴィッド・セイン著、2011年第2版第1刷、DHC)

「文中で補足的な説明を挿入したり、具体例を列挙したものを挿入したりする場合」(p219)や「前の文に対して、要点を述べたり補足説明をする場合、また言いかえたり訂正したりする場合」(p220)にダッシュを使用すると書かれています。さらに、「省略符号のように、ためらいを示すときなど文末にダッシュをおいて文の終わりを濁すように省略することがある(中略)ビジネスなどの正式な文書では使われない」(p220)

次は、翻訳フォーラムのレッスンでも紹介された参考書。

● 「Easy Learning Grammar & Pundtuation」(2015、Collins)

挿入や補足説明などの意味で使用されるダッシュが次のように説明されています(p311)。

- At the beginning and end of a comment that interrupts the flow of a sentence
- To separate off extra information
上が文中、下が文末で用いられる場合。個人的には少し言葉が足りないように感じます。
ちなみに、本書では、em dashとen dashをひとまとめにして説明していて(上の説明はem dashのもの)、em dashは「スペース+en dash +スペース」と記されていますが、こういう表記の方法も間違いではないようです。

では、私の好物のESL学習者対象の参考書の記述はどうなっているのか。

● 「The Ready Reference Handbook」(Jack Dodds、1997、Allyn and Bacon、絶版) pp250-251

1. Indicating an emphatic change in thought or feeling
2. Setting off parenthetical material—Use a pair of dashes to set off and emphasize parenthetical material.
3. Displaying lists—Use a dash to introduce a list or to connect a list to the main part of the sentence.
(このあとの説明は、やや詳細にすぎるきらいがあり、挿入や補足説明の意味で用いられているものに絞って記載しました。)

最後はThe Puncuation Guideというウェブサイト。今回em dashについて調べていてたまたま発見したのですが、その名のとおり、全編、いや全ページ、パンクチュエーションの説明。
em dashの説明:https://www.thepunctuationguide.com/em-dash.html

About meを見るかぎり、作成者は著明な研究者という訳ではなさそうなのですが、参考書籍・論文の数がハンパなく、この方の説明は十分参考にできるのではないかと思っています。
参考文献:https://www.thepunctuationguide.com/about-this-guide.html

説明は上記のページを見て頂くとして…このサイトの説明が他と大きく異なるのは、「カンマとの違い」「括弧との違い」という形でダッシュが説明されていること。若干物足りない感もありますが、和訳に際しては、この違いの説明も、訳文をつくるさいの手掛かりにできるかもしれません。

どれかひとつの参考書を確認するのではなく、たとえば、「英語ライティングルールブック」と英文の参考書1冊などのように複数図書(ORウェブサイト)を確認するのがいいのかなと思います。


こうしたことを頭に入れた上で、文脈と相談しながらダーシを使わない訳し方を考えるのは、しんどいけれどなかなか楽しい(それを上手く訳文で表現できないところが、なんとももどかしくも悔しくも情けなくもあるSayoです)。そうやって悩んだ結果、やっぱりダーシになることもあります。個人的には、普段の文章でそこそこダーシを使うので、ダーシを用いた日本語の文章にあまり抵抗はありません。でも、だからこそ今は、ダーシを極力使わない訓練も自分には必要かなと思っています。

これは、ダーシにかぎらないことですが、たとえ、結果的に「そちらの方がよい」と元の訳文(ORダーシ使い)に戻ったとしても、考えたこと・考える過程に意味があり、その行為は無駄にはならないと、この頃では思っています。


2019.05.07 00:22 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(0) |












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