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2019. 05. 28  
今年も、翻訳フォーラムのシンポジウムと大オフに参加してきました。

今年のテーマは「足さない・引かない」

イベント情報ページには、「翻訳の基本としてよく耳にする『足さない・引かない』とは、どういうことなのか。何をもって『足した・引いた』とするのか。どこまでが『許され』るのか。『足さない・引かない』と『絵を描く』はどういう関係にあるのか。さまざまな専門分野の具体例を挙げながら、詳細に論じます」とあります。
なんと魅力的なテーマではありませんか。

各プログラムについて報告する前に、まず、それぞれのプログラムの簡単な説明と全体の流れを記しておきます。

「開催挨拶/メンバー紹介」
「翻訳フォーラム」とは何か&過去のシンポジウムの紹介。
「翻訳と絵」(深井・高橋あ、井口・高橋さ―発表順)
 ウォーミングアップとして、硬軟取り混ぜて「絵を描く」とは何かを説明。
「循環とフィードバックでピント合わせ」(井口)
 翻訳事典への寄稿記事を発展させ、「一方向で終わるものではなく循環しながら進めていくもの」という翻訳に対する井口さんの考えを説明。
(休憩)
「辞書最新情報2019年版」(高橋あ)
 緊張をほぐしつつ、辞書に関する有用な最新情報を紹介。
「やってみた! 辞書の棚卸し」(タコの会)
 辞書「棚卸し」による各人の意識変化を報告。
「接続表現をどう処理するか」(高橋さ)
 日本語の接続詞(つまり)は切続詞(さきのさん造語)と言える。難しいけれど大事な着眼点。
(休憩…しないとみんな死ぬ)
「『原文の絵を描く』とは(星野)
 「スペインの雨はヒマラヤの雪」―「足さない引かない」は単語レベルではなく、原作者の意図や読者の存在、原文の言葉遊びまで含めたものであるということの見事な例示。
「翻訳者のための言語学のススメ」(佐復)
 顧客説得の道具として言語学が使えるのではないかという、言語学好き実務翻訳者ならではの視点。
「足さない・引かないのケーススタディ」(高橋さ・井口・高橋あ・深井)
 原文から省略する例、原文に追加する例、大幅に言葉を足す例など8例について、4人が侃々諤々意見を戦わせるデスマッチ…が予想されたため、ベルで時間管理して進行。4名の一言一言が宝もの。
Q&A
(終了)

シンポジウムを終え、「足さない・引かない」については、今のところ、

訳文読者が、原文読者と同等以上の特別なストレスを感じることなく、頭の中に原文読者と同じ絵を描くことができたとき、その訳文は「足さない・引かない」訳文であるということができる。そのためには、原文に書かれた部分を省略することも原文に書かれていない文言を足すこともある。その判断は、原著者の意図や読者の存在を念頭に置いた、慎重なものでなければならない。

というところに落ち着いています。
お話を伺いながら、私は、今後はこの「足さない・引かない・絵」を基本とする翻訳が人手による翻訳として生き残っていくのだろう、というようなことを考えていました。コストその他さまざまな側面を勘案するとき、コスパの点でそこまでの厳密さは必要ないという翻訳も、もちろんあるでしょう。そうしたものは、やはりMTPEに置き換わっていくのかなと思います。でも、実務翻訳においても、「足さない・引かない・絵」翻訳が最終的に顧客にメリットをもたらす(そして顧客側がそのことに無知である)翻訳は多く存在すると思います。翻訳者として、こうした翻訳を目指すだけではなく、「なぜそれが必要なのか」をきちんと言葉で説明できるようになっておかなければならないと、改めて思ったのでした。


それでは、次の記事から、各プログラムをもう少し詳しくレポートします。
本年は、屋根裏の慣例を破り、登壇者名を記載する場合は実名としました(単に面倒くさいだけという説もある)。
次記事以降のレポートは、Sayoが自分のメモを参考にまとめたものです。間違ってメモした/発言の意図を取違えている可能性もあります。その場合の文責はひとえにSayoに帰するものです。
また、今年は、メモが追いつかなかった箇所が多く、文章化できません。常体による箇条書きでまとめさせていただきました。ご了承ください。


*シンポジウムで紹介された資料の一覧がこちらにまとめられています*

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翻訳フォーラムシンポジウム2019・レポート1
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プロフィール

Sayo

Author:Sayo
医療機器の和訳も9年目。
老眼腰痛、最近は膝痛とも闘いつつ
翻訳人生をまっとうしようと奮闘中。
この頃になってやっと翻訳の奥深さ・
難しさ・楽しさが分かってきたような。
記事は「翻訳一般」多め、ときどき読書感想文、本業(医療機器)やや少な目。
(2019年4月現在)

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