屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

「天涯の船」に関する記事の中で、船山馨さんの「お登勢」について触れたあと、どうしても、その小説を紹介しておきたくなったのでした。
なので、今日も、翻訳とは無関係の記事です。
ただ「好きなの~!」と叫んでいるだけですので、特に興味のない方はスルーなすってください。

さて。
以下の文章は、以前、まったく別ジャンルのブログを書いていた時に、UPした記事を加/減筆・修正したものです。本当にコソコソと書いていたので、そんなことはないかと思いますが、万一「この記事昔読んだ」と思われた方がおられましたら、くれぐれもSayoの過去悪は暴かず、暖かいお心でスルーして頂けますよう、お願い致します。また、現読者の心優しい皆様も、Sayoの過去悪を暴こうというヨコシマな考えは抱かれませんよう、重ねてお願い申し上げます。

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はじめて「お登勢」という話を知ったのは、実は、書籍ではなく、TBSのポーラテレビ小説でした。
主人公登勢を音無美紀子さん、相手役津田貢を原田大二郎さん、敵役(?)の志津お嬢様を上村香子さんが演じています。粗筋も何も覚えていないのですが、駆落ちした貢(当時登勢の夫)と志津お嬢様(当時別の男の妻)が志津の情夫に斬殺されるという最終回のシーンが、子供にはあまりにも衝撃的で。何といっても、お昼ご飯を食べながらの帯ドラマの最終回ですからね。今でもそのシーンだけは、鮮明に思い出すことができます。ちょうど、NHK大河ドラマで弁慶(緒方拳さん)が立往生なすったシーンのように(小さい頃のこととて、本人は覚えていないのですが、気持ちが悪くなって嘔吐したらしいです)。

「お登勢」は2001年にもテレビドラマ化され(NHK)、その時は、主人公登勢を沢口靖子さん、津田貢を葛山信吾さん、志津お嬢様を森口瑤子さんが演じられたようです。当時はアメリカに住んでおり、この作品は未見。従って、再びこの最終回が繰り返されたのかどうかは不明です。

さて、小説「お登勢」です。初読時(すでに古本)は高校生でした。
「お登勢」は、夫と(元)主家のお嬢様の駆落・斬殺を知ったお登勢が、それでも立ち上がるところで終わっています。ぐいぐい引き込まれながら読んだのですが、残念ながら、結末だけは、頑張り屋のお登勢が余りにも不憫で、どうもすっきりしませんでした。そんな時、偶然これまた古書店で続編に遭遇。速攻入手して、貪り読み、やっと救われたのでした。

再テレビドラマ化に合わせて「お登勢」の方は再版されたということですが、正続併せて読んで、やっと本当に完結だと思いますので、ここを読んでおられるテレビ局の皆さん(いないって<自分)、是非是非、続編の最後まで再々ドラマ化し、タイアップで正続両編の再版をお願い致します。今回、お登勢は(あくまでも個人的イメージですが)石原さとみさんで。


以下は「お登勢」の粗筋を含みますので、前知識がない状態で読みたいと仰る方、また「今イチ興味が湧かない」と仰る方は、ご自身の判断にてスクロールをお願い致します。

てことで、「お登勢」についてでございます。
作者の船山馨さんは、北海道出身。従って、その作品も、北海道を舞台にしたものが多いです。史実と創作がうまく絡み合った物語を書かれ、歴史モノとしても楽しめると思います。この「お登勢」は、前半は淡路島、後半は北海道(静内・新冠)が舞台。

物語は、16才になった登勢が、奉公のため、船で洲本(淡路島)に向かうところから始まります。その船の中で、登勢は、津田貢(この時は、木偶芝居一座の道具方に変装しての乗船です)に一目惚れ。明治維新を数年後に控えた頃のことです。

当時、洲本の城代家老稲田家は、力はありながら、徳島本藩に所属する1支藩(昔は徳島に属していたんですね~)。分藩独立を求め、徳島本藩と対立中。幕末の政情においても、本藩は佐幕派なのに稲田家は倒幕派(尊攘派)でありました。

さて、ここで、一度人間関係を整理しておきましょう。
登勢は南淡路の貧農の娘(実は捨て子。のちに実父の玉太郎と再会。また兄亡き後甥の仙吉を引き取り、北海道まで同道します)。登勢が奉公に上がった加納家は、徳島藩士。息子の睦太郎(登勢を好きになるのですが、貢ひと筋の登勢には見向きもされません)と娘の志津がいます。そして、津田家は稲田藩士。貢は理想に燃えて尊王攘夷運動に邁進しています。

この加納家の志津お嬢様(洲本小町と評判の美少女)が、とんでもないお方であります。気紛れで我儘。登勢が貢を好きだと知ると、別の男性との婚約を破棄し、「すでに身体の関係がある」と親を脅すような形で、貢のもとに嫁いじゃったりするのです(後に離婚)。とはいえ、登勢には、彼女なりの友情を感じていたようで、のちのち何かと力を貸してくれたりもします。それに、賢くて行動力もある。しかし、最後は、夫も情夫もありながら、当時登勢の夫であった貢と不倫に走り、挙句駆落ちを決行して果たせず、北海道の原生林の中で、貢と2人、後を追ってきた情夫に斬殺されるという末路を辿ります。当時の志津の夫(それとも、結婚はしてなかったんだっけ?)は、彼女を魔性の女と呼んでいましたね。でも、どうも憎みきれない。ついつい「他に道はなかったんかい」とやるせないため息をついてしまう、そんな女性です。

さて、話を粗筋に戻すと。
貢は尊攘派と佐幕派が争う中で、身体にも心にも傷を負い、何事にも投げやりに。そんな貢を登勢は一生懸命励まします(一方、睦太郎には結婚を申し込まれるも、アッサリ一蹴)。そんな中、大政奉還が成り元号は明治に。徳島本藩と稲田家の対立は激化し、ついに稲田騒動と呼ばれる武力衝突に発展します。その稲田騒動の中で、貢の両親は命を落とし、彼らを助けようとした登勢も、その姿を見て頭に血が上った睦太郎に切られて重傷を負います。この時、貢は、登勢を愛していることに気づき、病癒えた登勢を妻に向かえ、新天地北海道に渡ることにします(徳島側関係者たちには処分が下され、一方、稲田側は、独立を認める代わりに北海道への移住を命ぜられます)。

ということで、舞台は、北海道へ。
武士を捨て、覚悟を決めて移住したはずの貢ですが、あまりに過酷な生活に再び夢破れ、ついには、夫に同道して札幌に渡ってきた志津と刹那的な関係を持つようになります。一方登勢は、そんな夫の様子に気づきながらどうすることもできず、ただひたすらに過酷な自然と戦います。そんな彼女の前に現れた見事な野生馬。彼女の中に牧場を作るという夢が芽吹きますが、その夢すら、もう貢の心を動かすことはできません。そして、物語は、冒頭に書いた悲劇に繋がっていくのですが・・・

初読時は、ひと目惚れの部分はしょうがないとして、なぜ登勢が、貢のような男性をずっと想い続けるのかが謎でした(貢は自分の「タイプ」ではないのでね)。今でも、「アイツのどこがええねん」的な思いは変わりませんが、「男と女の間にはそういうことってあるのよね」と納得できるくらいには成長(?)致しました。多分、志に燃える美青年の貢は、登勢にはキラキラ輝いて見えたのでしょうし、私も登勢くらいの年齢でしたら、くらっとしたかもしれません。

それから、勿論許せないことではありますが、都道後の厳しい暮らしの中で、貢が志津に走った気持ちも、何となく分かるようになりました。ひたすらポジティブに頑張る登勢が、貢には「重い女」に思えたのでしょう。志津お嬢様ご自身も、登勢に向かって「貢さんにとって、お前が重荷になってくるときがあると思うよ・・・(中略)・・・いまだって、貢さんはお前にひきずられているのかもしれないな。男ってものはね、気性のしっかりした女を芯から好きになんか、なれるもんじゃないのよ。だらしのない莫迦みたいな女でも、甘ッたれてもたれかかってくるようなのが可愛いの。気をおつけ。死んでも頑張りましょうなんて、お尻をひっぱたくようなことばかり言っていると、貢さんが逃げ出すよ」と言っておられます。うーん、けだし名言かも。
志津お嬢様ご自身も、以前は「恋敵」くらいにしか考えていなかったのですが、この頃では、実に味わい深い登場人物と思えるようになってまいりました。
Sayoも年をとったものよの(しみじみ)。

「お登勢」は大好きな小説なので、いくら書いてもキリがないのですが、とりあえず、今日はこのへんで。「続お登勢」については、(その2)に譲ろうと思います(ってことで、「お登勢」話はまだしつこく続くのであった)。

あ、最後になりましたが、貢は、V6の岡田准一さんで如何でしょうか。理想に燃える美青年が、夢破れて堕ちていく様を、見事に演じてくれそうな気がするのですが。

SayoのBackgroundについては「はじめに」カテゴリの記事をご参照ください。
2011.06.24 11:28 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(0) |












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