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屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。



読了。

しばらく前から、文芸翻訳に関連する本をよく読むようになりました。

『創造する翻訳』(中村保男)、『翻訳の秘密』(小川高義)『翻訳教室』(柴田元幸)、『文芸翻訳教室』(越前敏弥)、『文芸翻訳入門』(藤井光)、『英語の発想』(安西徹雄)――ざっと、こんな感じ。

医療機器の翻訳にどっぷり浸かっていると、ときどき「本当に狭い範囲の語彙で仕事をしているな」「最後まできちんと考えていないな」「目の前の文やパラグラフしか追っていないな」と思うことがありまして。フと興味が湧いてフェローのノンフィクション講座(通信)を受けて以来、特にそう思うようになりました。それで、テキストや専門書などで分野特有の表現を身につけるだけではなく、翻訳そのもの、特に全体を俯瞰しながら翻訳する色合いの濃い書籍翻訳について書かれた本を、もう少し読んでみたいと思ったのが始まり。『21世紀×アメリカ小説×翻訳演習』も、その流れの延長で手にとったものです。目次の各章のタイトルに惹かれました。
http://books.kenkyusha.co.jp/book/978-4-327-45290-2.html

上記の書籍を読んだり、翻訳フォーラムのシンポジウム*でお話を伺ったりするうちに、全体の流れをみながら訳すことや、俯瞰したり近づいたり、原文と訳文を行ったりきたりしながら訳すということが、少しずつ実感として分かってきて、自分の翻訳にも取り込めるようになりました。けれど、「英語でそんな風に書かれた意図を日本語に反映する」ということが、どうしても上手くできませんでした。「翻訳を勉強する会」の課題に取り組む中で、そのことを強く感じるようになりました。「そんな風に」とは、使われている(選択されている)単語や文体、一文の長さ、仕草(から推測される心情)などのすべてを指します。それらをどう読み取り、訳文全体のトーンを決め、実際の訳文に反映させていくのか――『21世紀×アメリカ小説×翻訳演習』には、「そんな風」を日本語の訳文にマッチさせていく過程が示されています。数パラグラフの英文(短編小説の一部)が提示され、それに対する考察がなされ、学生訳と講師訳が提示される。数回にわたって雑誌に連載された文芸翻訳コンテストの講評を加筆・修正したものだそうです。本書を読み、一部を自分でも訳してみると、どんな言葉やどんな部分に注意したらいいのかが、少しだけ分かったような気がしました(そう錯覚しただけかもしれませんが)。

思えば、以前は、仕事で扱う以外の文章(フィクションやエッセイなど)を読むときは、雰囲気で読み、力わざで訳していたような気がします。「文法少し不明な点があるけれど意味はこんな感じかな、(全体)こんな内容だからこんなトーンでいいのかな」という感じです。「勉強だから」という気の緩みがあったとはいえ、なんといい加減だったことでしょう。その頃は、仕事でも、「正しく意味をとる」ことに力点をおき、文法解釈については、分からない箇所をとことん突き詰めることはせず、最後は「こんな感じかな」で訳していたような気がします。文法的にそう難解な文章がなかった、つまり「こんな感じかな」も少なかったことが、せめてもの救いです。勉強会を始めて、文法の大切さを身に沁みて感じ、勉強会を続けるうちに、自分の読みの浅さに気づかされるようになりました(←今このあたり)。

文法はいずれにせよ、こうした読み方がいつも仕事で必要かと問われれば、正直「日々の仕事ではそこまでいらんかな」という気はします(取りあえず今のところは)。けれど、こうした読み方・訳し方を身につけておけば、将来必ずどこかで役に立つと信じています。そして、何より、訳していて(悩むことが多くて大変ではあるけれど)楽しい。

収載された短編(現代アメリカ小説)そのものは、自分からはあまり手に取らないかなというものが多かったです(逆にそういう作品に触れることができてよかったかも)。とはいえ、第III部の21世紀アメリカ文学の動向はなかなか興味深いものでした。総じて、今の自分には収穫の多い一冊でした。


* 翻訳フォーラム・シンポジウムについて
コロナウイルス感染の流行が近日中には収束しそうにないことから、今年のシンポジウムは中止になりました。代わりに、YouTubeによる配信が行われるそうです。
 チャンネルはこちら→
 https://www.youtube.com/watch?v=dmnv3Ju2nKc
 翻訳フォーラムのツイッター公式アカウントはこちら→
 @FHONYAKU

2020.03.30 01:51 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(2) |

Tomokoさん、まいどです~

私も今頃になって、翻訳は「きちんと読み、きちんと訳す」、これに尽きると思うようになりました。
この「きちんと」に様々な意味がこめられていて、翻訳、本当に深いなと思います。

勉強も始められるのですね。
今以上の力をつけられたら、その先、どんな場所にいかれるのか(冗談とかではなく、ですよ)楽しみです。
こんな世の中ですが、お互い、無理なく頑張りましょうです!

2020.04.14 22:13 URL | Sayo@屋根裏 #- [ 編集 ]

お久しぶりです(^^)
「雰囲気で読み、力わざで訳す」って、ついしてしまいそうで怖いですよね。もっと本当の翻訳力をつけたいのでまた勉強を始めようと思っているところです。いろいろ気づかせてくれてありがとうございました!

2020.04.14 18:34 URL | tomoko #- [ 編集 ]













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