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2020. 09. 05  

 Covid-19流行による外出自粛の煽りをくらって無期限休止状態となった「翻訳を勉強する会」。その代わりにと、スピンオフ的にほぼ同じメンバーで「翻訳を勉強する会・Online」が始まって、早いもので3ヵ月が経とうとしています。

 昨日7回目の勉強会を終えました。オフライン勉強会より若干ユルめモードで脱線や雑談も多いせいか(会場使用時間を心配する必要もない!)、終わった頃にはもう日付が変わっていました。

 これまで、英文法をしっかり読み解かなければ正しく翻訳することができないエッセイを4本、文法的にはさして難解ではないものの訳出の際にひと工夫が必要になる最近のノンフィクション2本を取り上げましたが、昨日は、スピーチの翻訳に挑戦しました(メンバーが「こういうものをやりたい」という意見は出しますが、翻訳課題は主催が決めてくださいます)。

 「さまざまな角度から原文をみる」ことが苦手なワタクシですが、それでもオフライン勉強会が始まった2年半前よりは、多少いろいろなことを考えながら翻訳できるようになってきたかなあと思います(希望的観測)。まだまだ大ぽかはやりますし、間違いを指摘され(あるいは勉強会の最中に自分自身で間違いを自覚して)赤面することもしばしばですが、自分の中の「考えなければならないこと」リストは確かに(少しだけ)伸びたかなと。「いろいろ考えた」内容がきちんと訳文に反映できないことの方が多いというのが実状ですが(考えすぎて失敗することも)。

 自分の訳文を他の人に見てもらい、他の人の訳文も見ることが大切だということがよく言われます。オフラインとオンラインで勉強会を経験してきて、それは本当に大事だなと思います。「見せる」訳文をつくろうと思えば本気度も違ってきますし、他人の訳文を見ることで、思いもかけない(自分では思いつかないような)訳文に出会うこともできる。当会では一人一人「なぜそういう訳文にしたか」を説明しながら自分の訳文を読んでいき、他のメンバーが適宜突っ込みをいれるというやり方なので、とにかくすべてを説明できるようにしておかなければなりません。まったくもって鬼のような会です(たぶん皆さんMだと思う)。
 講師の下で学ぶセミナーにも「見せて、見る」ことが可能なものがたくさんありますが、講師相手だと、どうしても「相手の言うことがすべて」でこちらは聞く一方になりがち。でも、勉強会では、講座では「こんなこと聞いたら恥ずかしいんじゃないか」ということも遠慮なく聞ける。とはいえ、そんな風に忌憚なく意見を述べ合う前提として、メンバーがある程度、翻訳に対する考え方や姿勢を共有していることは必要ではないかという気がします。たとえば「翻訳を勉強する会」では、「読者が原文読者と同じ絵を描けるような訳文をつくる」という考え方や「文法をゆるがせにせず原文をきちんと読解し、最適と考える日本語にする。そのために英語を読む力と日本語を書く力の両方を鍛える」という姿勢あたりは共有しているかなと――たぶん。

 参考図書や他のセミナー、講座などで学んだことを、実際に訳文をつくるという形で実践するという「学び+実践」の組合わせはとても大事だと思います。けれど、独りではなかなか継続して実践するのは難しい。半強制的に(笑)実践を助けてくれる手立てのひとつが勉強会なのかなと思います。


 今回の課題はミシェル・オバマのファーストレディとしての最後のスピーチでした。
 こちらに全文とスピーチがあります。
https://www.elle.com/culture/career-politics/news/a41898/michelle-obama-final-flotus-speech-transcript/

 課題は、

 If you are a person of faith, know that religious diversity is a great American tradition, too. In fact, that's why people first came to this country - to worship freely. And whether you are Muslim, Christian, Jewish, Hindu, Sikh - these religions are teaching our young people about justice, and compassion, and honesty. So I want our young people to continue to learn and practice those values with pride. You see, our glorious diversity - our diversities of faiths and colors and creeds - that is not a threat to who we are, it makes us who we are. (Applause.) So the young people here and the young people out there: Do not ever let anyone make you feel like you don't matter, or like you don't have a place in our American story - because you do. And you have a right to be exactly who you are.
 But I also want to be very clear: This right isn't just handed to you. No, this right has to be earned every single day. You cannot take your freedoms for granted. Just like generations who have come before you, you have to do your part to preserve and protect those freedoms. And that starts right now, when you're young.

 の部分。動画では14分20秒あたりからです。

 アメリカ人と日本人の宗教観の違い、アメリカの歴史、「あなた」という呼びかけの言葉を使うか使わないか、スピーチから感じ取れる話者の強調したい部分を翻訳にどう反映するか――2段落ではありますが、さまざまなことが話題に上りました。Who we areの部分は、たった3つの単語ですが、ほぼ全員が異なる訳語となっていました。そのどれもが間違いではないように思います。翻訳って本当に面白いですね。一人が提起した意見や質問がどんどん展開していくさまは、ナカから見ていてもときにちょっとした感動がありました。
 皆と学ぶ機会が少しでも長く続いてくれればいいなと願うものです。
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プロフィール

Sayo

Author:Sayo
医療機器の和訳も9年目。
老眼腰痛、最近は膝痛とも闘いつつ
翻訳人生をまっとうしようと奮闘中。
この頃になってやっと翻訳の奥深さ・
難しさ・楽しさが分かってきたような。
記事は「翻訳一般」多め、ときどき読書感想文、本業(医療機器)やや少な目。
(2019年4月現在)

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