屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

先日、少しばかり、アメリカの医療制度(というか医学教育ですが)についての調査を必要とする案件に遭遇したのでした。いつものように、ちまっとした案件ですが。

で、その原稿中に、タイトルの語句がありました。原稿初読時は、まったく気にせずさらっと流したのですが、いざ、訳する段になって、「で、何で、ソレofficeなん?」ということが、どうにも気になってしょうがなくなってしまったのでした。アメリカでは、掛かりつけ医(日本生まれLA育ちの日本人先生)、産婦人科医(ちょっとアヤしい日本語を話す中国系アメリカ人の先生)、歯科医(高校卒業後アメリカの大学に進学しそのまま居ついてしまった日本人の先生)に掛かっていましたが、医院の名称は、いずれも「なんたらクリニック」だったんですけど?

アメリカで頑張っていらっしゃる先生(や看護婦さんやその他医療従事者さん)のブログはいくつもあるのですが、今回私が知りたい情報に触れている記事はないようです。いずれにせよ、ブログの記載を訳出に使用する場合は、やはり裏取りが必要(と、個人的には思っています)。ということで、いつものように別宅(図書館)に向かうSayoです(他にも、いくつか調べたい点があったしね)。

でも、アメリカの医療制度や医学教育制度について書かれた日本語の書籍って、なかなかない(参考文献もあたったのですが、イマイチ分からず)。

てことで、あまり期待せずに借り出したのが、「アメリカ臨床医物語」(中田力著 紀伊國屋書店)。これが思わぬヒットでありました。18年間アメリカの病院に勤務し、(2005年)現在は、日米を往復して臨床活動を行なっておられる先生の回顧録です。肩肘張らない内容で、さらっと読めるのですが、随所にアメリカ特有の医療制度についての簡単な説明があり、physician’s officeの謎もめでたく解明することができたのでした。

「たとえばひとりで開業することに決めたとする。必要なことは自分のオフィスを開くことと、どこかの病院に入院特権を獲得することだけである・・・(中略)・・・オフィスには特別な検査器具を必要としないからスペースさえあればよく、入院特権は自分が使いたい病院に申請を出しさえすればほとんど100%認められるものである」(66ページ)。

と書いてあるのを読んで、掛かりつけ医先生のクリニックを思い出しました。
スタッフは、ベテラン受付嬢ただ一人。尿検査も採血も先生自らが行なわれます。
部屋は、奥にメインの診察室(器材らしい器材は心電図計くらい)、その隣に小さな多目的室(ソファーベッドのある、しんどくなった患者さん休息兼点滴用)、その前の細長い通路が受付とその後ろの先生の執務室兼休憩室に続いていて、受付の先に入口と待合室があるという、細長いコンパクトなつくりのクリニックです。つか、本当に「オフィス」と呼んだ方がしっくりするかもしれない。
そういえば、X線検査が必要な時は、提携施設(車で10分程度)で写真を撮ってもらい、できあがったネガを持ってまたクリニックへ戻るという、面倒くさい手順を踏んでいましたっけ。
専門医 consulting physician の診察が必要と判断すれば、専門医への紹介状を書いてくれます(referral)。

私も、一度、不正出血で婦人科の専門医さんに回されたことがありまして(そこもまた、病院ではなく、クリニックです)、検査の結果(検査はそのクリニックでできたのでした)、子宮頸管ポリープがあって(しかも2個も!)日帰り手術をすることになりました。
その時、専門医先生の仰った「私が執刀するけど、ここでは手術ができないから、ナントカ病院でするからね」という言葉が、当時の私には意味不明だったのですが(日本だと、個人のクリニックの先生が、たとえば大学病院とかで手術をすることなんて、まずないじゃないですか)、今回、「アメリカ臨床医物語」を読んで、やっと謎が解けたのでした。
そこは、先生が入院特権 admission privilege を持っている病院だったのね。

その他にも、アメリカでは州毎に医師免許が発行されるとか、所定時間数の実践講習を受講して定期的に医師免許を更新しなければならないとか(CME: continuous medical educationと呼ばれるそうです)、翻訳にはあまり(ほとんど?)役に立たないかもしれないけれど、「ほおお」と思えるような記述がいくつもあったので、日英併記されているものは、こそっと秀丸君に入れてみたりなんか、してみたりなんかしてみたのでした。

というわけで。
最後になりましたが、ナゾのPhysician’s office、今回は「診療所」としました。


SayoのBackgroundについては「はじめに」カテゴリの記事をご参照ください。
2011.09.03 00:04 | 英語 | トラックバック(-) | コメント(0) |












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