屋根裏通信

在宅で細々実務翻訳をやってます。翻訳、英語の勉強、その時々の出来事などのんびり綴っています。

今年のプログラムが発表になりました。
https://www.jtf.jp/festival/festival_program.do

昨年は、プログラムの内容を見て初参加を決めたわけですが、(個人的には)今年もそれに勝るとも劣らないプログラムだと感じました。

今年は幸い、さまざまな状況がまだ「行けそう」な感じですので、近日中に申込みさせて頂くことになるでしょう。

とはいえ、来年以降は分かりません、というよりたぶん...無理(とか言ってて、またおったらすいません。幽体離脱した霊体が一瞬かたちをとったものと考えて、見なかったことにしてください)。
ですから、同じレベルのプログラムが来年以降も続くようなら、関西でも入場料を取ってライブ配信してほしいなあと思っていたら、同じようなことを考えている方がTwitterにもおられました。

関西から参加する場合、最低1泊2日が必要です(疲れ具合を考えれば、できれば2泊3日ほしいところです)。地元で何か起こっても、すぐに帰宅することはできません。
関西で聞くことができるのであれば、「丸1日」と「在来線で1時間強で帰宅できる」までハードルが下がります(<あくまで自分のことしか考えていませんが)。

・実行委員の方の負荷(恐らく現在でも相当な負荷がかかっていることは想像に難くありません)
・関西での積極的なサポートが必要(会場準備・設営・事前の確認試験など)
・登壇者の意向(会場のみの発信にしたい方もおられるかもしれない)
・他の地域(九州、中国四国、東北、北海道など)との地域格差

などなど、少し考えただけでも、次々と越えるべきハードルが浮かんでくるので、実現は無理かなと思いますが、将来的な可能性として検討して頂ければなあと思いました。
(技術的なことは分かりませんが、東阪同時配信はMEIの土曜講座で体験済みなので、その部分のハードルはそこそこ低いのかなと)

もちろん、すべての配信は無理でしょうから、たとえば、事前にとったアンケートで人気の高かった4プログラムを配信するなどのやり方になるとは思いますが。
それが無理であれば、(可能であれば)セミナーのように、DVDとして後日有料で販売するという方法も考えて頂ければ嬉しいかなと。
(今回も聞きたいプログラムのバッティングは必至ですから、出席しても購入するかもしれません)

あくまで、事情を分かっていない1翻訳者の勝手な希望です。「事情も知らんと」と言われることは想像に難くありません。
ただ、今後の可能性のひとつとして、心の片隅にでも止めて頂ければ幸いです。

もちろん、後日JTFジャーナルに詳細な報告が掲載されますし、当日のツイートである程度内容を知ることもできます。
ですが、全編を通して話を聞くのとレポートを読むのとでは、伝わる内容や突き刺さる度合いが違います(少なくとも私はそうでした)。

全編を通して聞きたい/多くの人に聞いてもらいたいプログラムが目白押しだと思われただけに、とても残念に感じました。


てことで、最後になりましたが、実行委員の皆さま、今年も粒ぞろいのプログラムをありがとうございました。
無事に出席できた暁には、今年も、一昨年までの自分のように「行きたい、けど行けない」皆さんのために、(私情満載の)詳細なレポートを書かせて頂きたいと思っています。
てか、その前に最後まで脳味噌を保たせる体力をつけないかんのだった。
関連記事
2017.09.20 14:25 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(0) |
先日、「医療機器関連の辞書や参考書でお勧めのものはありますか」的な質問を頂きました。
そうなんです、ジツは「屋根裏通信」は医療機器翻訳者のサイトだったのでした(本人も忘れていることが多い)。

そう尋ねたくなる気持ち、分からないでもありません。
製薬分野の翻訳だと、医学辞書を中心にそろえていくことになるかと思うのですが、「医療機器」に関して言えば、あまりにも扱う範囲が広すぎて、一般的な辞書以外に「これはMUST」的なものを挙げるのが難しいのです。私も、機械電気度の高い案件、生体関連度の高い案件、(非)臨床試験関連案件で、使用する基本辞書セット(?)や参考書はビミョーに異なります。そのあたりは、慣れで見当をつけていくしかないような気もします。もっとも、これはどの分野もそうかもしれませんが。


・翻訳者必携の英語・英英・国語辞典については、帽子屋さんのブログやセミナーやさまざまな書きものを参考にしていただくのがよいと思います。
「禿頭帽子屋の独語妄言 side A」 http://baldhatter.txt-nifty.com/
・NESTさんの「翻訳者の薦める辞書・資料」のサイトも大変参考になります(情報が膨大すぎて、ワタクシはいつもキャパ超え死してしまうのですが)。
「翻訳者の薦める辞書・資料」 http://nest.s194.xrea.com/lingua/


こうした大先輩にはもちろん適うべくもありませんが、以下に、医療機器翻訳者Sayoの普段使いの辞書や辞書ブラウザを記しておきます。
技術系翻訳10年(ほとんどが休眠期)+医療機器翻訳6年(わりとがっつり働いてます)の試行錯誤の結果です。
(これまでもそうだったように、今後も少しずつ「自分にぴったりのもの」を取り入れつつ変化していくと思いますので、あくまでも現時点、てことで)


1 対訳君医学版ACCEPT

翻訳会社提供の辞書検索用ツール(内蔵辞書+登録辞書)
http://www.mcl-corp.jp/software/s_main.html
残念ながら、2015年6月でパッケージ版販売が中止になり、その後音沙汰がないので、今後の入手は不可能かもしれません。
ワタクシは辞書ブラウザの一つという感覚で使用しています。
利点:内蔵辞書の「医療統計用語辞典」、別売の「ICHガイドライン+薬局方」が手放せない。対訳入力窓を「かんざし」的に使用して、辞書グループ別に編成した複数ウィンドウの辞書を串刺し検索できる。Windows 10でも動作する(らしい)。
欠点:そもそも新たに入手できない。ICHは古いものしか対訳がなく薬局方は15版である。最新のLogoVista辞書は登録できない/登録できるが文字化けがひどい/登録できるが検索しようとすると「対訳君」が落ちる。「かんざし」で串刺しはできない。

と、利点・欠点ありますが、ワタクシ的にはメインの辞書検索ブラウザとして便利に使っています。
デフォルトで立ち上げる辞書ウィンドウは以下のとおり。

英辞朗(裏取りは必要ですが、やっぱり便利)
WordNet+Webster 1913
英語辞書(ビジネス技術実用大辞典、新編英和活用大辞典、リーダーズ2版+プラス)
医学辞書(ライフサイエンス辞書、医療統計用語辞典、南山堂医学英和大辞典、インタープレス版バイオ・メディカル用語対訳)
研究社新和英大辞典(全文検索にして英和訳語探しに使用)

*英語辞書のビジネス技術実用大辞典、新編英和活用大辞典はPASORAMAでも見られますが、対訳君の方が見やすいため主にこちらを使っています。
*この他にICHと薬局方メインの対訳ウィンドウも開いています。
*現在未使用ですが、SIIエンジニアモデルが寿命を迎え「180万語対訳大辞典」が使用できなくなったときに備えて「日外科学技術45万語対訳辞典」も確保(どのブラウザでも開ける優等生であります)。

2 LogoVistaブラウザ

英語辞書(ジーニアス英和大辞典、リーダーズ3版+プラス)
国語辞書(日本語大シソーラス、日本語コロケーション、類義語使い分け辞典、明鏡国語辞典)

3 EBWin

対訳君とほぼ同数の辞書を登録していますが、現在は「翻訳訳語辞典」のみを開いています。

4 SII電子辞書SR-G9003(エンジニアモデル)をPASORAMA接続
(Dayfiler医学モデルも所持していますが、あまり出番がありません)
*残念ですが、SII電子辞書も販売終了となっていて、現在ではAmazonマーケットプレイスなどでしか入手できません。

2、3、4は、単体で検索する場合もありますが、たいていはかんざしで串刺し検索します。

5 デフォルトで開いている辞書関係のウェブサイト

Japan Knowledge Personal
http://japanknowledge.com/personal/
(主に、英英辞典を使用していますが、日本語の意味の確認などにも使用。まだまだ使いこなせていませんが、それでも便利)
ライフサイエンス辞書
https://lsd-project.jp/cgi-bin/lsdproj/ejlookup04.pl
(対訳君に入っているものは古いので、ワタクシは基本的にウェブのライフサイエンス辞書を使用しています)


ワタクシは「身体に入れる系」の医療機器の翻訳がほとんどですので、医療機器翻訳の中でも医学寄りだと思うのですが、それでも「医学度」の高い案件とそうでない案件があります。
「医学度」が高い案件の場合は、上記の基本セットの他に、必要に応じて、以下の辞書グループや辞書サイトも開きます。

・LogoVistaの医学辞書グループ(医学書院医学英和大辞典、研究社歯学英和辞典)
・循環器用語集(循環器案件が多いので)
http://www.j-circ.or.jp/yougoshu/
・日本医学会用語辞典(訳語が複数あるときは、コチラのサイトの用語を採用することが多い。無料ですが登録要)
http://jams.med.or.jp/dic/mdic.html
・臨床試験用語集(治験関連案件の場合)
http://www.tri-kobe.org/cdisc/glossary/glossary.php


また、マーケティング案件など、日本語で悩むことが多い案件の場合は、以下のサイトも開いておきます。

・少納言(現代日本語書き言葉均衡コーパス、コロケーションを確認したいとき)
http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/
・連想類語辞典(注意して使用する必要はあるかと思いますが、思いがけない訳語を思いついたりするのだ)
http://renso-ruigo.com/


紙辞書や参考書は、案件によって参照するものが違ってきますが、医学関連でよく参考にするのは、

「FDAの事典」(薬事日報社、第2版) 医学和訳者必携(ホンマか<自分)。
「医療機器の生物学的安全試験」(情報機構) 非臨床試験関連案件の場合。いやもう、「使い倒したる」と握り拳せざるを得ないようなお値段です。何といっても「情報機構」さんですから。でも、何度も助けて貰いましたので、たぶんもとは取ったと思う。
「新版・知識整理のためのペースメーカ・ICD・CDT/CDT-D・ILRブック」(メジカルビュー社) この本なしには、特に循環器の電気生理案件には立ち向かえません(あくまでも個人的な感想です)
「医療機器開発ガイド」(じほう) 法規制の確認に。
関連記事
2017.09.05 23:36 | 辞書・参考書 | トラックバック(-) | コメント(8) |

ジツは、私はこのような「翻訳について語る本」(?)はほとんど読んでいません。
文芸翻訳ってどうも苦手意識があって、それで敬遠してしまう部分があるのかも。
なので、越前敏弥さんの「日本人なら必ず誤訳する...」も、狭い我が家のどこかで積ん読されてます(たぶん階段)。

「翻訳教室」は図書館から借りて延長し、返してその場で借りという裏技も使って(そしてまた延長し)、結局1ヵ月半くらい手元に置いていました。

最初の頃は、課題の文章が(ワタクシには)難解すぎて(「よく分からない(←乱暴なまとめでスイマセン)」系の小説は苦手です)、何度も挫折しそうになりましたが、村上春樹の「かえるくん、東京を救う」の英訳「Super-Frog Saves Tokyo」のバックトランスレーションあたりから面白くなり、「Invisible Cities」で始めて「よく分からない系の翻訳も面白いかも」と思い、その勢いで最後まで読みました。

ご存じの方も多いと思いますが、この書籍は、柴田先生による東大文学部の「翻訳演習」の講義を、ほぼそのまま文字化したもの、ということです。
ときどき見かける「課題→講師による解説→訳例提示」形式ではなく、「課題→学生の訳例をめぐる講師と学生のやり取り→講師訳例提示」形式となっており、どんどん話題が広がっていくのが面白く、だから、途中で投げ出さず、最後まで読めたのかもしれません。柴田先生は、学生のどんな質問にも丁寧に答え、自分の訳例よりよいと思うものはよいと認めて採用されました。実務翻訳でも尊敬できる先輩方はみなそんな感じです(てか、だから尊敬されるのか)。

「翻訳演習」をとるような東大の学生さんは、目の付け所も鋭く、「おお」と思うような訳文が出てくるのですが、それでも、最初の頃は、課題文やその中の単語だけをみている発言が多い。それに対して、柴田先生は、引いたり(著者の性格や文章の癖、作品全体のトーンをもとに最適な訳語を考える)、寄ったり(全体をベースにその文や語句の意味を考える)を繰返しながら、学生の質問に答えていきます。
「Super-Frog Saves Tokyo」(蛇足ですが、この回の講義には、途中から、英訳者であるJay Rubin先生も加わります)の回のあと、村上春樹を迎えての特別講座があるのですが、そのあたりから、(あくまでワタクシの感じたところですが)学生の原文への向合い方にも変化が生じ、「引いた」視点からの発言も多く混じるようになった気がします。柴田先生スゴいというか、村上春樹スゴいというか、東大生スゴいというか...たぶん、そのすべてなんでしょう。

村上春樹の語る翻訳はとても興味深かったですし(ワタクシはどちらかというと彼が苦手で、村上作品は、ノンフィクションの「アンダーグラウンド」と英訳された「Kafka on the Shore」(Philip Gabriel訳)しか読んで(正確には「聴いて」)いないのですが)、柴田先生の発言の中には、訳出時の語句選びに際しての実際的なノウハウもてんこ盛りされていて、途中から付箋付けまくりました。でも、返す前には全部取らないといけないですから、心を入れ替えてAmazonさんに注文しましたよ。手元に置いておきたい一冊です。


付箋部分は以下のような感じ(ごく一部を抜き出しました)。

「翻訳は語彙の豊かさが肝腎などと言いますが、むしろ、似合わない言葉を取り除いていく作業だと思います」(柴田)

「英語は動詞がものすごく強い。日本語はだいたい副詞プラス動詞を使うと強さが出るけど、そのまま英語にするとせっかくの強さがなくなる。だからなるべく強い動詞を使って、副詞を使わないようにしています」(Rubin)

(レイモンド・カーヴァーの翻訳が一段落したことで、翻訳にエネルギーを費やさなくなるのではないかと問われて「...やればやるほど技術っていうのは上がっていく...そうするともっともっと訳したくなるんですよ。やればやるほどやりたくなる。おもしろくなってくる...最初の頃より最後のほうが明らかに翻訳スキルが上がっている。それが自分でも分かる。だから、やはり死ぬまでやるんじゃないかな」(村上)

「ものを書くというのは体力がすべてなんですよ...いくら能力があったとしても歯が痛かったらものなんて書けない。肩が凝ったり腰が痛かったりしたら机に向かって仕事なんてできない。そういう意味で体力は必須条件なんです」(村上)

「文章を志す人はほかの人とは違う言葉を探さないといけないんですよ。プロになるにはそれはすごく大事なことです」(村上)

「ヘミングウェイはIceburg theory(氷山の理論)ということを自分でも言っていて、語らないで伝えるというのが彼の文章の最大の特徴だと僕は思います。だから訳す上で、何をやってもたいてい、小さな親切大きなお世話になっちゃうのね」(柴田)

「neverは『決して』と訳したくなったらまずその気持ちを抑えて、なるべく文章の中に盛り込むような形で訳すのがいい」(柴田)

「...原文を見てさんざん考えた我々はそういう訳し方にある程度共感するだろうけど、英文を見ていない読者が読むと、『なんでこんなに「そして」が多いんだ?』と思うだろうね。andと『そして』は重さが一緒じゃないから」(柴田)
関連記事
2017.08.26 18:28 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(2) |
実家から救出したものを音読了。
初版は昭和46年(手元にあるのは昭和54年の12刷)、40年以上も前に書かれたものです。

白洲正子さんについては、「白洲次郎の奥さんである」「美術や骨董に造詣が深い(らしい)」というくらいの知識しかありませんでした。
その状態で読んでみて、読了後も、書評や本人評などにも目を通さない状態で感想文を書いています(いつもそうしたものに目を通して多少なりとも影響を受けてしまうので、今回は敢えてそのようにしてみました)。

「『かくれ里』と題したのは、別に深い意味があるわけではない。字引をひいてみると、世を避けて隠れ忍ぶ村里、とあり、民俗学の方では、山に住む神人が、冬の祭りなどに里へ現われ、鎮魂の舞を舞った後、いずこともなく去って行く山間の僻地をいう。謡曲で『行くへも知らずなりにけり』とか『失せにけり』というのは、皆そういう風習の名残であろう」という第一章「油日の古面」の冒頭部分を読んだときから、「このヒトの文章好きかも」と思いました。
以前、「凜として清々しくて品がある」文章だと感じたと書きましたが、その印象は最後まで変わりませんでした。自分とリズムが合うらしく、音読もしやすかったです。女性の手になる柔らかさは感じられるのだけれど、どこか中性的な感じ。

知識に裏打ちされ、その地を歩き作品を鑑賞した上での、半伝説上の人物などに対するこの方なりの解釈も、「なるほど」と思えるものが多く、とても興味深いものでした。

とはいうものの、自分は便利な都会に住んで気が向いたときに「かくれ里」を訪ね、古来の風習を肌で感じ、そうした古き良き伝統が失われていくのを嘆きつつ「いつまでもこのままでいてほしいものだ」というのは、若干勝手ではないかと思ったりもしました。そうした暮らしは不便と隣り合わせだし、若い人たちはどんどん外に出て行ってしまったでしょうから(そういう時代ではなかったかと思います)、残された方々が老いと向き合いつつ伝統を守っていくのは並大抵のことではないに違いありません。でも、白洲は、どこまでも「外からの観察者」目線で「よい伝統を守ってほしい」というのです。ちょっと、その大変さまで思いを馳せていない感じ。少なくとも、私はそのような印象を受けました。
観察者の目線がなければ、文章は独りよがりのものになってしまいがちなので、これはこれでよいのかもしれませんが。

とはいえ、この方の飽くなき好奇心は素晴らしいし、目の前に光景が浮かぶようなその土地土地の描写は見事だと思いました。

てことで、「文章は好きなんだけど」という若干もやっとした気持ちで音読を終えたのでした(「かくれ里」のみの、あくまでも個人的な感想です<念のため)。


次は、これも実家から救出した、まったく文体の異なる「一期一会-出会いで綴る昭和史」(保阪正康、2000年)に進みます(*文庫化にあたり、「昭和史 忘れ得ぬ証言者たち」と改題)。時間がかかりそうな厚さです...
関連記事
2017.08.20 22:49 | 和書・洋書 | トラックバック(-) | コメント(0) |
医薬の分野ではお馴染み、治験関連文書のinclusion criteriaの訳語です。

治験対象として適格かどうかを判定するための基準として、「この基準をすべて満たす場合は適格」とするinclusion criteriaと、「この基準のいずれかに該当する場合は不適格」とするexclusion criteriaがあります。exclusion criteriaの訳語は「除外基準」で統一されているようなのですが、inclusion criteriaには「選択基準」と「組み入れ(組入れ)基準」のふたつの訳語があって、私はいつも、「で、どっちやねん」とちょっともやっとしていたのでした。

クライアントさんの参考資料がある場合は、それを第一選択肢とするのですが、そうでない場合、自分の中の第一選択肢はこれまで「組入れ基準」でした。

確か、昔、Inclusion criteria / exclusion criteriaの上位の見出しとして「治験対象母集団を選択する」という意味でSelection Criteriaが用いられている場合もあるので、この2つを明確に訳し分けるためにSelection Criteriaを「選択基準」、Inclusion Criteriaを「組み入れ基準」とする、というような話をどこかで読んだか誰かに聞いたかした記憶があるのよね。どちらかが絶対に正しい、ということではなく、あくまでも自分の中の決めごととその根拠、ということですが。

ところが。
この頃では、「組み入れ基準」という参考資料にお目にかかったことがない。
世の中はSayoの与り知らぬところで(Sayoにひと言の断りもなく)変化しているのか。

ということで、ちょっと調べてみました。

「組み入れ基準」の根拠になっているのは、「治験総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」(平成8年5月1日薬審第335号)だと思われます。これは、ICH E3(Structure and Content of Clinical Study Reports)の日本語版で、文字通り「治験総括報告書を作成する場合はこのようにするように」というガイドラインを示したものです。URLは以下のとおり。
https://www.pmda.go.jp/files/000156923.pdf 
「ICHでは『組み入れ基準』になっている」というのは、おそらくこれを指しているのだと思います。

しかし、医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)のガイドライン(ICH-GCP E6)の日本語版では「選択基準」が使われています。「ICHが『組み入れ基準』としている」という理由付けはちょっと苦しいかも。ていうか、もとの語句はInclusion Criteriaで統一されているわけで、ICH的には何の問題もないわけなんですが。
http://www.jmacct.med.or.jp/plan/files/ICH-GCP.pdf
*参考:PMDAのICH E6(GCP)に関するページはこちら。
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0028.html

念のため「ICH-GCPナビゲーター-国際的視点から日本の治験を考える」(治験国際化研究会編、じほう)も確認してみましたが、Subject Inclusion Criteriaは選択基準で特に問題なしとされています。

うーむ、やはり、世の趨勢は「選択基準」なのか。

ということで、今後はMy第一選択肢として「選択基準」と「除外基準」を採用し、上位大見出しがある場合は「被験者選択のための基準」(今考えた仮訳)のようにして差別化しようかなと考えています。

とはいえ、「申請」という点からみれば、「1セットの文書の中で訳語が統一されており、審査者の誤解や混乱を招かない」という点が一番大事ではないかと思います。なので、まずは参考資料準拠、が基本かなと。
関連記事
2017.08.15 21:20 | 翻訳 | トラックバック(-) | コメント(2) |